『汽車はふたたび故郷へ』公開
オタール・イオセリアーニ インタヴュー

© 2010 Pierre Grise Productions

オタール・イオセリアーニ監督に最新作『汽車はふたたび故郷へ』が2月18日(土)から公開される。ソ連時代のグルジアの映画監督ニコを主人公に、映画を撮るためにフランスへと旅立つ彼の姿を追った今作。今回、監督自身の人生が色濃く反映されたこの映画の公開にあたり、イオセリアーニが映画や故郷ゲオルギア(グルジア)の状況について知性とユーモア溢れる言葉で饒舌に語ってくれた。貴族的な品性と酔いどれ老人の戯言のようなユーモアを兼ねそろえ、映画にその独特なリズムを刻み続けている映画作家オタール・イオセリアーニの言葉をお届けする。

故郷にふたたび戻っていく事は不可能なのです

――イオセリアーニ監督はよく「映画はセリフではなく、リズムが重要だ」と仰っています。映画におけるリズムとはどのようにして生まれるとお考えなのでしょうか?

オタール・イオセリアーニ(以下、OI)映画は時間の中に流れる芸術です。その点でダンスや音楽に似ています。そして不可逆的にダンスと音楽にはリズムとテンポがあります。リズムという概念は存在するあらゆる職業にとって重要なものです。手首を指で触れると人間の脈拍を感じる事が出来ますが、その人間の脈が人生のリズムを作り出しています。ナポレオンの脈拍は43でした。我々アーティストは最小で70です。したがってアーティスト達は非常に速いリズムでスピーディーに生きているのです。人生のリズムはこのようにして定まっていきます。ナポレオンは若死にしましたが、1分間に43の脈拍ですから、本当であれば120歳まで長生き出来たはずです。昭和天皇・裕仁の脈拍は50だったので、かなり長命でありました。もちろん測った事はありませんが、あのブッダの脈拍は20かそれ以下ではなかったかと思います。

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© 2010 Pierre Grise Productions

『汽車はふたたび故郷へ』
(原題:CHANTRAPAS)

2010年/126分/カラー
監督・脚本:オタール・イオセリアーニ
撮影:ライオネル・カズン、
   ジュリー・グルンバウム
出演:ダト・タリエラシヴィリ、
   ビュル・オジェ、ピエール・エテックス

岩波ホールほか全国順次ロードショー中!
公式サイト http://bitters.co.jp/kisha/