5月24日
朝からアパルトマンに泥棒が入った疑惑が持ち上がり、大捜索の末事なきをえたが、その結果午前中の上映には行けなかった……。
今日の1本目は、リー•ダニエル『The Paper boys』。酷い。今年のコンペティション、アメリカ勢の評判はすこぶる悪いけど、これは最低だった。
2本目は楽しみにしていたカルロス・レイガダス『Post Tenebras lux』。物語を追うことは恐らく不可能。カラックスも過激だったが、レイガダスの自由奔放さも凄い。カンヌのコンペティションでこんな作品見れるとは思っていなかったので多いに満足した。
3本目は、監督週間Yulene Olaizola『Fogo』。切り詰められた台詞と登場人物と風景の連続。最後まで何も起こらない。月並みな言い方をすれば、映画祭のための映画といえばよいのだろうか……。
批評家週間の閉幕上映で、ツァイ•ミンリャンとホアン•ペドロ•ロドリゲスの短編を見に行くはずだったが、シネマテーク・フランセーズのプログラムディレクターであるジャン=フランソワ・ロジェから「パリで見る機会あるんだから、メシ食べようぜ!」と言われ、誘惑に負ける…。ロカルノ映画祭のディレクター、オリヴィエ・ペール、イタリアの批評家マリオ、マッドムービーの編集委員、ジルも同席し、昨年と同じレストランで海の幸を満喫。みんな、あまり映画を見れていないと不満をもらしてはいたけれど、その中でもコンペ作品で彼らの一押しはMatteo Garrone『Reality』。アラン•レネはブルジョワ映画、ハネケは微妙だそう。
上映はすでにないため、批評家週間のパーティーへ。DJは、なんと、セリーヌ•シアマとベルトラン•ボネロ!ということで、カンヌでの最後の夜を楽しんだ。
5月25日
今朝は絶対に見たかったので早起きして、「監督週間」の閉幕上映作品、大好きなノエミ・ルヴォフスキ『Camille Redouble』。
恋人と別れ、大晦日の夜のカウントダウンパーティーで泥酔してぶっ倒れたら、なんと10代にタイムスリップしてしまうという物語。過去も現在も主演を演じるのは、なんとノエミ自身。「そんなはずじゃなかったの!」とは話していたけれど、彼女の女優としての魅力が全開。特別出演しているジャン=ピエール・レオー、マチュー・アマルリックのキャラクターには大爆笑してしまった。
最後は「ある視点」部門、若松孝二『11.25 自決の日、三島由紀夫と若者たち』。フランスではすぐに公開されないだろうしと思い、見にいったものの完全に失敗した。フィリップ•ガレルがインタビューで「低予算のデジタル映画は撮らない、撮るべきではない」と語っていたが、まさにその悪い見本のような映画だった。『キャタピラー』もそうだったが、歴史に対する距離感、誠実さに問題があるような気がしてならない。三島由紀夫が「切腹するんじゃなかった!」と空の上から叫んでいる声が聞こえる気がする……。
今日公式上映のあるクローネンバーグ『コズモポリス』、明日は期待のジェフ•ニコルズ『Mud』の上映も……だが、ここでタイムアップ。夕方のTGVでパリに戻る。今週末はウェス•アンダーソン『Moonrise Kingdam』、ジャック•オーディアール『De rouille et d'os』、クローネンバーグ『コズモポリス』、ウォルター・サレス『Sur la route』を見て、受賞結果を待つことにしよう。