10/26(土) 『スプリング・ブレイカーズ』宮一紀

極限に達した退屈さが少女たちを犯罪へと駆り立てる。強盗されるために存在するかのような片田舎のダイナーから、めくるめく快楽の酒池肉林としてのマイアミへ――。

そこで待ち受けるプッシャー役のジェームズ・フランコがすばらしい……全身にタトゥーを刻み、金のグリルを嵌め、長いコーンロウを編み込み、もはや誰だがわからなくなってしまっている。アメリカ西海岸のカリカチュア、黒人コンプレックスを体現するアングロサクソン、(役名の)エイリアンというよりはむしろロボットのように空虚でメタリックな存在感で、シボレー・カマロのハンドルを握り、終始にやけながら不気味に揺れている男。

サングラス、リング、ネックレス、鉈、ピストル、マシンガン、そして、だらしなく開け放たれた口から覗く金色のグリル――彼の身を包むありとあらゆる金属質のものが、フロリダの風にたなびく派手なシャツの下で、揺らぎ、擦れ合い、音を立てる。いや、果たしてそんな音など鳴っていたかどうか、今となっては定かでない。なにしろ、場面が切り替わるたびに挿入されるピストルの撃鉄を起こす音が強烈だ。弾倉が装填され、巨大なリロードの残響とともに、私たちは見たばかりの光景を忘れ続ける。

ネオンカラーの色彩、弛緩した運動、硬質な音響に支配される中、孤独で弱い者たちが徒党を組み、敢えなく崩れ去っていく様子は痛ましい。最後には欲望の抜け殻だけが暖かいフロリダの海に漂うことになるだろう。それでも、永遠に終わることのないアンチ・アメリカン・ドリームをいつまでも見ていたいと思った。

宮一紀