今年のカンヌはウディ・アレンの『Midnight in Paris』で開幕したが、残念ながら、私は3日目からの参戦。朝7時半過ぎのTGVで、パリからおよそ5時間かけてカンヌへ。今年は事前の予測が豪華だっただけに、かなり拍子抜けのプログラム(ガレルの新作は?ホオ・シャオシェンは?ミアハンセンラヴはどこに?なぜあの作品がなくてこんな作品が?)だが、私にとっては初のカンヌ。いやがうえにも期待は高まる。アンロック、カイエ、ポジティフからファッション紙までキヨスクでカンヌ特集をしている雑誌を買いあさって、車内でプログラム片手にスケジューリングをはじめる。だけど、毎日マルシェを含めると200本近い作品が上映されるこの映画祭で、いったい何を見ればいいのか? コンペ、ある視点部門、監督週間、批評家週間…どうしよう。うーんと唸っているうちにあっと言う間にカンヌに到着。ホームを降りると張り巡らされたファイ・ダナウェイのポスターに迎えられる。
5時間で出した結論、今日の目玉はナンニ・モレッティ!のはずだったが、タクシーは長蛇の列、ホテルはだいぶ遠い、七時からの上映はドレス着用が義務だし…そんな準備はしていないし笑。プレスのバッジの受け取りなどなど手間取ったため、14時半の上映にはまったく見当違いな時間になってしまった。夕方の4時。コンペの作品は遅かれ早かれパリで公開されるだろう。そうだ、映画祭は発見の場でしょ!と思い立って、監督週間へ直行。今日は、レベッカ・ダリィの『The Other side of Sleep』と、フィリップ・ラモスの『The Silence of Joan』を見ることに。初日にしてはなかなかパンチの効いた二本。前者は、シネフォンダシヨン出身の監督なんだけれど、主演女優の顔がとても印象的な作品。雰囲気としてはレア・セイドゥを縦長にした感じと言ったらよいか。ワンシーンワンシーンがすごく丁寧に撮られていて、時折彼女が見せる激しく暴力的な動作に魅せられる。でもその表情は外界からの刺激、言葉、肌の触れ合い、痛みにほとんど変わらない。だからこそそれが瓦解する瞬間にはもっとなだれ込むような何かがあってもいいような気がしてしまった。後者の作品は、多くの雑誌が紙面をさいていて、マチュー・アマルリックとステヴナンが出演しているとのこと。題材はなんとジャンヌ・ダルク!、であるだけにどうしてもドライヤーやブレッソンのことを考えてしまう。レベッカ・ダリィのフィルムでインパクトのある顔を見てしまったから?ジャンヌ役の女優がまったく思い出せないのだ。友人たちの評価はなかなか良いんだけど、ちょっと納得がいかない。