カンヌ映画祭日記③ 5/15

 昨日のモレッティの上映の開始時間が一時間ほど遅れたため、帰宅は0時過ぎ。だいぶスロースタートで11時半からの上映に向かう。一本目は、昨日の昼の上映で偶然となりの席に座っていたジャーナリストから勧められた監督週間の『Code Blue』。日曜だからなのか、40分前なのにすでに長蛇の列。期待したものの、うーん。騙された!会場の反応はだいぶわかりやすくて、怒りのあまり叫び声をあげる人、席を立つ人が続出した。は〜。二本目も監督週間の作品、Valérie MréjenとBertrand Scheferの共同監督『En ville』を見る。この作品はなかなかの佳作。パリからやってきた40代の写真家と16歳の女の子が小さな街で出会って一緒にひとときを過ごす。今までの監督週間の作品に比べて、言葉、台詞に傾斜しているんだけど、だからこそとても新鮮さを感じた。上映後のQ&Aで、監督は『ギターはもう聞こえない』を参考にしたとのこと。主演女優のローラ・クレトンがかわいい。まだ幼さを残しているんだけどある瞬間大人びて見える。前作はカトリーヌ・ブレイヤの『Blue Bread』で、ミア・ハンセンラヴの最新作にも出演しているそうだ。

 さて、今日の三本目はある視点部門。指導教官のシャルル・テッソンから、会場に着いてすぐ電話。傑作を見に行こう!というお誘いだったんだけど、向かっていた先は一緒だった。『ソフィアの夜明け』を日本ですでに見ていて、とても気になっていた監督であるジェフ・ニコルズの新作。パスが青いため大人しく列に並んでいたらシネマテークでプログラム担当のキャロリーヌにばったり会って、情報交換をする。なんと監督週間、批評家週間の作品は六月にパリ市内の劇場と、シネマテークで見れることも教えてもらう。なんだ、結局パリで見れるのか…知らなかった。作品はというと前作とはだいぶ雰囲気が変わったという印象だ。ど、アメリカ映画っぽい。テッソンは傑作と絶賛していたけど、私は前作の方が好み。

 四本目は、22時からプレス上映で、すごく楽しみにしていたベルトラン・ボネロの新作を見る。人によってはだいぶ評判が悪いけれど、私は好き。具体的に年号を画面に示しながらも、あまり時代考証は関係ない。ダンスシーンで鳴り響く音楽がそれを決定づけていて、歴史への距離感はガレルの『恋人たちの失われた革命』に近い。だから娼婦である彼女たちの生活はなんの悲壮感もなくただただ軽く、現代に一直線につながる。女優一人一人が本当に魅力的。エスター・ガレルが出演しているのにも注目!1日の最後に素晴らしい作品を見れて大満足。さて、明日は何を見ようかな。