カンヌ映画祭日記⑤ 5/17

    今日も監督週間からスタート。Karim Ainouz『O abismo prateado』。夫から突きつけられた突然の別れと失踪。数日後の夜、思い立って飛行機で彼を追うことを決めるものの、その日の飛行機はすでに発ってしまった。それから彼女が過ごす夜明けまでの時間を追う。これまで見た監督週間の作品がどんどん内側にのめり込んでいくものが多かっただけに、街を彷徨って人や風景に遭遇していく姿は悪くない。でも、どうしても監督週間の中で相対的に考えて面白いという感は拭いきれないんだよね…。

   二本目は、批評家週間へ。昨日の夜入れてもらえなかった笑 エヴァ・イオネスコ監督の『My little Princess』を見るため、会場に早めに到着する。ジャック・ドワイヨンの『恋する女』で出会ってからとても好きな女優なので、カンヌ前からとても楽しみにしていた。再チャレンジして良かった!会場入り口でシャルル・テッソンにばったり会ったのでしばし立ち話。この作品をセレクションに入れたのは彼であることやイオネスコの出演していたイタリアのポルノ映画の話などを聞く。そこにちょうど東京日仏学院の坂本安美さんの姿を見つける。久しぶりの対面。フランス流にビズで再会の挨拶をした。話には聞いていたけど、パスのレベルが低いようで、グランドリュミエールでの上映は招待状がないと入れないし、私たち以上に上映前に並ばないといけないそうだ。本当に失礼な話だ。主演は、イザベル・ユペール。一応、現代なんだけど、ほとんど室内にとどまっているのと、彼らのファッションが相俟って時制はあいまいだ。開く窓の風景でそこがパリのモンマルトルであることがかろうじでわかる。ユベールは、最近見たシュローターの『マーリナ』『Deux』に出演していた時の雰囲気に近いものがあって、娘を被写体にひたすらエロ写真を撮りまくるというかなり破綻した人物ではあるんだけれど、どうしても枠組みの中での過激さにとどまっているように見えた。処女作なんだし、エヴァ・イオネスコなんだし、もっと過激でもいい。カンヌで監督週間、コンぺも含めて何本もの処女作を見て共通しているのは、どれもなんとか形にしようというか、上手くまとめようとしていて破綻がないことだろう。処女作だからこそ完璧さから遠くてもいいのに、なんだかもったいない気がする。

   三本目は、引き続き批評家週間の『Avé』。街路で出会った男女がヒッチハイクするロードムービー。いくつかのエピソードを通じて少しづつ関係性が進展していくように見えて何も変わらない。トラックの運転手を誘惑しての金品の強奪、知人のふりを参加してのお葬式への参加…出来事を積み重ねながらもなんともこぎれい。上映後、女優が完璧にドレスできめてる姿を見てさらになえる。今日の最後はエリック・クーの『TATSUMI』。上映20分の時点で、満員だったはずが私の周りにいたジャーナリストたちは次々と席をたっていく。すでに田中さんが述べた通り、糞とゲロまみれの映画のため? 個人的には田中さんほどの思い入れはないものの、一環して汚さに留まってるのは素晴らしい。