カンヌ国際映画祭報告2012 vol.02 5月18日(金)

 この日1本目は「批評家週間」作品、俳優でもあるLouis-Do de Lencquesaing『Au Garope』からスタート。
 本人自らが主演し、傍を固めるのはグザヴィエ•ボーヴォア、実の娘であり『あの夏の子供たち』に出演していたAlice de Lencquesaingとかなり豪華な顔ぶれ。ドライヤーの『ゲアトルード』が映画内映画として引用されるなど、様々なアイディアが垣間見えるが、どれも上手く機能しておらず、何もかもが表面的……。セレクションされた時点で注目された作品だったこともあり、かなり残念な出来だった。

 2本目はSalle soixantième にて、ファティ•アキンによるドキュメンタリー『Polluting paradise』。コンペ外、一回だけの上映ということもあって、一時間前にはすでに人集りができていて、会場に入れない知り合いが続出。箱を開ければ、客席の半分が招待席としてリザーブされていた。開演時間になってもその大半が来ず、ギリギリになって辛抱強く待っていた人たちがどっと流れ込んだが、結局、空席が目立っていた。最低のディレクション……。

 ターキー北東部に位置する小さな山間の村をめぐるゴミ問題を追ったドキュメンタリー。ゴミがもたらす様々な汚染を描くことに大半の時間がかけられているが、新味のない紋切り型の映像に終始してしまっている。汚くて、臭くて、身体に悪くて……ということはよくわかるんだけど、その先に何も見えない。

  続いても同じ劇場で、コンペ外作品、アピチャポン•ウィーラセタクン『Mecong hotel』

 メコン川を背景に、一組のカップルと彼女の母親(監督自身もチョイ役で出演)、ギターの調べとフィックスショットというシンプルな構成。だからこそ、例外的に挿入される"あの"シーンの異常さが際立つ。『ブンミおじさんの森』が大っ嫌いなので、あまり期待していなかったが、悪くない。でも個人的には、過激さに傾斜するより、もう少し揺蕩うメコン川を見ていたかった。

 上映まで時間があったので、パウロ•ブランコ率いるアルファマフィルムで働く友人のフレデリックに会いにマルシェのスタンドへ。昨日からパリでも公開されているジャック•オディアール『De rouille et d'os』が公式上映後、10分以上拍手が鳴りやまなかったこと、ウェス•アンダーソン『Moonrise kingdam』がかなり良かったことを聞く。パリまでお預けだけど……。

 4本目は、プレス上映でコンペ作品『Dupa Dealuri』クリスチャン•ムンギウ監督は『四ヶ月、三週間、二日』ですでにパルムドールを受賞している。列車の到着、後ろ姿の女性が言葉なく、人混みを掻き分けて前進していくファーストショットはなかなか良かったのだけれど、長回しが作家性の担保だと言わんばかりに、一時間半長回しのショットの連続……二時間を過ぎたところで完全に意識を失う。最後に何が起こったかは知る余地はない…

 次の上映まで時間があったので、現在パリ在住のドキュメンタリー作家で、アパートをシェアしている丸谷肇さんとパレに近い le  petit parisでディナー。公式上映の時間が近いせいか、他のテーブルは完璧にドレスアップした人ばかりで、ソワソワしながら夕食を済ませ、Salle Daubussyへ。

 今日の最後は、ある視点部門、23歳にして長編3作目となるグザヴィエ•ドランの『Laurence anyway』

 前作『Les amours imaginairs』は封切りで見たが、どうも好きになれなかった。過剰な音楽、派手な演出……才気ばしった若手監督を自己演出しているようにしか見えないのは気のせいか……。唯一良い所があるとすれば、メルビィル•プポーが女装癖があり、ついには性転換する主人公を頑張って演じていたこと。年齢もあるのか、どんなに着飾っても、決して綺麗にはならないのがもの悲しい。当初キャスティングされていたルイ•ガレルが主演していたらかなり難しかったはず。断ったんじゃないかな…。ということで、今日は惨敗した。