journal

メイン

 1  |  2  |  3  |  4  |  5  |  6  |  7  |  8  |  9  |  10  |  11  |  12  |  13  |  14  |  15  |  16  |  17  |  18  |  19  |  20  |  21  |  22  |  23  |  24  |  25  |  26  |  27  |  28  |  29  |  30  |  31  |  32  |  33  |  34  |  35  |  36  |  37  |  38  |  39  |  40  |  41  |  42  |  43  |  44  |  45  |  46  |  47  |  48  |  49  |  50  |  51  |  52  |  53  |  54  |  55  |  56  |  57  |  58  |  59  |  60  |  61  |  62  |  63  |  64  |  65  |  66  |  67  |  68  |  69  |  70  |  71  |  72  |  73  |  74  |  75  |  76  |  77  |  78  |  79  |  80  |  81  |  82  |  83  |  84  |  85  |  86  |  87  |  88  |  89  |  90  |  91  |  92  |  93  |  94  |  95  |  96  |  97  |  98  |  99  |  100  |  101  |  102  |  103  |  104  |  105  |  106  |  107  |  108  |  109  |  110  |  111  |  112  |  113  |  114  |  115  |  116  |  117  |  118  |  119  |  120  |  121  |  122  | all

September 26, 2020

『イサドラの子どもたち』ダミアン・マニヴェル監督インタビュー

 神話的なダンサー、イサドラ・ダンカンはモダンダンスの祖である。1913年4月19日、4歳と6歳の彼女の子供ふたりを乗せた車がセーヌ川に転落。ふたりとも溺死した。彼女はその事実から立ち直ることができなかった。  ダンカンというダンサーについてなにも知識を持たないままにこの映画を見始めた観客にまず知らされるのは、上記の事実だけだ。いわゆるイサドラ・ダンカンについてのドキュメンタリーでも、イサドラ・ダ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:20 AM

September 11, 2020

『行き止まりの世界に生まれて』ビン・リュー
二井梓緒

 もし映画に、この監督にしか撮れないというものがあるならば、たとえその監督でさえも一生にたった一度しか撮れないものもある。『行き止まりの世界に生まれて』はまさにそんな作品だ。監督であるビンが12年間撮り溜めた映像の数々は眩く、彼とその仲間たちの人生を私たちはスクリーンを見ながら辿っていく。なんて贅沢なんだろう。  ファーストカットで、主人公とその仲間がボードで明け方の大通りを駆け抜ける。奇しくも日...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:50 PM

September 4, 2020

『眠る虫』金子由里奈
新谷和輝

 幽霊の声はどこから出ているのか、という突拍子もない好奇心に駆られた主人公の芹佳那子は、バスで遭遇した謎の老婆の歌に導かれ、彼女を追ってやがて地図上にない街をさまよう......。というふうにこの映画の導入をまとめると、なんだかとても不思議でファンタジックな作品のように思える。しかし、『眠る虫』で描かれる世界は、ぼやけた夢のようなものではなくて、基本的には、くっきりとした視覚と聴覚に支えられている...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:01 PM

August 15, 2020

『鏡の中の亀裂』リチャード・フライシャー
結城秀勇

 オーソン・ウェルズ、ジュリエット・グレコ、ブレッドフォード・ディルマンの主要三役者がそれぞれ一人二役を演じ、土木現場で働く労働者階級と彼らの事件を弁護することになる上流階級とでほとんど相似形の三角関係が進行する物語である、......ということを説明するところから語り始めるほかないこの作品なのだが、見終わって一晩経ってみると、この映画のキモはそこじゃないんじゃないか、という気もしてくる。なぜなら...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:17 PM

August 12, 2020

『デリンジャーは死んだ』マルコ・フェレーリ
結城秀勇

 ガスマスクのデザイナーであるミシェル・ピコリに向かって同僚が読み上げる論文?広告文?の(5月革命直後という時代の影響が露骨に滲み出た)文章の中に「もしあらゆる人々がマスクをつけることを強制される社会が到来したら」というフレーズがあることにギョッとせずにおられる者など、この2020年に生きる人間の中には誰ひとりいないことは間違いないのだが、しかし同僚が自信満々に延々と読み上げ続ける文章とガス実験室...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:48 PM

July 17, 2020

『はちどり』キム・ボラ
鈴木美乃里

 この作品の主人公である14歳の少女ウニ。彼女の父親は、自分を誇示し、気に入らないことがあると家族に罵声を浴びせていた。兄は怒りにまかせて殴ってくるし、両親はそれを喧嘩と捉える。母は勉強のことや人の目しか気にかけず、立場の似ている姉は、親からのプレッシャーに耐えかね塾をサボっては遊び歩いていた。  ウニはそんな家族の顔を見つめてみた。父の泣いた顔。兄の不安で強張った表情。何も手につかず茫然と座る姉...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:38 PM

July 11, 2020

『おばけ』中尾広道
結城秀勇

 木々の深い緑を背景に黄色い蚊柱が立つ、美しいファーストカット。続いて、映画は山の中の木や草を断片的に映していく。そこにひとりの男が現れ、なにかを見つけたように立ち止まり、やや上方を見上げる。そしておそらく彼の主観なのだろう次のカットで、緑の背景の前をきらきら光る円形のものがふわふわと移動していくのを観客は目にする。  それがこの作品のタイトルである「おばけ」、つまり写真等の撮影時に強い光がレンズ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:33 PM

June 11, 2020

『アトランティックス』マティ・ディオップ
梅本健司

 『アトランティックス』をいかにして語ればよいのか。冒頭のダカールの工事現場で働く男たちのシーンから一人の女が鏡に映る自分自身を見つめるラストショットに至るまで、この映画にはいくつかの筋立てやジャンルが混在している。例えば、山藤彩香が書いているようにメロドラマ的な要素を中心に語ることもできるだろうし、あるいはファンタジーとして、あるいは 刑事モノとしての要素を見つけることもできる。そういった複数の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:17 PM

『アトランティックス』マティ・ディオップ
山藤彩香

 「結ばれるべき青年と少女がいて、しかし少女には望まぬ婚約者がおり......」というあらすじから、「ああ、少女の心が青年と婚約者のあいだで揺れるのだろうな」と類推しにかかった自分の浅はかさを恥じた。少女エイダの心は青年と婚約者のあいだとで揺れてなどおらず、想いはずっと青年に注がれていた。では、なにがどのあいだで揺れていたのかといえば、青年と少女が初夜をめぐって此岸と彼岸を揺れていたのだ。  家の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:12 PM

June 10, 2020

『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』ボー・バーナム
ゆっきゅん

 主人公のケイラがYouTubeに公開している自己啓発的な動画で始まる『エイス・グレード』は開始1秒でSNS時代を生きる若者たちへ向けて作られた映画であることを宣言してくれる。中学卒業と高校進学を目前に控えた主人公のケイラは、コンスタントに動画投稿をしているが、それを見ている人はほとんどいない。学校で年間無口賞を獲ってしまうような、友達のいない中学生だった。唯一の家族である父親との関係もうまくいっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:07 PM

June 2, 2020

『映画よ、さようなら』フェデリコ・ベイロー
二井梓緒

 勤めはじめてからの25年間、ホルヘの居場所はずっと両親の代から続く映画館(シネマテーク)だった。年々映画館に足を運ぶ人は減り、賃料の支払いは半年以上遅れ、ついには財団から「シネマテークは営利事業とは言えない」と支援は打ち切られ、ついに映画館を閉めることになる(これはまさにいま、日本のミニシアターが置かれている状況ではないか)。閉館日、看板の灯りを消し、荷物をまとめてバスに乗ったとき、彼の頬には涙...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:20 PM

May 5, 2020

『チワワは見ていた ポルノ女優と未亡人の秘密』ショーン・ベイカー
二井梓緒

 この映画のラスト、主人公のジェーンは、道路脇に停めた車で待つチワワと老女ーーセイディーーを二度振り向く。一度目のあと車窓越しに彼女を見つめていたセイディは視線をそっと正面へずらす。反射する太陽の光に包まれたジェーンは少し立ち止まった後、老女の待つ車へと歩いていく。このシーンはふたりの関係性が変わっていくことを示すが、その先は誰にも分からない。映画の最後に観客に与えられた解釈の自由は、『タンジェリ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:08 PM

May 2, 2020

『ギャスパール、結婚式へ行く』 アントニー・コルディエ
池田百花

 物語は、そのタイトルが示す通り、主人公の青年ギャスパールが父親の再婚の結婚式に出席するため、動物園を経営する実家に向かうところから始まる。旅の途中でローラという女性と出会った彼は、久々に再開する家族の手前、彼女に恋人のふりをしてほしいと半ば無理やり説得し、ふたりを乗せた電車は舞台となる動物園に向けて走り出す。ローラを演じるのは、『若い女』(2017、レオノール・セライユ)で強烈な魅力を放っていた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:35 PM

April 30, 2020

『アンカット・ダイヤモンド』ベニー・サフディ、ジョシュ・サフディ
佐藤彩華

 ジョシュとベニーのサフディ兄弟は、今や米インディペンデント映画界で最も注目を集める重要な若手映画作家のひとり(ふたり)だ。ユダヤ教徒の家庭に生まれニューヨークで育ったふたりが、同じくユダヤ系のアダム・サンドラーを主演に迎えた新作『アンカット・ダイヤモンド』は、強烈なインパクトと狂気を孕んだ一作で、1/31にNetflixでリリースされてから日本でも評判が評判を呼んでいる。それもそのはず、2010...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:58 PM

April 28, 2020

『コジョーの埋葬』ブリッツ・バザウレ
池田百花

父のコジョーは7年間同じ夢を見た 夢では海が地を飲み込み炎が燃え盛っていた 父は誰にもこの夢のことを話さなかった それがただの夢ではなかったことも それはむしろ記憶のようなもので 忘れられない記憶のようなものだった  若い女性のモノローグによって誘われるのは、彼女が生まれる前、ある辛い出来事を経験し心に傷を負った父が引っ越して来た、水だけに囲まれた遠い村だ。彼は、水だけが過去を浄化できると信じ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:10 AM

April 26, 2020

『The Green Fog』ガイ・マディン、エヴァン・ジョンソン、ガレン・ジョンソン
結城秀勇

 「映画のはじめのほうで、ジェームズ ・スチュアートがマデリンのあとをつけて墓地にやってきたとき、彼女をとらえたショットはすべてフォッグ(霧)フィルターをかけて撮影し、ぼんやりと夢のような、謎めいたムードをだすようにした。あかるい太陽がかがやいているところに一面に霧がたちこめているような、淡いグリーンの色調だ」(『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』)。ヒッチコックのこのような発言を見るなら、『め...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:49 PM

April 24, 2020

『ルディ・レイ・ムーア』クレイグ・ブリュワー
結城秀勇

 かなりの評判をこの数ヶ月間聞いてきた『ルディ・レイ・ムーア』をやっと見た。ご多分にもれず号泣。  実在のコメディアン・映画プロデューサーの伝記映画なのはなんとなく知っていたから、もう60歳に手が届こうというエディ・マーフィの起用は、てっきり一瞬の栄華を極めた男のその後の衰退までを描くことを意味しているのかと思っていた。『ハッスル&フロウ』『ブラック・スネーク・モーン』に続くはずの三部作の完結編の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:49 PM

April 23, 2020

『37セカンズ』HIKARI
二井梓緒

 スーザン・ソンタグは、『隠喩としての病』の中で病気それ自体よりもそれに付随する隠喩や言葉のあやが一人歩きしているという。彼女がいう病気はとりわけ目に見えないものであるが、障がいもそれに当てはまるのではないだろうか。  まだこのような状況になる前、アップリンクに通い詰めていた時期によく流れていた『37セカンズ』の予告を見てそんなことを考えていた。それだけでなんだか満足していたし、気づけば映画館は閉...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:17 AM

April 11, 2020

『ザ ・ライダー』クロエ・ジャオ
梅本健司

 この映画の主人公ブレイディ・ブラックバーン(ブレイディ・ジャンドロー)が初めて馬に乗り、広野を走り抜ける姿をわれわれが目にする時、すでにこの映では四十分近くが経過している。確かに白馬が、誰もいない広野を走り抜けるというシーンは美しいし、見ていて心地よい。だが、こうした心地よさにこの映画の本質があるわけではない。  そのシーンの後、ブレイディが馬を調教するシーンがおかれる。それは『ザ・ライダー』に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:17 PM

April 9, 2020

『東京のバスガール』(配信タイトル『若い肌の火照り』)堀禎一
二井梓緒

 暗い日々が続いていますね、私はネットでピンク映画ばかり見ています。  といっても、そもそもピンク映画に特に関心があったわけでもなく、もっと言うなら苦手だった。が、それでもいくつか観ていくと、ピンク映画という私の概念が揺らいでいくような素晴らしい作品がたくさんあることに気づいたのである。エロがあってもなくても映画は映画であってそれだけでもう最高なのだ!  堀禎一の作品もそんな映画だった。どの作品も...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:31 PM

April 7, 2020

『あとのまつり』瀬田なつき
結城秀勇

 「忘れねえよ」と呟いたはずの僕らは、それでもいろいろなことを忘れていたのだった。たぶんそれは、災害のせいでも、病のせいでも、ない。  2009年当時のインタビューで瀬田は、当初この作品が「まつりのあと」と名付けられていたのだと語り、でもそれが桑田佳祐の歌と同じタイトルだったから、「まつり」と「あと」を逆転させて「あとのまつり」になったのだと言っている。  もう半年も経てば「まつりのあと」だったは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:04 AM

March 31, 2020

『金魚姫』青山真治
梅本健司

 ある女性が目に涙を浮かべ、もはやどうすることもできないことを言葉にするとき、隣でスマホを食い入るように見ている男がいることを気にかけることなく、カメラは彼女ひとりに寄っていく。一見このショットは、その空間にいるふたりの関係を切り裂いてしまうショットに見える。そして彼女の語りだけが聞こえてきて、ひとりの女性のモノローグが始まるのだと確信さえする。しかしこのショットはモノローグで終わることはない。カ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:25 AM

March 29, 2020

『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』平良いずみ
結城秀勇

 沖縄の言葉、ウチナーグチには「悲しい」という言葉がない。それに近いのが「ちむぐりさ」だが、それは自分が悲しいんじゃなくて、誰かが悲しんでいるのを見て「ちむ=肝」が苦しくなる気持ちなのだ。そう語る冒頭のナレーションの背後で、ザ・フォーク・クルセダーズ「悲しくてやりきれない」のウチナーグチバージョンが流れている。  「悲しくてやりきれない」が、発売中止になった「イムジン河」のメロディを逆にたどって作...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:55 PM

March 28, 2020

『春を告げる町』島田隆一
結城秀勇

「漬物あげてくっか」 「いーがらいーがら!......持ってきたら食うげんとぉ」 全員爆笑。  仮設住宅の茶の間で繰り広げられていたそんな寄り合いが、ものすごい速度で解体される。引越しの準備をし、ボランティアの人がやってきて荷物を運び出し、人が出て行き、まだ扉も閉めず話をしている最中なのに車が走り出す。その見事な編集の速さに目を奪われるとともに、この速さこそ彼らが被った状況の核心を示しているとも感...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:44 PM

February 27, 2020

「魚座どうし」山中瑶子
結城秀勇

 魚座の「う」の字も出てこないが、とりあえず魚たちは死んでゆく。してみれば、魚座とは死せる魚たちの星を背負って生まれた子供たちの謂なのか、しかしその魚たちを殺すのもまた子供たち自身なのだ。弱い者はさらに弱い者を殺す。彼らは無垢ではない。ただ、魚を水から掬い上げるように、口に爆竹を詰めるように殺す大人たちから殺されないために必死なだけだ。  まともな大人たちなんて誰ひとりいない。大人たちは、縄跳びを...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:27 AM

February 20, 2020

『風の電話』諏訪敦彦
白浜哲

生き残った者たちは日常を生きていかなければならない。主人公ハル(モトーラ世理奈)が旅先で出会う人々はそれぞれの苦しみに向き合いながら、一人の少女に寄り添い、食事をともにし、いくつかの言葉を交わす。その言葉と言葉のあいだに深い沈黙が埋め込まれているかのような息づかいのリズムに諏訪敦彦の演出の特徴をみることもできるが、この『風の電話』という一本のフィルムが圧倒的な豊かさでわたしたちに提示するものは、絶...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:15 PM

February 15, 2020

『ジョジョ・ラビット』タイカ・ワイティティ
隈元博樹

 ヒトラーユーゲントの小さな軍服を身に纏った少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)は、空想上の友人であるチョビ髭面のアドルフ(タイカ・ワイティティ)から正しい「ヒトラー」のイントネーションを叩き込まれている。過剰なまでの連呼合戦によってアニマル浜口ばりの気合いを注入された彼は、「ハイルヒトラー!ハイルヒトラー!」と快活に喚き散らしつつ、ドイツ版「I Want To Hold Your Ha...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:28 PM

第49回ロッテルダム国際映画祭報告(2) 1970年代アンダーグラウンドの旗の下に
槻舘南菜子

 ロッテルダム国際映画祭は、1966年からオランダのアート系映画館Wolfeのプログラムを手がけ、同映画館で若い世代の作家を紹介していたユベール・バルをディレクターとして、1972年に創設された。1970年代半ば、フィリップ・ガレルは、ロッテルダム国際映画祭でその後「彼の世代」の作家となるシャンタル・アケルマン、ヴェルナー・シュローター(*)に出会った。当時のガレルは、フランスですらほとんどの作...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:16 PM

February 9, 2020

『リチャード・ジュエル』クリント・イーストウッド
結城秀勇

 リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)がワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)に出会うあの冒頭のシーンの、妙な気持ち悪さはなんなんだろうか。備品補充係としての勤務の初日から、仕事に必要なペンもテープもしっかりそろっていて、さらにはゴミ箱の中身からワトソンの好物だと推測されたスニッカーズさえしれっとキャビネット内に補充済み、という普通の意味での気持ち悪さもあるのだが、それはまあ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:18 AM

February 8, 2020

第49回ロッテルダム国際映画祭報告(1) 遠藤麻衣子監督インタヴュー
槻舘南菜子

昨今の国際映画祭では、韓国や中国などのアジア諸国と比較しても日本映画、とりわけ若手監督の存在感は著しく希薄だ。そんな中、ロッテルダム国際映画祭ブライトフューチャー部門に、小田香監督『セノーテ』とともに遠藤麻衣子監督『TOKYO TELEPATH 2020』がノミネートした(本作は第12回恵比寿映像祭にて上映予定)。すでに初長編『KUICHISAN』でイフラヴァ国際ドキュメンタリー映画祭にてグランプ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:00 PM

January 23, 2020

『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』ジョナサン・レヴィン
結城秀勇

 『アトミック・ブロンド』のシャーリーズ・セロンを見たときに思ったのは、冷戦時代の二重三重スパイの話で彼女は西側の人間か東側の人間かわからない、というのがストーリーのキモではあるものの、いや単純にいまシャーリーズ・セロンが地理的に西か東かどっち側にいるシーンなのかよくわかんなくね?ってことだった。そんで彼女はその境界線付近をゴロゴロゴロゴロ転がっていたのだった。  『ロング・ショット』のセロンにも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:46 PM

January 21, 2020

アルノー・デプレシャンによるジャン・ドゥーシェ追悼

 2019年11月22日、アルノーよりメールが届く「ジャンが今晩、亡くなった。彼は最後の瞬間まで、素晴らしく、快活で、輝いていたよ。ジャンはエピキュリアンなローマの王子様のようだった。彼は人生と映画を結びつけた。そして日本を、日本映画をとても愛していた。彼は僕の師匠だった......。僕は彼の生徒であったこと、彼の友人であったことをこの上なく誇りに持っている」。そしてそれから数日後、雨が降りしきる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:53 PM

January 19, 2020

『自画像:47KMのスフィンクス』『自画像:47KMの窓』ジャン・モンチー インタビュー

「物語を語るのは、人々だけではない」 山形国際ドキュメンタリー映画祭2019で出会った、『自画像:47KMのスフィンクス』『自画像:47kmの窓』というふたつの作品に心を奪われた。「47KM」と呼ばれる山間の小さな村で、年老いた人々が人生の出来事を語り、その合間に村人たちの生活が差し挟まれていく。ある青年は倒れかけた木に登り、ある少女は村とそこに住む老人たちの絵を描き、子供たちは笑い遊ぶ。同じ村で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:42 PM

『花と雨』土屋貴史
隈元博樹

 SEEDAによるアルバム「花と雨」をタイトルに据えた本作は、自身をめぐる過去の境遇や事実を原案にした映画ではあるものの、ひとえにラッパーとしての苦悩や葛藤を赤裸々に綴っているだけのものではない。たしかにそれらは同名の曲「花と雨」の中で刻まれるリリックしかり、早逝した姉との記憶やそこに生じる悔恨の念として受け止めることができるだろう。ただし、そうしたいかなる状況が待ち受けたとして、彼がけっして手放...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:42 PM

January 10, 2020

『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ
結城秀勇

 先行上映を見に行ったら、上映前に監督からもキャスト一同からもビデオメッセージで「ネタバレしないで」と言われ、はたしてなにを書いたものかと。しかもこれ、なにか一個言っちゃいけないことがあるというより、中盤以降ほとんど全部そうじゃねーか。書きようがない。ということで、未見の方は読まないでください。  映画が始まってすぐに『ヘレディタリー/継承』を思い浮かべてしまったのは、冒頭の地面すれすれにある窓へ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:33 PM

January 9, 2020

『フォードvsフェラーリ』ジェームズ・マンゴールド 
千浦僚

 これもまた、挫折と表裏一体のヒロイズムを謳ってきた監督ジェームズ・マンゴールドらしい映画だ。マンゴールドは自身のフィルモグラフィーのノンジャンルさ多彩さを誇るかもしれず、それはそのとおりだが、評するうえでの怠慢や単純化ではなくやはりそこには作り手としての一貫したもの、翳りがある、反転を重ねた現代的な英雄像を描く意志を感じる。  明らかに各出演作ごとの変身を楽しんでいるクリスチャン・ベイルは本作で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:07 PM

January 1, 2020

『マリッジ・ストーリー』ノア・バームバック
隈元博樹

 おたがいの長所を語る一組の夫婦のモノローグと、そのモノローグに呼応するようにして過去を振り返るフラッシュバックが続いたあと、時制は別々のソファに座った夫婦を離婚調停員がなだめている場面へと転換する。妻は夫に視線を合わせることもなく、激昂したのちに席を立ってしまうが、その場面からチャーリー(アダム・ドライバー)とニコール(スカーレット・ヨハンソン)の薬指にはめられた指輪をずっと眺めていた。それはこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:50 PM

December 28, 2019

『死霊の盆踊り』A・C・スティーヴン
千浦僚

 「駄作と傑作を分かつものはなにか」に関して個人的な好悪を越えた、ある程度理論立てた説明や判断基準を持ってはいるが、それと同時にある映画について駄作的にならざるを得なかった背景などが伺い知れてその必然なり事情なりが感じ取れると、私的な感覚として傑作駄作の境界は曖昧になる。だがそれを素直に他人に敷衍して語ることはない。ただ迂遠に、映画そのものを、その"或る映画"と"映画というもの全体"を肯定したい気...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:42 AM

December 13, 2019

『カツベン!』 周防正行
千浦僚

 90年代初頭から最近までずっとちょこちょことフィルムによる映写をやっていた。大阪でミニシアターやシネクラブやポルノ館の映写をやり、02年に上京して試写室の映写技師をやり、ミニシアターのスタッフをやり、という経歴だったので、周防正行最新作『カツベン!』はそういうところからいろいろ感じることや思い出すことのある映画だった。  周防正行のこれまでの監督作のほとんどはそれぞれ異なる設定と筋書きながら、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:22 PM

December 12, 2019

『マリッジ・ストーリー』ノア・バームバック
結城秀勇

 しばしば気づいているはずなのに、いつもいつも忘れてしまうこと。スカーレット・ヨハンソンはけっこう背が低い。あのはち切れんばかりに膨らんだ胸とお尻のイメージで見積もるよりかなり小さい。しかもアダム・ドライバーと並ぶんだからだいぶ小さい。そして、知ってはいるけれど、アダム・ドライバーはいつもいつも思ってるよりでかい。ギュッと縦に押しつぶしたようなヨハンソンの身体と、びよーんと縦に引き伸ばしたようなド...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:25 PM

December 10, 2019

『ゾンビランド・ダブルタップ』ルーベン・フライシャー
渡辺進也

 朽ちたホワイトハウスを前に、4人がゾンビたちと対峙するオープニングシーン。スローモーションの多用、ストップモーションの中でカメラだけが動いていく場面(『マトリックス』を思い出させる)などそのバカらしさがひたすら楽しい。だが、この「派手な」シーンはこの映画の中で、ほぼこのオープニングシーンにしかない。その後ホワイトハウス内での擬似家族としての生活、それからミニバンに乗りメンフィスを目指す、その後の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:00 AM

December 9, 2019

『野獣処刑人 ザ・ブロンソン』 レネ・ペレス
千浦僚

 すごいの見つけてきたな、おい!、と言いたい。  それは、スペインの西部劇テーマパークでこのチャールズ・ブロンソンのそっくりさんロバート・ブロンジーを発見して起用した監督レネ・ペレスに対してなのはもちろんだが、この映画を配給する江戸木純氏にも向けられる。わかるひとにはわかる話をすると、90年代に『ドラゴン危機一発 97』とか『新・ドラゴン危機一発』があったが、これが見事に羊の皮(パチモン、邦題のい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:38 PM

December 3, 2019

第20回「東京フィルメックス」日記②
三浦翔

フィルメックス日記①はこちらへ 2019/11/29  この日は映画鍋と共催のシンポジウム「映画の"働き方改革"〜インディペンデント映画のサステナブルな制作環境とは?〜」を聞きに行った。興味があったのは、実のところ経済産業省側の視点で、彼らは日本映画の現状をどう考えているか気になりその話が少しでも聞けたのは良かった。経済産業省にはコンテンツ産業課というものがあり、今年の夏に映画制作現場実態調査なる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:42 PM

December 1, 2019

『HHH:侯孝賢』オリヴィエ・アサイヤス
結城秀勇

 子供の頃よくたむろって遊んだという死者を祀る廟の前で、久しぶりに会った年長の知り合いに挨拶をしたら向こうは気づかず、「アハだよ」と言ったら向こうが「あー!!」ってなって肩をバシバシ叩いてくるときのあのホウ・シャオシェンの笑顔は、3、40年前のわんぱく小僧だったときも彼はこんな風に笑っていたのだなと思わせるなにかがあって、それだけで泣けてくる。  その直前のシーンで、彼は小さい頃によくマンゴーを盗...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:02 PM

November 29, 2019

『台湾、街かどの人形劇』ヤン・リージョウ
千浦僚

 伝統文化と父子関係についての興味深い、優れたドキュメンタリー。  八十年代末から九十年代前半の映画鑑賞体験を持つ者ならば侯孝賢監督作品の鮮やかさを記憶しているだろうし、その作品世界で独特の存在感を放っていた李天禄(りてんろく、リー・ティエンルー)のことは忘れもすまい。その李天禄の息子で、台湾伝統の"布袋戯"(ほていぎ、ポーテーヒ)という人形劇の演じ手である陳錫煌(チェン・シーホァン)を十年間取材...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:38 PM

November 28, 2019

第20回「東京フィルメックス」日記①
三浦翔

2019/11/26  今年のフィルメックスは出遅れて3日目からスタート。4日間しか参加出来ないけれど、可能な限り見ていきたい。  今年20周年を迎えるフィルメックスでは歴代受賞作人気投票が行われて、そのうち3本が上映される。上位5本のうち2本は「権利元や素材の確認が出来ず」とのこと。映画祭で観たきりになってしまう作品はたしかに多いが、そもそも上映したくても上映できない自体は悲しい。そういうことは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:28 PM

November 24, 2019

『楽園』瀬々敬久
三浦翔

 不条理に満ちた現代に、暴力を描くとはどういうことか。映画が暴力を描くときにしばしば動機を必要とするのは、理由のない無差別な暴力が単なる狂気でしかないからだ。そうやって暴力の理由を探すとき、映画は法廷に似るだろう。たとえば李相日の『悪人』は、出会い系サイトで会った女に裏切られた男がその女を殺す、という事件の犯人もその動機も冒頭から明らかで、彼が逮捕されるまでに生じた心の変化を通して「悪人」への理解...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:17 AM

November 12, 2019

東京国際映画祭日記2019
森本光一郎

10/29  この日は午前中に授業があったので午後からの参加。今年初めてプレスパスを申請したため、ビクビクしながら列に並ぶ。企業の名前を首から下げてる方なんかを見ると、映画祭に来たんだと強く意識させられる。そんなこんなで今年の開幕に選んだのはドゥニ・コテ『ゴーストタウン・アンソロジー』。監督の名前は知っているが、他の作品を全然知らない理由に考えを巡らせていたが、この作品がベルリンに来ていたことを思...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:55 PM

November 8, 2019

『ペインテッド・バード』ヴァーツラフ・マルホウル
森本光一郎

 ある鳥飼いが捕らえた鳥に色を塗って群れに返す。すると、群れに戻った鳥は同種のものでありながら異端者として迫害され、墜落して死亡する。作中にあるこんな挿話が題名の由来である。主人公の少年はユダヤ人の孤児であり、これまでずっと見知っていたであろう村人たちから"ユダヤ人だから"という理由でつま弾きにされ、ナチスにつき出される。そこに、あらゆる形態の児童虐待を詰め込んだ地獄の映画で、どちらかと言えば『炎...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:26 PM

November 6, 2019

『ジョージ・ワシントン』デヴィッド・ゴードン・グリーン
結城秀勇

 デヴィッド・ゴードン・グリーンの処女長編である本作は2000年の映画だから、1997年の『ガンモ』とほぼ同年代の作品と言っていいだろう。廃墟はハリケーンによって生み出されていて、あたりにはゴミや動物の死骸や糞が散乱し、そこら辺をクソまみれの犬がうろついていて、それが当たり前であるような光景が広がっている。ひとつの街を舞台にしていながら、ひとつのショットか隣接を示すふたつのショットくらいで描かれて...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:35 PM

October 27, 2019

『宮本から君へ』真利子哲也
結城秀勇

 宮本(池松壮亮)という男がわからなくなる。と言っても、別に彼の気持ちだとか感情だとか性格だとかがわからないと言いたいわけじゃない。わからないのは顔だ。時間軸が激しく前後して進むこの作品で、前歯のない宮本、目にアザをつくった宮本、左手にギプスをはめた宮本、なんだか知らないがいきなり声が嗄れてる宮本、とさまざまなレイヤーで損傷したり修復したりする宮本を見ていると、ふと無傷でなんの変哲も無いスーツを着...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:33 PM

October 22, 2019

『囚われの女』シャンタル・アケルマン
池田百花

 主人公がフィルムに映った若い女性たちの一団を眺め、その中のひとりに何度も愛を呟く場面から始まるこの映画は、マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』の中の同名の一章が映画化された作品だ。この冒頭のシーンからすでに、スタニスラス・メラール演じる主人公シモンが恋焦がれる女性に向けるまなざしにはどことなく執拗で狂気を秘めた雰囲気が感じられ、一方で彼がまなざす先にいるヒロイン、アリアーヌを演じるシ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:28 AM

October 19, 2019

釜山国際映画祭日記2019
森本光一郎

2019年10月6日 人生初の釜山は少し肌寒い。空港に降り立ったのは13時だが、次の飛行機に乗ってきた友人と待ち合わせしていたのは17時だったので、先に海雲台のホテルに向かう。海雲台は今回のメイン会場であるセンタムシティとジャンサンのちょうど間にあり、夜遅くまで開いている店も多い。23時くらいまで映画を観ている身としては好都合だ。 海雲台の駅を出ると、大きな通りが海まで続いている。そして、大小様々...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:10 AM

October 17, 2019

『これは君の闘争だ』エリザ・カパイ
田中竜輔

 ブラジル・サンパウロでの2013年の公共交通機関の値上げ、2015年の公立校の実質的な廃校に伴う教育予算の削減提言。それらに対する蜂起として、ブラジル全土を巻き込んだ特大規模の学生運動が組織される。『これは君の闘争だ』の主人公たるルーカス("コカ")、マルセル、ナヤラの3名は、もちろんその運動に積極的に参与した高校生たちである。本作でフォーカスされるのは、先述した教育予算の削減が立案された201...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:59 PM

October 16, 2019

『十字架』テレサ・アレドンド、カルロス・バスケス・メンデス
新谷和輝

 チリの映画で「1973年9月11日以降」を扱ったものと聞けば、おおよそのイメージがすぐに思い浮かぶ。アジェンデ政権を破壊したクーデターの衝撃的な爆撃映像、その後の独裁政権下で次々と行方不明となった市民たち、彼らを探して今なお苦しむ遺族......。これらのイメージが定着しているのには、パトリシオ・グスマンが自身のライフワークとして発表してきた作品群で、チリの「被害の歴史」を繰りかえし描いてきた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:36 PM

October 14, 2019

『空に聞く』小森はるか
結城秀勇

 タイトルにある「空」にはふたつの意味が込められている、と映画祭カタログに所収の監督のことばにはある。多少言葉を自分なりに言い換えてみると、ひとつは死者の魂の居所としての空(sky)、もうひとつはこの作品の主人公である阿部裕美さんの声が響く仮想の空間としての空(air)、というようなことではないだろうか。前者には過去が、後者には未来が対応している、などと言えなくもなさそうだが、その辺は見る者それぞ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:55 PM

October 13, 2019

『死霊魂』ワン・ビン
坂本安美

 王兵(ワン・ビン)の『鳳鳴中国の記憶』(2007)を見た体験は、忘れられない、特異な記憶として残っている。ひとりの老女が雪道を歩き、彼女の住む小さなアパートへと入って行き、テーブルの前に腰を下ろす。そして和鳳鳴という名の女性は語り始める。ほぼフィクスの映像の中の彼女の着ている赤い服、その小さな部屋、照明、そしてしだいに暗くなっていく外の光の推移と共に感じられる時間。一度、電話がかかってきて話を中...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:23 PM

October 10, 2019

『典座ーTENZOー』富田克也
結城秀勇

 『サウダーヂ』以降、富田克也が監督する長編劇映画は、先行する「リサーチ」の成果物と対になっている。『サウダーヂ』に対する『Furusato 2009』、『バンコクナイツ』に対する「潜行一千里」(『映画 潜行一千里』も書籍の『バンコクナイツ 潜行一千里』もある)。「リサーチ」は出来上がった劇映画のいわばパラレルワールドのようにも見えて、同じ話題が繰り返されたり(『サウダーヂ』のモール建設予定地で目...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:03 PM

September 24, 2019

『旅館アポリア』ホー・ツーニェン@あいちトリエンナーレ2019
隈元博樹

 展示会場である愛知県豊田市の「喜楽亭」は、明治時代後期からつづいた料亭旅館であり、大正末期を代表する町屋建築として知られている。戦前は養蚕や製紙業、戦後は自動車産業と深く結び付く要人のための社交場だったらしいが、戦中は神風特攻部隊である「草薙隊」の若者たちが同市の伊保原飛行場から沖縄戦へと出撃する最後の夜に宿泊した場所でもあったという。現存する建物は1983年に復元移築されたものだが、シンガポー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:05 PM

September 16, 2019

カンヌ国際映画祭2019からパリへ(1) シネマテーク・フランセーズにおけるアルノー・デプレシャン全作特集
坂本安美

5月のカンヌ。ワールド・プレミア上映された作品を発見し、批評家を含めた映画人たちとそれら作品について即座に語り、批評し合う、国際映画祭特有のライブ感溢れる刺激的な体験がそこにある。そして8月の終わり、9月の初め(映画の題名のように!)のパリ。学校や仕事も切り替えの時期、カンヌでお披露目された作品を含めた新作が劇場公開され、新聞やラジオやテレビ、そしてカフェやディナーの席、映画館や道端でもさらに掘り...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:35 PM

September 13, 2019

『暁闇』阿部はりか
隈元博樹

「LOWPOPLTD.」名義の音楽をクラウド上で共有していたサキ(越後はる香)とユウカ(中尾有伽)は、その消失と引き換えに、物々しくそびえ立つビルの屋上とそこに佇むコウ(青木柚)の姿を発見する。その屋上とは、これまで彼らが身を潜めていた日常の狭々しい空間とは異なる、どこか開放的で無機質さを帯びた空間だ。学校の図書館から借りた三浦綾子の『続・泥流地帯』を読んだり、見知らぬ男性に買ってもらった花火に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:07 PM

September 12, 2019

『アラビアン・ナイト』ミゲル・ゴメス
田中竜輔

*2015年の広島国際映画祭及び関連上映企画にて上映されたミゲル・ゴメス監督『アラビアン・ナイト』が、「イメージフォーラム・フェスティバル2019」にて再上映されます。それに際しまして「NOBODY ISSUE45」所収の『アラビアン・ナイト』評を掲載します(再掲にあたって一部改稿を施しています)。同45号には本作についてのミゲル・ゴメス監督インタヴューも掲載、ぜひ上映に合わせてお読みください! ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:00 PM

September 11, 2019

京都滞在日誌2019@ルーキー映画祭③
隈元博樹

2019年9月8日(日) 連日の疲れから来たものなのか、朝からひどい腹痛に悩まされる。しばらくホステルで安静にしたのち、午前中は市営バスに乗って出町柳の「出町枡形商店街」へ。アーケードをブラブラ歩いていくうちに、大きな「出町座」の看板が目に留まる。おもむろに中へ入ると、中央には書籍の棚に囲まれるようにカウンターキッチンが配備され、劇場は地上階を挟んだ2階と地下1階にあるようだ。今回は出町座での映画...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:07 PM

September 10, 2019

京都滞在日誌2019@ルーキー映画祭②
隈元博樹

2019年9月7日(土) 遅く起きた朝。身支度を急いで済ませ、近所の「カフェー天Q まつ井食堂」で昼食を摂る。この食堂も千本通りに点在する町屋をリノベーションした店舗で、正面の引き戸を開けるやいなや、目の前にはDJブースやPA機器、アンプ一式が並んだスペースに二人掛けのテーブルやソファが並んでいる。おそらく日中は定食屋、夜はライブハウスに様変わりするのだろう。見る見るうちにお客さんも多くなり、厨房...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:00 AM

September 8, 2019

京都滞在日誌2019@ルーキー映画祭①
隈元博樹

2019年9月6日(金) もう何年ぶりかの京都。新横浜駅から新幹線「こだま」で約3時間の移動を経て、京都駅に着いたのが午後3時ごろだった。先週訪れた帰省先の福岡もひどい暑さだったけれど、ここ京都も引けを取らないほどの残暑に見舞われている。秋と言うにはまだまだ程遠いようだ。今回の滞在はグッチーズ・フリースクールと8/23にリニューアルしたばかりの京都みなみ会館による「ルーキー映画祭」なので、「初心、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:59 PM

September 1, 2019

『寝ても覚めても』濱口竜介@YCAM
渡辺進也

 上映前のレクチャーで、YCAM(山口情報芸術センター)で通常映画の上映をしている(ミニシアターのような)Cスタジオと、映画の上映のための施設ではなく、むしろ舞台などがメインで使う広い空間である(爆音映画祭の会場でもある)Aスタジオの2ヶ所で『寝ても覚めても』のいくつかの場面を聴き比べる。  Cスタジオがスクリーン正面、右、左。サイドの壁、重低音用など6~7個くらいのスピーカーを使っているのに対し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:01 AM

August 31, 2019

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」』クエンティン・タランティーノ
千浦僚

 いま自分が観ているこの映画は何であろうか、と思いつつ、散りばめられたというよりもその無数の細部に全体の重量を担わせるようなネタの連打、乱れ撃ちと、いくつかのシーンにおいてスクリーンにみなぎる映画らしい空間、時間、ムードによって楽しく観た。あっという間の百六十分。幾分ダラッとした穏やかな満足で、観終えるやいなやもう一回観てもいい気分。  しかし、もしそうしたとしてもおそらくこの『ワンス・アポン・...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:38 AM

August 28, 2019

『帰れない二人』ジャ・ジャンクー
坂本安美

 昨年、2018年カンヌ国際映画祭では、20世紀に立ち戻り、そこから現在へと遡及する作品が何本か見られた。『COLD WAR あの歌、2つの心』、『幸福なラザロ』、もちろん『イメージの本』もその一本として数えられるだろう。すべてが平面の上に浮かんでは消えていくような現在において、20世紀というすでにはるか遠くに思える時代に立ち戻り、21世紀との間にどうにか時間的遠近法を見出そうとする試みであるかの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:13 PM

August 17, 2019

『間奏曲』ダグラス ・サーク
結城秀勇

 8/16、アテネ・フランセ文化センターでの「中原昌也への白紙委任状」のトーク用に調べたことを簡単にメモしておく。 ・基礎情報 1. 1957年製作のこの作品は、以後サークのフィルモグラフィとして『翼に賭ける命』『愛する時と死する時』『悲しみは空の彼方に』という傑作群を残すばかりという監督として脂の乗り切った時代の作品にもかかわらず、研究書等でもきちんと触れられることが少なかった。アメリカ本国にお...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:38 PM

August 14, 2019

『ワイルドライフ』ポール・ダノ
梅本健司

 初雪が降り出す中、停車していたバスが出発する。ジョーにとって、初雪は山火事の消火に行っていた父(ジェイク・ギレンホール)の帰還を知らせる合図である。初雪を見た彼は、いてもたってもいられなかったのだろう、勢いよく、バスとは逆の方向に走り去る。カメラは、急ぐ彼とは打って変わってゆっくりとしたパンでそれを追う。そのゆっくりさがいい。速くカメラを動かさずとも、またカットを割らずとも、カメラを構えれば、あ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:12 AM

August 5, 2019

『彼女のいた日々』アレックス・ロス・ペリー
渡辺進也

 これだけ配信サイトがあると、いつ、どこのサイトでどの作品が配信が行われているのかが全くわからないでいる。以前みたいにDVDスルーだったらTSUTAYAの新作コーナーに行けばそこで追うことができていたけれど、それが配信になってしまうと、新しくリリースされていてもまあ気がつかない。僕の場合、ずっとみたいと思っていてみれない監督のひとりにアレックス・ロス・ペリーというアメリカの監督がいて、海外版のソフ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:47 AM

July 21, 2019

第30回(2019年)マルセイユ国際映画祭(FID)報告
槻舘南菜子

 2019年7月9日から15日まで開催されたマルセイユ国際映画祭は、今年30周年を迎えた。35カ国以上から125本の作品が選ばれ、フランスにおける中規模映画祭として、圧倒的な国際性を有するジャンルの垣根を越えた豊穣なプログラムは今年も健在だ。記念の年を祝って、映画祭に所縁のある32人の監督の手がける40秒から4分の短編によって編まれたオムニバス映画が製作され、ラブ・ディアズ、クレモン・コギトール...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:35 AM

July 18, 2019

『さらば愛しきアウトロー』デヴィッド・ロウリー
梅本健司 坂本安美

Just living  ひとりの男の背中が映る。奥では女が札束を鞄に詰め込んでいる。慌ただしいタイマーの音や警察の通信機から聞こえる会話とは異なり、彼はいたって落ち着いてる。女が札束を詰め終わると、男はベルを鳴らし、銀行を後にする。彼の顔は見えない。彼の動作だけに注目すれば、それが強盗なのだということさえ判らないだろう。そのように彼はいつも扉を開け、その人の前に立ち、その人を見つめ、お金を、車を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:47 PM

July 17, 2019

『旅のおわり世界のはじまり』黒沢清
結城秀勇

 それこそ某バラエティ番組のタイトルのように「世界の果て」と呼びたくなるような、ウズベキスタンの景色。あまりに巨大すぎる人造湖や、どこまでも広がる平原、人でごった返すバザール。だがぼんやりと見ているうちに思うのは、それが「世界の果て」まで来たからこそ目にすることができるありがたい映像として撮られているかと言えば、まあそうではないということだ。  劇中で撮影されている16:9サイズの番組用映像と比較...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:16 PM

July 14, 2019

中山英之展 , and then@TOTOギャラリー・間
隈元博樹

 会場の「ギャラリー・間」には、展示と上映を行うための3つの空間が存在する。3Fの展示空間には中山英之がこれまでに手がけた「2004」「O邸」「道と家」「弧と弦」「mitosaya薬草園蒸留所」「かみのいし」にまつわる参考文献やスケッチ、図面、写真、模型が縦横に広がり、台座の側面や壁面には自身の着想と考察を交えた直筆のキャプションが施されている。また外のテラスには、ベニヤ板に石の表面がプリントされ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:57 PM

July 5, 2019

『嵐電』鈴木卓爾
渡辺進也

 嵐電の駅に併設されたカフェで、8ミリの上映会が行われている。その中では一般の方が撮られた嵐電の姿が上映されていて、それが途中から『嵐電』の登場人物たちの姿が映る劇中のものへと変わってゆくのだが、それらが自然と並んでいることにすごく驚かされる。それは、単に各々の映像の質が似ているからということだけではなくて、作品と関係ないところで撮られた映像と作中の映像とが同じように並んで上映されていても不思議で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:50 AM

June 28, 2019

ギィ・ジル、感情の真実を追い求めて
ジュリアン・ジェステール

今回の日本でのギィ・ジル特集開催を何年も前から望み、提案し続けてくれ、そしてついに今年3月、第1回「映画/批評月間」開催のために来日した仏日刊紙「リベラシオン」文化欄チーフ、映画批評家のジュリアン・ジェステール。長らく評価されずに忘却、あるいは無知の中に葬られていたジルの作品が、2014年にようやくシネマテーク・フランセーズにて全作特集上映された際の同氏の記事、「ギィ・ジル、感情の真実を追い求めて...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:26 PM

June 27, 2019

『幻土』ヨー・シュウホァ監督インタヴュー「Outside to Outside」

Outside to Outside 大規模な埋め立て事業によって、国土の拡張を図り続けるシンガポール。ヨー・シュウホァ監督の長編2作目となる『幻土』(げんど)は、そんな母国を舞台に、現場で働く移民労働者の失踪事件と、その真相に迫る刑事との混沌とした夢現な状況を描いている。刻一刻と変容する都市の景観、海岸沿いを覆うネオンの照射、そして異国の地で繰り返される日常の搾取に対し、いまだ見ぬ夢の場所を想像...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:43 PM

June 20, 2019

『スケート・キッチン』クリスタル・モーゼル
結城秀勇

 実在するNYの女性スケーターグループが自らを演じる映画、miu miuのショートムービープロジェクトから長編化された作品、ラリー・クラークの『KIDS/キッズ』が引き合いに出されるような「若者のいま」を切り取った作品......。まあなんかとにかくオシャレそう、くらいに考えていた前情報は、カミール(レイチェル・ヴィンベルク)がVANSのスニーカーと微妙な丈のショートパンツにインしたTシャツ、そし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:33 AM

June 8, 2019

『宝島』『七月の物語』ギヨーム・ブラック
結城秀勇

 ギヨーム・ブラックのこの二本の作品を(とはいえ『七月の物語』はさらに二本の短編からなるのだが)並べて語りたいと思ったのは、『七月の物語』の前半をなす「日曜日の友だち」と『宝島』が同じセルジー=ポントワーズのレジャーセンターというロケーションを共有しているから、ということももちろんあるのだが、それ以上の理由もある。アンスティチュ・フランセ東京での『宝島』上映後のトークでブラックは、『宝島』に登場す...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:54 PM

June 7, 2019

『ガーデンアパート』石原海(UMMMI.)
隈元博樹

 「庭付きのアパート」といったタイトルの由来は、本編を見終えたあともハッキリとわからないところではある。ただ、ひとまずこの映画に言えることは、居住空間を含めた登場人物たちの周囲には、彼らが横になるための場所がそこかしこに点在しているということだろう。それは妊娠中のひかり(篠宮由香利)と恋人の太郎(鈴村悠)が住む自宅のベッドをはじめ、彼の叔母の京子(竹下かおり)が暮らすアパートの寝室、酒瓶の並んだバ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:23 PM

June 4, 2019

『ナンバー・ゼロ』ジャン・ユスターシュ
結城秀勇

 モノクロ・スタンダードのざらついた画面で、ふたつのカメラ位置が時折切り替わる以外にはほとんど画面上の映像に変化らしい変化が起こらないとさえ言えるこのフィルムを見ていると、にもかかわらず、部分部分でカラーのイメージが思い浮かんだり、動きのある映像が思い浮かんだりする。たとえば、話がペサックの「薔薇の乙女」という祭りに及ぶとき、「ペサックの薔薇の乙女79」に収められたカラー映像の存在はそうした作用に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:20 PM

June 1, 2019

『ECTO』渡邊琢磨
隈元博樹

 客席とスクリーンのあいだに現れた13名の弦楽奏者と、彼らを指揮する渡邊琢磨の姿が捉えられたとき、トーキーシステムの確立前に行われていた劇場型の上映形態をふと夢想する。世界初のトーキー映画が1927年公開の『ジャズ・シンガー』とするならば、それ以前に上映されていた映画はサイレントであり、当時の人々はこのような映画体験を求めて劇場へと足を運んでいたのだろうかと。ただし、客席とのあいだから奏でられるト...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:31 PM

May 27, 2019

第72回カンヌ国際映画祭レポート(6) 閉幕に寄せて
槻舘南菜子

 第72回カンヌ国際映画祭が5月25日に閉幕した。若手監督が多くノミネートした昨年に比べるとやや保守的、映画史を揺るがすような力強い作品に欠けたセレクションではあったものの、受賞結果について述べるのなら、そこにはこの映画祭にとって革新的とも言える面持ちが並んだ。審査委員長のアレハンドロ・ゴンサレス・イリニャイトゥは審査について、政治的なメッセージは一切関係なく、純粋に映画としていかに評価できるかが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:25 PM

May 26, 2019

第72回カンヌ国際映画祭レポート(5) 四人の女性監督たち
槻舘南菜子

  昨年(2018年)のカンヌ映画祭では、は映画産業での男女機会均等を求め、審査委員長ケイト・ブランシェットを含む82人の女性(この数字は、カンヌ映画祭誕生から昨年までにノミネートした女性監督の数に由来する、対して男性監督の数は1688人)がレッドカーペットを歩くという象徴的なイベントが開催された。今年もまたフランス女性監督の草分け的な存在であり、ジェーン・カンピオンとともに女性監督として唯一パル...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:09 PM

May 22, 2019

第72回カンヌ国際映画祭レポート(4) あるものはあるーー『Fire will come』オリヴィエ・ラックス(「ある視点」部門)
槻舘南菜子

 映画祭という場では、映画の有する社会的な役割があたかも「同時代の特徴を映す」ことだけ、あるいは「社会の陰部を告発する」ことだけであるかのような作品が溢れてかえっており、そのことはこのカンヌも例外を免れてはいない。しかしそのような傾向において、先立って紹介した『Liberté』(アルベルト・セラ)と並び、『Fire will come』(オリヴィエ・ラックス)はそれに真っ向から抵抗した作品のひとつ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:39 PM

May 21, 2019

第72回カンヌ国際映画祭レポート(3) 『Liberté』アルベール・セラ
槻舘南菜子

『Liberté』アルベール・セラ  今年の「ある視点」部門でのセレクションを見わたしてみると、昨年から引き続き、新人監督の処女作、もしくは第2作目が全体のほぼ半数を占めており、併行部門となる「批評家週間」と同様に若手発掘が主たる目的となるような趣である。しかしながら一方で同部門では、観客を挑発し映画の枠組みを揺るがすような先鋭的、実験的な作品は忌避される傾向にもある。そんななか、本年のセレクシ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:42 PM

May 17, 2019

第72回カンヌ国際映画祭レポート(2) 『Les Misérables』ラジュ・リ
槻舘南菜子

 今年のコンペティションには、アフリカにルーツをもつ監督による2作品、ラジュ・リ『Les Misérables』とマティ・デイオップ『Atlantique』がノミネートした。両作品とも長編以前に同タイトルの短編を制作しているという共通点はあるが、両者の映画に対するアプローチはまったく異なっている。  ラジュ・リィは、アフリカのマリに生まれ、両親とともに幼い頃にフランスに移住し、初長編から彼の作品の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:02 PM

May 16, 2019

第72回カンヌ国際映画祭レポート(1) 開幕
槻舘南菜子

   第72回カンヌ国際映画祭が5月14日に開幕した。若手監督を中心に大きく刷新された昨年のセレクションと比較すると、今年のそれはいささか反動的といえる。開幕上映作品であるジム・ジャームッシュ監督『The Dead don't Die』を筆頭に、ほとんど機械的にコンペティション入りを果たしたかのようなダルデンヌ兄弟(『Young Ahmed』)、ケン・ローチ(『Sorry We Missed ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:06 PM

May 14, 2019

『救いの接吻』フィリップ・ガレル
池田百花

 愛について語り合い苦悩する男女。愛とは、人生とは、物語とは......。フィリップ・ガレルの映画では、そんな会話をとめどなく続ける人々の姿がこれまで何度も描かれてきた。『救いの接吻』でも、映画監督の夫が、女優である妻をモデルにした役を他の女優に演じさせようとしたことから、ふたりの愛は終わりの危機を迎え、彼らは苦悩し、愛や人生、物語についての対話が繰り返される。ここで映画監督の夫を演じているのはフ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:54 PM

May 5, 2019

『嵐電』鈴木卓爾
隈元博樹

 嵐山本線(四条大宮駅−嵐山駅)と、北野線(北野白梅駅−帷子ノ辻駅)からなる「嵐電」(らんでん)こと京福電気鉄道は、京都市内を運行する路面電車のことである。「モボ」と呼ばれる車形に京紫やブラウン、また時として江ノ電カラーに彩られた小ぶりな車輌は、当然ながら地元の人々をはじめ観光客の交通網として京都の市内をひた走るのだが、いっぽうで本作に登場する嵐電は、人々の日常の一部を蠢くひとつの物体のようにも見...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:17 PM

『ドント・ウォーリー』ガス・ヴァン・サント
結城秀勇

 アメリカ映画で「禁酒会」の描写としてよく見かけるAA(アルコホーリクス・アノニマス)という団体には、「12のステップ」という方法論があるということが本作でも触れられている。己の無力さを認める、という段階からはじまる12のそれは、ステップという言葉通り、順を追ってひとつづつ到達しなければならない状態である。ひとつひとつの段階の難易度の上昇度は一定ではない(というか、それとそれ、ほとんど一緒じゃん、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:18 PM

May 1, 2019

フランス・キュルチュール「ラ・グランド・ターブル」2019年 4/15(月)放送
ジャン=リュック・ゴダール インタヴュー 第一部

 日本では(幸運にも!)4/20(土)に劇場公開されたジャン=リュック・ゴダールの最新作『イメージの本』、フランスでは、昨年のカンヌ国際映画祭で上映されたほかは、今のところテレビ局アルテで放映されるのみである。その放映日の4日前、2019年4/15(月)、公共ラジオ放送局フランス・キュルチュール(https://www.franceculture.fr/)の文化番組「ラ・グランド・ターブル」にてジ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:15 PM

April 20, 2019

『僕らプロヴァンシアル』ジャン=ポール・シヴェラック
マルコス・ウザル

潜在的なる上昇 決然とした叙情性によって、ジャン=ポール・シヴェラックはパリに上京してきた学生の周囲に集まる情熱的な映画の学生たちの集団を描く。若者たちの理想についての非常に繊細な肖像画。 『僕らプロヴァンシアル』は、何世紀も前から、フランスの若者たちが、毎日、ほぼ同じような興奮と同じような幻想を抱いて行ってきた、きわめて小説的、ロマネスク的である次のような場面で始まる。故郷(この場合はリヨン)...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:31 AM

April 19, 2019

『ユニコーン・ストア』ブリー・ラーソン
梅本健司

 『キャプテン・マーベル』や初監督短編の『Weighting』といった作品のブリー・ラーソンを見ていると、過去を背負いながらも、素早く大胆に動き回る様が印象的だと思った。ただ、それ故に彼女は周囲の人間を置いてけぼりにし、孤独に向かっている気もする。彼女の長篇処女作である『ユニコーン・ストア』においてもまた、やはり素早く大胆に動き回る彼女が主演をつとめている。
   冒頭、幼い少女の映像がいくつか流...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:58 PM

『殺し屋』マリカ・ベイク、アレクサンドル・ゴルドン、アンドレイ・タルコフスキー 
千浦僚

 すべてをあきらめ坐して死を待つことへの暗い欲望と、それに対する反発としてようやくあらわれる生への希求。  ソヴィエト国立映画大学での課題として、1956年に当時24歳のアンドレイ・タルコフスキーがマリカ・ベイク、アレクサンドル・ゴルドンという学生と共同で監督した、約二十分の短編映画『殺し屋』には既に後年タルコフスキーが反復し深化させる主題が含まれているようにも見える。  日本ではこの短編は02年...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:24 AM

April 17, 2019

『愛がなんだ』今泉力哉監督インタヴュー

関係の現状維持を目的にしてしまう人の物語に魅かれる 「体裁とか、不謹慎とか。友情とか、家族とか。生活とか、夢とか。社会とか、身分とか。そういう類いのものは"好き"という気持ちの前では無力だ」──今泉力哉の長編第三作『こっぴどい猫』の主人公が書いた小説『その無垢な猫』にあるこの一節は、角田光代の原作を映画化した彼の最新作『愛がなんだ』の主人公テルコのためにあるのかもしれない。職務を怠慢でクビになろ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:57 PM

April 14, 2019

『反復された不在』ギィ・ジル
池田百花

 «Le temps, le temps, le temps...»この物語の主人公であるフランソワの口から漏れ出す「時」という言葉。彼は過ぎ去っていく「時」に囚われ翻弄されていて、すべてが自分の手からすり抜けていってしまい、自分がどこに向かっているのかわからないと言う。人々の顔のクロースアップが多用されているように、街で見かける顔や体をすべて自分のものにしたくなると彼が言うのは、自分の中で失われ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:18 AM

April 12, 2019

『バンブルビー』トラヴィス・ナイト
隈元博樹

 はるか彼方の惑星を巡るロボットたちの宇宙戦争が、結局は地球上での肉弾戦に落ち着くのであれば、これまで「トランス・フォーマー」シリーズを牽引してきたマイケル・ベイの息吹を少なからず感じるだろうし、未知なる生命体とティーンエイジャーたちとの密かな交流が描かれるならば、ベイとともにクレジットを連ねてきたスピルバーグの影をそこに見出すこともできるだろう。しかし、『バンブルビー』が過去のシリーズと一線を画...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:48 AM

『ワイルドツアー』三宅唱
渡辺進也

 山口情報芸術センター[YCAM]のバイオラボを舞台に、山口市の周辺の草木を集めるワークショップが行われる。スタッフの「もしかしたら新種が見つかるかもしれないよ」という言葉に、突然ワークショップの行われている一室の世界が広がりはじめる。採取した草木がDNA鑑定にかけられて解析が進められると、そこで一気に身の回りにあるものが最先端の技術とつながる。身の周りにあるものがもっと大きな世界に、そして最先端...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:47 AM

April 6, 2019

『沈没家族 劇場版』加納土
千浦僚

 粗さも目につくし、私的ドキュメンタリーの過去有名作に比べればマイルドだと思ったが、多くのひとに観られてほしいドキュメンタリーだ。  簡単に説明すれば、シングルマザーが子育てするのに保育人を募り、その呼びかけで集ったひとたちが共同生活をし、ちゃんと子どもも育った。その育った子本人が母親と当時のその生活を捉えてみた、というドキュメンタリーだ。   出来事の起こりは、本作の監督加納土氏が生まれたこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:43 AM

April 5, 2019

『運び屋』クリント・イーストウッド
結城秀勇

 あまりにも一瞬で12年という時が過ぎて、孫の少女が大人の女性に変わったほかは、俳優たちの身体すら時の流れに追いつけなかったかのようだ。いくら子供の成長より遅いとはいえ、さすがに78歳と90歳はもうちょい違うんじゃねえか、とも思うが、時は勝手に過ぎ去っていくけど人間はそうそう変わらないということだけを念押しするかのように、あの意味不明な「ジェームズ・ステュアートに似てる」発言は繰り返される。  時...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:13 PM

April 3, 2019

『ジェシカ』キャロリーヌ・ポギ&ジョナタン・ヴィネル
結城秀勇

 「オーファン」と呼ばれるはぐれ者たちは、その呼び名の通り孤児であるがゆえに自らの内にある暴力性に抗うことができずに、犯罪を繰り返すのだという。どこからともなく現れたジェシカと呼ばれる女性が彼らをまとめあげ、「オーファン」たちを処刑するためにつくられた「特殊部隊」に抵抗する組織をつくりあげたのだという。こうした設定のようなものはボイスオーバーによってさらりと語られるのだが、いったい「オーファン」た...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:09 PM

April 2, 2019

『グッドバイ』今野裕一郎
三浦翔

 分断された川の向こう側に男がいる。その男がこちら側に戻ってきたときには記憶を失っている。あるいは電話の向こうにいる相手には見えないはずの風景を伝えようとする女たち。分断された川に限らない、「ここ」と「よそ」を思考することが『グッドバイ』のテーマではあるだろう。  それは今野裕一郎がバストリオというパフォーマンスユニットで試みてきたものでもあった。『わたしたちのことを知っているものはいない』(20...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:34 PM

April 1, 2019

『ジェシカ』キャロリーヌ・ポギ&ジョナタン・ヴィネル
池田百花

 閑静な住宅街に建つ一軒の家と、血を流した青年、そして彼の救護に駆けつける戦闘服姿の一団。そんな異様な光景とともに物語は幕を開け、穏やかな女性の声によってその背景が語られていく。そこでは、親の愛情を知らずに育ち心に「怪物」を抱えた孤児たちが大人たちから命を狙われていて、彼らのなかには映画の冒頭で登場する青年のように絶望して自ら命を断とうとする者もいる。社会に対して危険分子となりかねない孤児たちの命...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:27 PM

March 26, 2019

『スパイダーマン スパイダーバース』ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン
結城秀勇

 オープニングのSONYのロゴがインクのドット状に分解して散っていくところで、すでになんだかアガる。「スパイダーマン」シリーズに限らずマーベルのロゴが出るときの、あのアメコミ独特のインクのドット感が気持ちがいいのってなんだろうと思っていた。紙の手触り、インクの匂いへのただのノスタルジーなのだろうか(ついでにマーベルユニバースへの統合に向かう流れの前に消えていってしまったフィルムの粒子へのノスタルジ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:16 AM

March 23, 2019

『35杯のラムショット』クレール・ドゥニ
隈元博樹

 パリの公共鉄道「RER」の運転席から映し出される郊外の風景と、幾重にも蛇列する複数の線路が並ぶオープニングの様相は、この『35杯のラムショット』に漂う複雑さと、ある種の脆さをそこはかとなく暗示している。だからこの映画が父と娘の物語であることは事前に知り得ていたものの、父のリオネル(アレックス・デスカス)と娘のジョゼフィーヌ(マティ・ディオブ)が暮らすアパルトマンでの冒頭のやりとりから戸惑ってしま...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:36 AM

March 17, 2019

『小さな声で囁いて』山本英監督インタヴュー

光を観る 映画は幾度も旅を描いてきたし、いつも風景が問題になる。山本英もまた熱海という観光地に向き合うのだが、山本の描く旅にはそもそも目的がはっきりとせず、沙良(大場みなみ)と遼(飯田芳)の過去に何があったのかもほとんど分からない。ふたりは未来を見失った放浪者だろう。しかし、熱海の風景は観光地としての夢を見させる力を失っている。代わりにあるのはいくつもの過去で、自分たちの過去すらもが朧げなふたり...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:41 PM

March 14, 2019

『月夜釜合戦』佐藤零郎
結城秀勇

 一見釜のように見えるそれは、実は盃なのである。なので米を炊くのにも使わないし、なにかを茹でることもない。ところが本当は盃だから米を炊かないのかというとそれだけでもない。この映画にはちょっと見たことのない量の釜が山のように登場するが、それら本物の釜たちも基本的には米を炊くためには使われない。釜のような盃、が紛失したことによって、同じ見た目の釜たちの交換価値は本来の使用価値に対して異常に高騰し、その...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:15 PM

March 12, 2019

『ジャン・ドゥーシェ、ある映画批評家の肖像』をめぐって(「映画/批評月間〜フランス映画の現在〜」特集より)
坂本安美

「映画/批評月間〜フランス映画の現在〜」は、とにかく今見るべき面白い映画、他の劇場ではなかなか見られないフランス映画を紹介するとともに、「映画」と「批評」の弁証法的関係、そしてその秘められた多くの可能性を考察すべく企画された。その趣旨を確認し、主催者としても気を引き締めて特集をスタートするために、長年に渡り「批評」の醍醐味を身をもって示し、数多くの映画人たちを育て、発掘してきたジャン・ドゥーシェ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:30 AM

March 11, 2019

『20年後の私も美しい』ソフィー・フィリエール
結城秀勇

 ふたりの女優がひとりの女性の異なる年齢を演じる映画だと聞いていたから、ひとりが現在にあたる時代を演じ、もうひとりが同じ人物の過去、あるいは未来を演じているのかと思っていた。しかし、『20年後の私も美しい』という映画におけるふたりのマルゴーは、まったく同一の時代を同時に生きている。さらには、ふたりを同一人物だと断言できる決定的な証拠はなにひとつ劇中で提示されない。  それでも、サンドリーヌ・キベル...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:03 PM

March 7, 2019

挑戦の場としてのフランス映画――「映画/批評月間~フランス映画の現在をめぐって~」によせて
ジュリアン・ジェステール

これまで20年近く続けてきた「カイエ・デュ・シネマ週間」をあらため、今年より「映画/批評月間~フランス映画の現在をめぐって~」と題し、同雑誌を含みより多くのフランスのメディア、批評家、専門家、プログラマーらと協力し、最新のフランス映画を紹介する。そして特集名が示すよう「映画」と「批評」の関係にスポットライトを充てられるイベントにしていきたいと思う。それこそフランス映画の醍醐味であり、ひいては映画全...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:50 PM

February 17, 2019

『王国(あるいはその家について)』草野なつか
結城秀勇

 タイトルにある「王国」とは、直接的には、幼い頃のアキ(澁谷麻美)とノドカ(笠島智)がある台風の日にシーツと椅子で作り上げたお城と、その周りに広がるはずの想像上の空間を指す。それから20年あまりを経た彼女たちの関係性にも未だ、あの日の「王国」は影響を与え続けている。少なくともアキはそう考えている。しかも、それがただアキのひとりだけの思い込みだと断じることができないのは、「王国」のせいであろうとなか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:33 PM

February 13, 2019

ガブリエラ・ピッシュレル監督インタビュー
常川拓也

some kind of hope in the pessimistic world ボスニア出身の母とオーストリア出身の父を持つガブリエラ・ピッシュレルは、かつてクッキーを箱詰めする工場で働いていた。だからこそ、その経験や価値観を指針とし、映画に正当な労働者の視点を持ち込んでいる。また同時に、彼女は「ロッキー・バルボア」のような度胸のあるへこたれない女性主人公を創出したいと語っていた。それらは、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:15 PM

February 9, 2019

『ワイルドツアー』三宅唱
結城秀勇

 飛び立つスズメとその鳴き声、水たまりに張った氷、フェンスと道路の間に挟まってカサカサと震える枯葉、川に至る階段、高架下で聞こえてくる「トントントントントン、さあきたよ、みぎみぎひだり......」という少年の声。冒頭、立て続けに配置される断片的な映像は、いったい誰の視点なのだろう。当たり前に考えれば、木々の葉が揺れる映像から、そこに向けてスマートフォンのカメラを構えるうめ(伊藤帆乃花)のカットへ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:56 PM

February 8, 2019

『ミューズ』安川有果(『21世紀の女の子』より)
隈元博樹

 『きみの鳥はうたえる』を観て以来、石橋静河の二の腕がとても気になっている。僕(柄本佑)や静雄(染谷将太)の肩にだらりと着地する、あの緩やかな感じ。また、衣服の袖先から描かれる、しなやかな上腕のライン。しかし、その興味の矛先は、彼女本来が持つ肉質な部分から来るものではなく、透き通るような肌の色艶に裏打ちされたものでもない。最もこの身体の一部に惹かれてしまうのは、目に見える実態としての有り様よりも、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:28 PM

February 3, 2019

『ヒューマン・フロー 大地漂流』アイ・ウェイウェイ
中村修七

 美術家のアイ・ウェイウェイが監督を務めた『ヒューマン・フロー 大地漂流』のような映画を見ると、居心地の悪い気持ちになる。なぜなら、一種の「社会正義」を表した映画に対して、少なからぬ苛立ちを覚えるとともに、批判的な態度をとらざるをえないからだ。実のところ、アイ・ウェイウェイに対する筆者の見方は少し複雑だ。彼に対しては、時々の情勢に応じて器用に立ち回る「政治屋」のようなところがあるのではないかとの疑...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:45 AM

February 2, 2019

『ミスター・ガラス』M・ナイト・シャマラン
結城秀勇

 これを見るために『アンブレイカブル』を見直したのだが、そこで得た教訓は、何事も程度の問題だよなということだ。イライジャ=ミスター・ガラス(サミュエル・L・ジャクソン)は言う、「コミックのヒーローたちの能力は誇張されてはいるが、それは本来人間が本能として持つものだ」と。つまり、彼の極度に傷つきやすい身体も、デイヴィッド=オーヴァーシーアー(ブルース・ウィリス)の極端にケガも病気もしない身体も、程度...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:12 AM

January 20, 2019

『あなたはわたしじゃない』七里圭
結城秀勇

 こうしてこの作品についてなにかを書こうとするときにすでに頭を悩ませているのは、作品のタイトルは『あなたはわたしじゃない サロメの娘 | ディコンストラクション』と副題込みで書くべきなのかどうかということだ。あった方がコンテクストはよくわかるが、しかし監督のオフィシャルサイトでは副題なしで表記されていて、だから正式な表記として、「サロメの娘 | ディコンストラクション」部分を前々作の「(in pr...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:54 PM

January 17, 2019

『スローモーション、ストップモーション』栗原みえ
隈元博樹

 この映画を一言で言い表すならば、東南アジアを訪れた作家自身の個人的な放浪旅の一途にすぎないのかもしれないし、そこで暮らす数年来の友人たちを記録したホームビデオだと説明できるのかもしれない。しかし、こうした一見閉塞的な要素を孕みそうな題材や内容であるにもかかわらず、『スローモーション、ストップモーション』に風通しの良さを覚えるのは、変わりゆくものや変わることに対する栗原みえの素直な反応によって、無...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:21 PM

『マディ・トラック』バーナード・シェイキー
結城秀勇

"Muddy Track is not a documentary, I don't know what the fuck it is." (ニール・ヤング)  ニール・ヤングの言う通り、『マディ・トラック』がいったいなんなのかはさっぱりわからない。だが上記の発言にもかかわらず、というか上記の発言ゆえにと言うべきか、ニール・ヤングは1995年のインタビューで「もっともお気に入り」...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:40 PM

January 13, 2019

『Rocks Off』安井豊作
結城秀勇

 灰野敬二が鳴らすアップライトピアノは、前板が取り外されてその中身をむき出しにしている。暗がりの中でわずかに長い髪が確認できるだけでその顔さえ見ることもできない演奏者とはうらはらに、ピアノはその内部を映画の観客の眼前にさらけ出し、音が作り出される過程を可視化する。しかしそれによって逆説的に、アップライトピアノは、演奏者が叩いた鍵盤がハンマーを動かし、ハンマーが弦を叩くことによって音が鳴る、という装...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:18 PM

January 8, 2019

『マチルド、翼を広げ』ノエミ・ルヴォウスキー
池田百花

 奇妙な言動を繰り返す母としっかり者の小学生の娘マチルド。母は家を空けることが多く、学校でも周囲になじめないマチルドはいつも一人で過ごしていたが、ある日彼女のもとに言葉を話すフクロウがやってくる。大人であることや母親でいることから逃れようとするかのように常に逃げ去りさまよう存在である母と、そんな母の娘として囚われの身となっているマチルド、そしてそこに訪れるフクロウもまた籠の中に囚われている。フクロ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:54 AM

January 2, 2019

『天使の顔』オットー・プレミンジャー
千浦僚

 フィルムノワールや犯罪メロドラマにおける、最強の悪女、ファムファタルは誰だろうか。  『マルタの鷹』のメアリー・アスター......『深夜の告白』、『呪いの血』のバーバラ・スタンウィック......『哀愁の湖』のジーン・ティアニー......『郵便配達は二度ベルを鳴らす』のラナ・ターナー......『過去を逃れて』のジェーン・グリア......『上海から来た女』のリタ・ヘイワース......『...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:13 PM

December 22, 2018

『犯罪王ディリンジャー』マックス・ノセック
千浦僚

......そもそもわれわれは信仰の対象とするほど多くの「B級映画」を見てはいないのだ。いったい誰が、マックス・ノセックを懐古しうるだろう。 蓮實重彥『ハリウッド映画史講義』  マックス・ノセック監督『犯罪王ディリンジャー』(45年)についていくつかのことごとを記す。  本作は1933年、34年にアメリカ中西部で銀行強盗や脱獄を繰り返したギャング、ジョン・ハーバート・ディリンジャ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:42 PM

December 15, 2018

『モスクワへの密使』マイケル・カーティス
千浦僚

 最近観ることのできた映画、マイケル・カーティス監督の『モスクワへの密使』(1943年)についていくつかのことごとを記したい。  が、そのまえに聴くたびにムカッとくるDA PUMPの曲"USA"についてちょっと書く。もうこの曲の、最初に意味を成した歌詞になる"オールドムービー観たシネマ(シネマシネマ)"というところでアホかっ!とキレているのである。どんだけお前らがアメリカ映画を観たっちゅうねん。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:34 AM

『突撃!O・Cとスティッグス/お笑い黙示録』ロバート・アルトマン
結城秀勇

 悪いことは言いません。わりと有名なMGMのライオンを見るだけでも損はなし。映画開始5秒で一気に腰砕け。なにやってんだ、ライオン......。  一度砕けた腰はなかなか戻らない。誰がどう聞いても「ピ◯クパンサー」だよなっていうBGMに合わせてシュワブ家の庭に侵入してくるO.C.とスティッグス。焼いてるロブスターを骨にすり替えたり、シュワブ家の電話でガボンに長距離電話をかけたり、とさまざまな「破壊工...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:32 AM

December 14, 2018

『パンチドランク・ラブ』ポール・トーマス・アンダーソン
稲垣晴夏

 郊外に住むなんてことない男の物語がこれほど幸福なのは、他でもなく作家によるこの街とそこで営まれる日常への愛があるからだ。ロサンジェルスの郊外にあたるサンフェルナンド・ヴァレーはハリウッドの北側、サンタモニカ山脈を越えた向こう側の街。ここは西海岸でありながら周囲を山々に囲まれているために、海すらも見えない。平坦なグリッド状の街区に敷かれただだっ広い道沿いには低層の倉庫や商業施設、建売住宅が殺風景に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:14 PM

『僕の高校、海に沈む』ダッシュ・ショウ
結城秀勇

 ある集団の権力関係について一番敏感なのは、集団に入って来たてのルーキーでも、その中である程度の地位を築いたベテランでもなくて、いつだって2年生=ソフォモアなのかもしれない。この作品の主人公ダッシュ(ジェイソン・シュワルツマン)は2年生として通学初日のバスの中で、親友アサーフ(レジー・ワッツ)に向かって、今日からおれたちは2年生なのだからもっと後ろの方に座ろう、と呼びかける。通学バスの座席は、車内...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:36 PM

December 13, 2018

『BOY』タイカ・ワイティティ
隈元博樹

 マーベル・コミックから映画化された「マイティ・ソー」シリーズの中でも、タイカ・ワイティティが監督した3作目の『マイティ・ソー バトルロイヤル』は、過去の2作(『マイティ・ソー』『マイティ・ソー ダーク・ワールド』)とはやや異なる様相を呈している。それは荻野洋一さんが「Real Sound映画部」(「"ユニバース"過剰時代における、『マイティ・ソー バトルロイヤル』の役割」) で指摘しているように...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:38 PM

December 10, 2018

『花札渡世』成澤昌茂
結城秀勇

 たとえば、東南西北で構築される麻雀のように、空間的に世界を模したゲーム及びそれを使ったギャンブルは数あれど、花札のように時間的に世界を構築したゲームは古今東西においても珍しいものなのではないかと思う(正確には花札自体はゲームではなく、『花札渡世』においても花札を用いた各種のゲームが登場するわけだが)。各札に割り振られた植物が12の月を示す花札は、『花札渡世』において時間経過を視覚的に示す効果的な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:56 AM

December 9, 2018

『花札渡世』成澤昌茂
千浦僚

 あるとき環状七号を富田克也氏の運転する車で運ばれていくなか、駄弁りで聞いた話。当時こちらは映画館のスタッフで、富田氏相澤虎之助氏ら空族の作品を上映していて日常つきあいがあった頃。私がフィルムの映写をずっとやっている身であることを富田氏が、そういうあまり他の人間がやってない技術で世を渡っていけるのはいいね、と買いかぶったところから、そういえば、と続けて、隠れカジノのルーレットディーラーの話をしてく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:04 PM

『ア・ゴースト・ストーリー』デヴィッド・ロウリー
奥平詩野

 本作が愛の可能性について肯定し、それ故に感動を呼び起こすのだと捉える事は、死が愛する人との無慈悲な別れを意味し、それによる喪失の絶対性から逃れたいと希望する私達にとって、得たいと望む感想だと思う。しかし、死者が纏ったシーツと、引き延ばされたり縮められたりする時間感覚や離人的世界体験は、逆に、死後の執着と喪失に晒される続ける鬱々とした絶望を私達に見せ、愛が失われない事の感動よりもむしろその事の空...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:44 AM

December 8, 2018

『バルバラ セーヌの黒いバラ』マチュー・アマルリック
結城秀勇

 彼女は鼻歌交じりで爪弾いていたピアノをやめて、オープンリールテープの録音を開始する。ピアノは再び奏で始められ、彼女の歌がそこに重なる。電話機を取り上げながら誰かに電話をかけた彼女は、窓辺に近づきながら月蝕について話をし......、そして彼女がテレビの前に移動したあたりではたと気づく。これって劇中劇の撮影シーンだったよな、と。  彼女が気軽な調子の歌をやめるのは「カメラが回ります」という合図のせ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:06 PM

December 6, 2018

『ヘレディタリー/継承』アリ・アスター
結城秀勇

 アニー(トニ・コレット)のつくったものだと後にわかるドールハウスの一室にズームアップしていき、それが息子ピーター(アレックス・ウォルフ)の実際の部屋へと切り替わる。壁紙やタンスや椅子がなぜか不自然なはめ込み合成なのが微妙に気持ち悪いのだが、その気持ち悪さの中には、ズームで寄る前には家全体の配置がドールハウスの断面で示されていたはずなのに、ズームアップからつながれた息子の部屋が、さっきまでのドール...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:58 PM

December 4, 2018

『アウトゼア』伊藤丈紘
隈元博樹

 ここに「いくつかの声、ひとつの夢、島/映画『Out there』のためのシナリオ」と題された映像がある。ふたつのプロジェクタによって映し出されたどこかの風景は、壁の上で少しズレた状態で重なり合い、それぞれに一定の時間が経てば新たな場面へと切り替わっていく。やがてふたつの映像はひとつだけ投写され、いっぽうはシナリオらしきト書きとセリフの文章を読み上げる誰かの姿へと変わり、そこで発せられる声に重なる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:51 PM

December 1, 2018

『現像液』フィリップ・ガレル
結城秀勇

 高い位置に据えられたベッドの上にうずくまる子供の影が、懐中電灯の光でグロテスクなほど巨大に、壁に投げかけられる。右側下方にパンをしていけば、呆然としている女がいる。男が部屋に入ってきて、彼女に酒のようななにかを飲まそうとするがうまくいかない。長いタバコをくわえさせるが、彼女が吸わないのでマッチを近づけても火はつかない。そこでより長いタバコを彼女にくわえさせ、反対側を男がくわえて、ちょうど真ん中に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:55 PM

November 29, 2018

『30年後の同窓会』リチャード・リンクレイター
結城秀勇

 見逃していたのを、ギンレイホールにて。  ラリー(スティーヴ・カレル)が、30年ぶりにベトナム時代の戦友ふたりに会いにいくのは、海兵隊であった彼の息子がバグダッドで殺されたからであり、死体の引き取りの付き添いを長年会っていなかった戦友に依頼するのは、彼らがかつてベトナムで死んだもうひとりの戦友という過去の罪を共有するからである。しかし、この映画が、どこまでも先送りにされていく旅の目的と、どこまで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:38 PM

November 28, 2018

『象は静かに座っている』フー・ボー@第19回東京フィルメックス
三浦翔

 若者の閉じた孤独な世界を被写界深度の浅い映像として表現することには、どれだけの可能性があるのか。『象は静かに眠っている』は、そのような問題提起的な作品だったろう。物語は、自分をバカにした番長的なクラスメイトを突き落としたことで逃亡するブーや、学校の先生と恋愛関係になったことがSNSで拡散されたリンなど、ひとつの街で生きる4・5の主となる人物の人生が少しずつ重なりながら展開して行く。ある種の群像劇...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:06 AM

November 22, 2018

『幻土』ヨー・シュウホァ
隈元博樹

 半世紀前から今も続く土地の造成によって、その国土を拡げてきたシンガポール。目の前の埋め立て現場を眺めながら、「きっと30年後もこの光景は変わらないだろう」と刑事のロク(ピーター・ユウ)が相棒の刑事へささやくように、この東南アジアの島国は再開発を背景とした都市の変容が宿命とされ、彼らの営みは、絶えず定まることのない地盤とともにある。加えて造成に必要な土砂たちは、マレーシアをはじめ、カンボジアやベト...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:37 PM

November 21, 2018

『体操しようよ』菊地健雄
結城秀勇

 レトロだけれどカラフルな調度に囲まれた、ガラス張りの温室が表に張りだすどこかモダンな一軒家。そこから海の見える坂道を下り、毎朝片桐はいりが掃除をしている神社がある三叉路を通り過ぎて行けば、駅に出る。おそらく駅の反対側に海があり、それを見渡す岬の突端に公園があり、海と山との途中のどこかに商店街があり、三叉路をいつもと違う方向に曲がれば、のぞみ(和久井映見)の営む喫茶店がある。映画を見ているとなんと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:25 AM

November 11, 2018

『アマンダ(原題)』ミカエル・アース
隈元博樹

 冒頭の小学校を捉えたシーケンスから、このフィルムの質感を最後まで見続けていたくなる。それは建造物自体への特別な興味や美しさを見出したわけではなく、展開されるカット割りや編集のリズムに心地良さを感じたわけでもない。もちろんそれは、『アマンダ』がスーパー16のフィルムで撮られたことの恩恵でもあるのだが、最もその衝動に駆られたのは、撮影時のロケーションに注がれた柔らかい自然光が、淡く漂う粒子のざらつき...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:46 AM

November 5, 2018

『ひかりの歌』杉田協士
三浦翔

 ランニングとは、全力ではないが息が上がるくらいのスピードで長い間走り続ける運動のことである。杉田協士の『ひかりの歌』をまなざす経験は、ランニングのように決して速くはない運動の持続に153分という時間をかけて徐々に魅了されていくことではないか。  4首の短歌を原作にした4つの短編には、それぞれに特別な決定的ショットというものがあるというよりも、むしろどのショットに映る時間もそれぞれが特別な時間であ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:59 PM

November 4, 2018

『月の砂漠』青山真治
梅本健司

Could I ever find in you again The things that made me love you so much then Could we ever bring 'em back once they have gone Oh, Caroline no  「Caroline No」の調べとともに、東京の夜の街、20世紀末に起こった様々な出来事、そしてホームビデオの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:00 PM

October 30, 2018

『教誨師』佐向大
田中竜輔

 6人の死刑囚との対話を請け負った大杉漣演じる教誨師・保は、ことあるごとに「えっ、私ですか?」と、目の前に座る死刑囚に聞き返す。マネキンのように押し黙った刑務官たちが壁際に同席してはいるものの、どう考えてもこの人良さげな牧師にかけられた言葉だと判断するほかはない囚人たちの些細な問いに対して、彼はいちいち「えっ」と驚いて、律儀に「私ですか?」と尋ねる。もちろんこのやり取りは、彼がまだほんの半年前にこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:55 AM

October 29, 2018

『FUGAKU 1 / 犬小屋のゾンビ』 青山真治
結城秀勇

 「いたるところで水の音がする」。という言葉で幕を開けた『EM エンバーミング』上映後のトークの中で樋口泰人は、この作品の6年後の『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』の冒頭から作品を覆う陰鬱さに比べて、『EM〜』はどこかまだ楽観的な気がする、と述べていた。フィルムからデジタルへ、という撮影素材の変遷と重ね合わせて語られるその話を聞きながら、『EM』の死体と死体そっくりな男と彼らと血が繋がった少女は、『...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:47 AM

October 23, 2018

『アンダー・ザ・シルバーレイク』デヴィッド・ロバート・ミッチェル
結城秀勇

 「犬殺しに気をつけろ」という落書きを消そうとする店員のガラス越しに揺れる胸、列に並ぶ女性客たちの腰のあたりをナメて、カウンターの後ろで談笑するふたりの女性店員のアップへ切り替わるスローモーション、そしてそれを見つめるアンドリュー・ガーフィールドの眠そうな目。そんな『アンダー・ザ・シルバーレイク』の冒頭を見ながら、なんとなくガス・ヴァン・サント『パラノイドパーク』のことを思い出していた。あの映画で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:50 PM

September 24, 2018

『あみこ』山中瑶子インタヴュー
三浦翔

底知れない広がりや誰にも居着かないしなやかさ 約一年前の第39回ぴあフィルムフェスティバルで、山中瑶子監督は初監督作となる『あみこ』で「PFFアワード2017」観客賞を受賞した。その後ベルリン、香港、韓国、カナダなど世界中の映画祭を周り評価され、遂に9月1日(土)にポレポレ東中野で劇場公開された。通常のレイトショーが即座に満席となったことで、異例のスーパーレイトショーという聞き慣れぬ追加上映までを...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:08 PM

September 22, 2018

『若い女』レオノール・セライユ
池田百花

 映画のタイトルの『若い女』。これは、フランス語の原題も"jeune femme"となっているから直訳なのだが、この言葉が何を表しているのか、映画が始まってからずっと考えていた。主人公の女性ポーラは31歳。物語は、10年間付き合っていた年上の彼から突然別れを切り出されるところから始まる。20歳ほど年の離れた写真家の彼のもと、彼女は長年そのモデルも務めていたのだが、どうやら彼には新しいミューズができ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:51 PM

September 8, 2018

『ビッグ・リーガー』ロバート・アルドリッチ
千浦僚

 アメリカ人とはなによりもまずベースボールプレーヤーなのか、と思わされたのはロバート・アルドリッチ監督作『ワイルド・アパッチ』(1972)を観たとき。  この映画では開巻にまず、十九世紀末頃の合衆国のインディアン居留区から不穏な気配のアパッチ族数人が夜陰に乗じて脱走する様が描かれ、続いてそれが明けた日中、アリゾナの騎兵隊砦の騎兵隊員たちが野球に興じている様が描かれた。ベテランらしい風格を漂わせつつ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:56 AM

September 7, 2018

PFF総合ディレクター 荒木啓子インタヴュー
三浦翔

映画監督のイメージを持つこと  ぴあフィルムフェスティバル(以下:PFF)は、"映画の新しい才能の発見と育成"をテーマにした映画祭である。今年40回目を迎えるPFFは、いわゆる自主映画と呼ばれる、商業映画の枠組みではなく自分たちの手で映画を作る監督たちの映画を上映する「PFFアワード」をメインプログラムとしており、合わせて様々な招待作品の上映とトークを企画し、映画祭全体が新たな映画作りを志す人の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:04 PM

August 30, 2018

『あみこ』山中瑶子
結城秀勇

 昨年のPFFの一次審査でこの作品を初めて見たときの感想をものすごくありていに言うなら、こんだけおもしろい映画なら、どうせもうどっかの映画祭で賞とってるとか、どっかのコミュニティ界隈ですげえ評判になってたりすんだろうな、だった。でも「あみこ 山中瑶子」でググってみて、わずかに出演者のツイッターとかが引っかかるくらいで、監督自身のSNSすら見つからなかったときにはマジか、と思った。こんなすげえおもし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:29 PM

August 16, 2018

『ヒッチコック博士の恐ろしい秘密』リカルド・フレーダ
千浦僚

 一般的にはあまり品がないとされながらも、そのオペラ的とも言える過剰さで娯楽映画の歴史を豊かにしたのは、お尋ね者のようにふたつ名を持つイタリア人監督たちではなかったか。ボブ・ロバートソンであったセルジオ・レオーネ、偏在するアンソニー・M・ドーソンとしてのアントニオ・マルゲリティ、そしてロバート・ハンプトンことリカルド・フレーダ......。彼らはアメリカ人監督のふりをすることで自作を"立派な"?ア...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:33 AM

August 12, 2018

『ゾンからのメッセージ』鈴木卓爾(監督) 古澤健(脚本/プロデューサー)インタヴュー

境界線で映画を撮ること いまからおよそ20年前、謎の現象である「ゾン」によってあたり一面を囲まれてしまった夢問町。「ゾン」とは何か。単なる壁というわけではなさそうだ。「ゾン」の向こう側に行ってしまった人は帰って来ない。「ゾン」には近づくことさえ危険である。と、声高に語る者こそ限られているが、およそそこに住むあらゆる人にそのような考えは共有されていて、ここからの脱出(あるいは外への侵入)を試みよう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:54 PM

August 3, 2018

『ものかたりのまえとあと』展 青柳菜摘/清原惟/三野新/村社祐太朗
三浦翔

 「ものかたりのまえとあと」というそのままコンセプトを言い表すタイトルからどうしても考えてしまうのは物語(story)ないし歴史(history)以後、つまり「歴史の終焉」という冷戦以後の世界について話題になった議論のことである。何故そんなことを思うのかというと、そこで議論された政治的な問題だけに焦点があるのではなく、むしろ冷戦体制以後にインターネットの民間利用が進み、並行してデジタルテクノロジー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:34 AM

July 29, 2018

『グレイ・ガーデンズ』アルバート&デヴィッド・メイズルス、エレン・ホド、マフィー・メイヤー
『グレイ・ガーデンズ ふたりのイディ』アルバート&デヴィッド・メイズルス、イアン・マーキウィッツ
隈元博樹

 青々と緑の生い茂る一軒家の居間をカメラが捉えると、ほどなくして2階の椅子にもたれた老母の姿がフレームに収まる。今にも爛れそうなセルライトを両腕に蓄えた肌身の彼女は、「ウィスカーズは穴の中だよ」と粗雑に空けられた壁穴を見やり、姿の見えない娘に猫のウィスカーズは穴の中に逃げ込んだのだと語りかける。母曰く、この穴は野生のアライグマによる仕業であるらしく、また娘曰く、不当な理由でこの古びた屋敷から追い出...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:00 AM

July 13, 2018

『ジュラシック・ワールド/炎の王国』フアン・アントニオ・バヨナ
千浦僚

 スピルバーグの影から脱したほうが豊かになる映画文化圏も存在する。『ジュラシック・ワールド』(2015)を観たときに、もうこれはかなり「ジュラシック・パーク」シリーズ(93年の1作目、97年の二作目『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』、01年の『ジュラシック・パークⅢ』)から離れた小気味よさだと感じた。まあ、そもそもジョー・ジョンストンが監督した『ジュラシック・パークⅢ』が、バックパック型...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:08 AM

July 3, 2018

『レット・ザ・サンシャイン・イン』クレール・ドゥニ
結城秀勇

 イザベル(ジュリエット・ビノシュ)は画家である。彼女の作品は恋人のひとりによって「世界最高の美を作り出している」とまでに評されるのだが、そうまで言われる彼女の仕事を、観客は十分に目にする機会に恵まれない。たった一度、彼女が巨大なキャンバスの上でなにかをおもむろに描き出すのを目にするだけ、またその前後でアトリエの片隅に置かれたおそらく彼女の作品なのであろう絵が画面の端に映り込むだけである。またイザ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:06 PM

May 29, 2018

『モリーズ・ゲーム』アーロン・ソーキン
結城秀勇

 FBIに踏み込まれる直前の、モリー・ブルーム(ジェシカ・チャステイン)のホテルの部屋。カメラは入り口からモリーが横たわるベッドへと進むが、その途中に置かれた彼女の著書「モリーズ・ゲーム」の在庫のダンボールの山と、著者サイン会のパネルがやけに気にかかる。単に彼女の本があまり売れてない、というかむしろ売上はかなり残念な感じだ、ということを示すだけのトラベリングなのだろうが、これでいいのかと思ってしま...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:55 PM

May 28, 2018

『ルイ14世の死』アルベール・セラ
三浦翔

 上映中に「お前はもう死んでいる」というフレーズが頭によぎってからは、フィルムに映った権力者どもにそう言ってやりたいフラストレーションが募る。  極めて唯物論的な方法で王の死のスペクタクル化を拒否するこの映画で問題にすべきは、監督がインタビューで述べるような「死の陳腐さ」にあるのではなく、むしろ王という特別な存在のイメージの「死ななさ」ではないだろうか。「死の陳腐さ」も、彼に死が近づいていることも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:21 AM

May 23, 2018

2018 カンヌ国際映画祭日記(7) 忘れられた人々
ーー第71回カンヌ国際映画祭受賞結果をめぐって
槻舘南菜子

ジャン=リュック・ゴダール監督『Le Livre d'Image』  今年のカンヌ国際映画祭のコンペ部門はここ数年で最も刺激的なセレクションであったにも関わらず、受賞結果は従来の傾向に則った惨憺たるものであった。見事にコンペ入りを果たした若き才能たちーー濱口竜介監督『寝ても覚めても』、ヤン・ゴンザレス監督『Un Couteau dans le coeur』、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督『...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:31 PM

May 21, 2018

2018 カンヌ国際映画祭日記(6)
ヤン・ゴンザレス監督『Un Couteau dans le coeur / Knife + Heart』
槻舘南菜子

 2013年のカンヌがアブデラティフ・ケシシュ監督『アデル、ブルーは熱い色』が最高賞パルムドールを受賞し、昨年にはロバン・カンピヨ監督『BPM ビート・パー・ミニット』がグランプリを獲得したように、いわゆる「LGBT」が主題として扱われる作品はもはや珍しくない。今年の公式部門だけでも、コンペ部門にはクリストフ・オノレ監督『Plaire, aimer et courir vite 』とヤン・ゴンザレ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:45 PM

『アヴァ』レア・ミシウス
池田百花

 夏の太陽の下、ヴァカンスに訪れる人々でにぎわうフランスの海辺に、ひとりの少女が寝そべっている。少女のそばを大きな黒い犬が通り過ぎ、彼女が犬を追うと、揉め事を起こしている黒い服の青年の周りに人だかりができていて、そこに黒い馬に乗った警察が駆けつける......。映画の冒頭の場面、まぶしい光に照らされ色で溢れた風景に突如投入されるこの黒という色は、明らかに画面に異質性を放ち不穏な空気を生み出している...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:14 PM

May 19, 2018

2018 カンヌ国際映画祭日記(5)
マチュー・マシュレによる濱口竜介『寝ても覚めても』評
槻舘南菜子

 現在のフランスで最も信頼のおける批評家のひとりマチュー・マシュレ氏による濱口竜介監督『寝ても覚めても』の批評が、どの仏メディアよりも早く、日刊紙「ル・モンド」の5月15日号に掲載された。フランスでは5月の初旬に公開されたばかりの『ハッピーアワー』についても彼はとても素晴らしい批評を書いたばかりだが、ここではマシュレ氏の厚意により氏の『寝ても覚めても』についての批評を翻訳掲載する。 恋愛の反復--...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:45 AM

May 17, 2018

『心と体と』イルディコー・エニェディ
三浦翔

 若い女であるマーリアと老年の上司エンドレとの恋愛関係を描くことにはリアリティがないとか、それはセクハラを誘発する表現である、などという批判の声が聞こえてくるかもしれない(似たような意見をTwitterで見てしまった)。そのような#MeToo時代の空気から来る違和感の声には、そもそも同じ夢を見てしまうという奇異な設定から、この作品はリアリズムではないのだと言って批判をやり過ごすことも出来るであろう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:48 PM

『ジェイン・ジェイコブズ:ニューヨーク都市計画革命』マット・ティルナー
中村修七

 ジェイン・ジェイコブズ(1916‐2016)の生誕100周年に合わせて製作されたドキュメンタリー映画だが、"Citizen Jane: Battle for the City"という原題にある"Citizen Jane"とは、言うまでもなく、オーソン・ウェルズの『市民ケーンCitizen Kane』になぞらえたものだろう。『市民ケーン』は、ウェルズの監督デビュー作にして映画史に残る傑作だ。アンド...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:46 AM

May 16, 2018

2018 カンヌ国際映画祭日記 (4) 「監督週間」部門50周年によせて
槻舘南菜子

 現在ではカンヌ国際映画祭の併行部門とされる「監督週間」部門は、そもそも68年5月を機に映画祭が中止に追い込まれたのちの反動として、非公式部門として創設されたものだった。当時のフランスにおける若手監督の多くは、カンヌのセレクションに対する反感を隠さなかった。芸術的な視点以上に、外交的な政治目的に縛られ、惰性に流された当時のセレクションを変革するためには、映画祭の再編成が必要であると考えたのだ。し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:49 PM

May 14, 2018

2018 カンヌ国際映画祭日記(3) 白と黒の恋人たち
ーー『Summer (Leto)』(キリル・セレブレニコフ)と『Cold War(Zimna Wojna)』(パヴェウ・パヴリコフスキ)
槻舘南菜子

 今年のコンペティション部門には、ある時代に翻弄されたカップルという共通点はありながら、その趣は異なる二本のモノクロ映画がノミネートした。ロシアのキリル・セレブレニコフ監督『Summer (Leto)』とポーランドのパヴェウ・パヴリコフスキ監督『Cold War(Zimna Wojna)』だ。 キリル・セレブレニコフ監督『Summer (Leto)』  キリル・セレブレニコフにとって7本目の長編と...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:30 PM

May 12, 2018

2018 カンヌ国際映画祭日記(2) 各部門の開幕上映作品をめぐって
ーーコンペティション/ある視点/監督週間/批評家週間
槻舘南菜子

 カンヌ映画祭のコンペにおける開幕上映作品は、フランス映画であるか否かを問わず、フランス国内での劇場公開が上映日とほぼ同日に為される作品が選ばれる。そこにはもちろん製作会社やワールドセールス、映画祭の政治的な思惑も関わるため、作品のクオリティは必ずしも重要視されていない。今年の開幕上映作品であるアスガー・ファルハディ監督作品『Everybody Knows』は、おそらく彼のキャリアにおいて最悪の出...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:46 AM

May 11, 2018

2018 カンヌ国際映画祭日記(1)
槻舘南菜子

 第71回カンヌ国際映画祭が5月8日に開幕した。今年の大きな事件として、例年はプレミア上映に先立って行われていた、プレス向けの事前上映を撤廃するという発表があった。この件について、フランスでは批評家労働組合を中心にジャーナリズムの権利を主張する声明文が大々的に発表されたものの、その決定は覆されることはなく、その影響で上映の仕組みも大幅に変更され、プレス向けの上映はプレミア上映と同時か、あるいは翌...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:27 AM

April 30, 2018

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』スティーブン・スピルバーグ
結城秀勇

 謎の繁忙期だった四月も終わりつつあり、ようやっと『ペンタゴン・ペーパーズ』を見れた。ご多聞にもれず、泣けた。なるほど、いまの日本の国民はみんなこれを見るべきだと言うのもわかる。  だがだからこそ、この映画を評価する言葉がそれだけでいいのか、という気もするのだ。あえて言えば、JFKの友達だった編集主幹のいる新聞がニクソンを糾弾する、みたいな構図だけで、本当に報道の自由について語れるのか? それはあ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:46 AM

April 18, 2018

『きみの鳥はうたえる』三宅唱
結城秀勇

 これが三宅唱の初めての原作つきの監督作であること、あるいはこういった言い方が正しいのかわからないが初の「商業」長編映画であること、そんな先入観は映像を見ている間に頭の中からいつのまにか抜け落ちていく。同様にこの映画が描いている、僕(柄本佑)、静雄(染谷将太)、佐知子(石橋静香)の間の三角関係だとか、静雄が母親に対して抱いている愛憎入り混じる思いだとか、小さな本屋の人間関係だとか、そんな物語すら映...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:55 PM

April 13, 2018

第15回ブリィブ国際中編映画祭レポート
槻舘南菜子

ブリィブ、日本映画を忘れるーーフランス映画のための「国際」映画祭、装飾としての国際性  4月3日から4月8日、第15回ブリィブ国際中編映画祭が開催された(映画祭の創立経緯は過去の記事を参照:http://www.nobodymag.com/journal/archives/2016/0424_0034.php)。映画祭の15周年を記念して製作された思春期をテーマとした予告編は、2013年『アルテミ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:48 PM

『泳ぎすぎた夜』五十嵐耕平&ダミアン・マニヴェル監督 インタヴュー
松井宏

すべての日々は新しくて、発見に満ちている 五十嵐耕平&ダミアン・マニヴェル監督 インタヴュー フランスと日本の同世代の監督が、お互いの作品に恋に落ちて、友人になって、一緒に映画をつくることを決めた......。まるで映画の1エピソードみたいなお話だけれど、ダミアン・マニヴェルと五十嵐耕平にとっては、ごくごく自然で、そして必然的なことだったようだ。ふたりの話を聞いているとそう思うし、それは彼...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:30 PM

April 12, 2018

『寝ても覚めても』濱口竜介
結城秀勇

 お気に入りの小説が映画化されてそれを見るという体験は、好きな誰かに似た別の誰かに出会うことにどこか似ている。......などと言い出すのは少々強引過ぎる気もするし、普段はそんなことは思わない。だが、かつて愛した男と瓜ふたつの別の男に出会う女の話である柴崎友香『寝ても覚めても』を、原作に並々ならぬ思い入れを持つ濱口竜介が映画化したとなれば、そのくらいのことを言ってもいい気がする。  似ていたとして...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:51 PM

『私の緩やかな人生』アンゲラ・シャーネレク
三浦翔

 アンゲラ・シャーネレク映画の基本的な時間の感覚を作っている一つには切り返しショットのなさがあるが、とりわけ『私の緩やかな人生』という作品を強く気に入ってしまったのは、切り返しのなさに伴って美しく持続する長いダイアローグの成果が、もっとも顕著なかたちで現れているからである。テクストの演出に関してアップリンクで行われたトークショーの中で質問させてもらったところ、監督の言っていたことを要約するならば、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:35 AM

April 7, 2018

『大和(カリフォルニア)』宮崎大祐
田中竜輔

 一度としてこの映画には姿を現さない「アビー」のことが、やけに気にかかった。主人公サクラ(韓英恵)の母親である樹子(片岡礼子)の恋人、そしてすでに故人となった日本人女性との間にレイ(遠藤新菜)という娘を持つ、かつて厚木基地にいたとされるアメリカ兵の名である。「アビー」について、その人は自分にヒップホップを教えてくれた最初の人であり、美少女フィギュアづくりに勤しむ兄の健三(内村遥)をアーティストだと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:22 AM

March 20, 2018

『はかな(儚)き道』アンゲラ・シャーネレク
結城秀勇

 女がいて、男がいる。男の足が斜面の土を踏みしめ登り、女の足がそれに続き、よろめき、差し出した手が男の手によって引き上げられる。丘の上で女はギターを手につま弾き始める。通行人のチップ用にハンチング帽を逆さに地面に置いた男が、彼女の隣にフレームインしてくる。女と男は初めてひとつのフレームに収まる。そして歌が始まる。 『はかな(儚)き道』の最初のシークエンスである。彼らの歌が続く中、カットが変わり彼...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:19 PM

March 16, 2018

『タイニー・ファニチャー』レナ・ダナム
結城秀勇

タイトルである「小さな家具」とは、主人公オーラ(レナ・ダナム)の母親シリ (ローリー・シモンズ )が制作する写真の撮影用に作られたミニチュア家具のことである。大学を卒業したオーラが久しぶりに実家に帰ってくると、母親は地下のスタジオで件の作品制作をしている。ちっちゃな椅子や机がきれいに配置された空間の真ん中にボンと突き立つ実物大の人間の足。その足のモデルをしている妹ネイディーン (グレース・ダナム)...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:58 PM

March 14, 2018

『15時17分、パリ行き』クリント・イーストウッド
結城秀勇

『ハドソン川の奇跡』のサリー(トム・ハンクス)が劇中ずっと苦悩しているのは、彼のとった不時着水という行為の選択は他の映像(失敗していたかもしれない着水、及び他の空港に着陸することが可能だったかもしれないこと)に置き換え可能なのかどうかという問題のためであった。一方で、苦悩というほどの悩みとは無縁そうな『15時17分、パリ行き』の3人組が体現しているのは、彼ら自身がその他の映像と置き換え可能なのかど...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:59 PM

March 7, 2018

『ハドソン川の奇跡』クリント・イーストウッド
結城秀勇

※以下は、「横浜国立大学大学院都市イノベーション学府・研究院イヤーブック2016/2017 特集 批評の現在」に寄せた文章である。近日アップ予定の『15時17分、パリ行き』評の前提として、より多くの人に読んでもらう機会があればと思い、同学府・研究院のご厚意のもとここに再掲させていただく。 事実の後で オックスフォード大学出版局が「word of the year」に「post-truth」と...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:44 PM

March 3, 2018

『あなたの旅立ち、綴ります』マーク・ペリントン
結城秀勇

庭師に代わって木を刈り込み、美容師に代わってヘアスタイルを仕上げ、メイドに代わって料理をする。シャーリー・マクレーン演じるハリエット・ローラーは、雑務を自分で行う必要がないほどの財力を持ちながら、それらを完璧に自らこなす能力と意志を持つ。ただしそれと引き換えに、手入れした庭を訪れる友人もなければ、新しい髪型を褒めてくれる同僚もなく、手の込んだ料理を共に味わう家族もない。ここまでなら、よくある気難し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:07 PM

February 21, 2018

『デトロイト』キャスリン・ビグロー
結城秀勇

5月公開の映画『私はあなたのニグロではない』 (ラウル・ペック)の中で、次のようなジェイムズ・ボールドウィンの文章が読み上げられる。「黒人の憎しみの根源は怒りだ。自分や子供たちの邪魔をされない限り、白人を憎んだりしない。白人の憎しみの根源は恐怖だ。なんの実体もない。自分の心が生み出した何かに怯えているのだ」。 この言葉の後半部分は『デトロイト』における人々の置かれた状況をかなり的確に言い表している...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:38 PM

February 15, 2018

『ロスト・シティZ 失われた黄金都市』 ジェームズ・グレイ
結城秀勇

1906年、英国軍人パーシー・フォーセット(チャーリー・ハナム)は、アマゾン流域ブラジル・ボリビア間国境の測量の仕事を引き受ける。それは高騰するゴムの利権が絡む政治的な駆け引きのためでもあるが、一方で、自らの家系にかけられた汚名をそそぐために彼個人が社会的な名声="勲章"を必要としているという理由からでもある。当然のごとく待ち受ける幾つもの危険の先で、彼は無事川の源流へと辿り着き、測量を終える。だ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:04 PM

February 12, 2018

『L for Leisure』レヴ・カルマン、ウィットニー・ホーン
結城秀勇

16mmフィルムで撮影された画面の質感や人物の配置、登場人物たちの大学院生という身分、彼らの話す会話のたわいもなさは、たしかに一瞬、バカンス映画だとか休暇映画といった枠組みの中にこの作品を入れてしまいたくもさせるのだが、たぶん違う。それは全体を貫くストーリーらしいストーリーがないからでも、全体を構成するひとつひとつの休暇が短いからでもない。休暇の映画とは、限られた時間が尽きれば否応なく戻らなくては...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:59 AM

January 26, 2018

『タイニー・ファニチャー』レナ・ダナム
隈元博樹

 主人公のオーラ(レナ・ダナム)は、絶えず痛みに取り憑かれている。しかし単に痛みと言っても、誰かによる暴力や中傷の矛先になるわけでもなく、またふいに誰かを傷つけてしまうものでもない。自宅に引きこもるわけでもなければ、口数の少ないタイプでもない。むしろ彼女は自発的に物事を選び、他者へと歩み寄ることに積極的な存在だ。それなのにオーラの選択は痛みとともにあり、冒頭から私たちはその光景を見守り続けることし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:11 PM

December 16, 2017

『希望のかなた』アキ・カウリスマキ
結城秀勇

35mmフィルムでの上映(※12月17日まで!)という英断を下したユーロスペースには、どれだけ感謝してもし足りない。DCPではこの作品のよさが伝わらないとか言うつもりはさらさらない。もはや圧倒的大多数であるデジタルとの比較の上に成り立つそんなスノビズムはどうでもいいし、ましてやかつて映画はこうであったという郷愁に囚われているわけでもない。『希望のかなた』が35mmで上映されるべきなのは、いまそこに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:47 AM

December 2, 2017

『最低。』瀬々敬久
結城秀勇

なんの前情報も一切なしで見始めたので、断片的なカットの連なりで主役である3人の女性たちが描写されていく冒頭部分を見ていてちょっと混乱する。どうやら回想シーンも含まれているらしいこのパートの中で、とりあえず3人の女性は別々の場所にいるようだ。もしかしてこの3人はひとりの人物の違う時代を演じてるのか?いや名前も違うしそもそもこんなタイプの異なる3人を選ぶ意味もわからない、じゃあ実は3人のうちの誰かが誰...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:45 AM

October 29, 2017

『イスマエルの亡霊たち』アルノー・デプレシャン
結城秀勇

イヴァン・デダリュス。この映画で一番初めに発せられる言葉であるこの名前によって喚起されるものは、すでにこの映画でこの後に語られる物事よりも大きなことを原理的に孕んでいる。『クリスマス・ストーリー』でメルヴィル・プポーが演じていたイヴァン・ヴュイヤールの姿を、『そして僕は恋をする』のマチュー・アマルリックから『クリスマス・ストーリー』のエミール・ベルリング、そして『あの頃エッフェル塔の下で』のカンタ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:10 PM

September 24, 2017

『望郷』菊地健雄
結城秀勇

この作品を最初に見たとき、なにかもっと大きなものの一部が描かれている、という印象を受けた。それは全体で6つの連作短編からなる原作のうちの、2短編の映画化という事情によるものかと思い、湊かなえの原作を読んでみた。だが、本来それぞれがまったく別々に独立した物語として書かれている原作を読んでみても、その大きな全体像が見えたわけでもなかったし、そもそもひとつひとつの短編がなにかもっと大きなものの一部をなし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:57 PM

September 3, 2017

『甘き人生』マルコ・ベロッキオ
中村修七

 ベッドに眠る少年の耳元で「たのしい夢を」と囁いた母親は、羽織っていたローブを脱いで部屋を後にする。未明になって、眠りについていた少年は、父親の叫び声と大きな炸裂音によって目を覚ます。家に入り込んできた親戚たちによって少年は囲まれるが、大人たちは適当な嘘をついて母親が彼の前から姿を消したことを誤魔化す。 この間に、母親の死という出来事が発生している。のちに母親の死が落下と関係するものであると明らか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:08 PM

August 25, 2017

『パターソン』ジム・ジャームッシュ
隈元博樹

 冒頭から真っ先に思ったのは、STANLEYのランチボックスになりたいということだった。それは工具箱にも似た重厚なフォルムに魅力を感じたわけでなく、たんなる変身願望の欲に駆られたわけでもない。この映画に登場する薄緑色のランチボックスになりさえすれば、この映画の主人公に訪れる些細な時間やできごとに、他のどの人物よりも身近な存在として立ち会えるのではないかと思ったからだった。  朝は決まった時間に目を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:49 AM

August 3, 2017

『夏の娘たち〜ひめごと〜』堀禎一
結城秀勇

二度見たら、一度目よりも(あくまで量的な)理解が増えるだろうかと思ったが、いやあ、清々しいまでに一切そんなことがなかった。冒頭の病室からすでに無際限に増殖していく血縁地縁のネットワークについては、一度目に見た時点で理解し得ることはほぼ理解していたことがわかっただけだったし、初見で心をつかまれたあのカットとカットのつなぎやアクションとアクションの間あるいはアクションそれ自体に存在する「速さ」について...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:39 PM

August 2, 2017

『20センチュリー・ウーマン』マイク・ミルズ
結城秀勇

ようやくこの映画を見て、ようやくタイトルの示す「20世紀の女性」が複数形であったことを知る。 スーパーマーケットの駐車場で派手に炎上するフォード・ギャラクシーに被さるようにしてはじまるドロシア(アネット・ベニング)のモノローグが、1924年に生まれた彼女は40歳で息子を出産したことを告げる。世紀の3/4を生きたこの女性(後に彼女は1999年に亡くなるということがわかる)が、ああ日本語タイトルでいう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:21 PM

June 25, 2017

『牯嶺街少年殺人事件』エドワード・ヤン
中村修七

『牯嶺街少年殺人事件』は、ひとつの時代状況を丸ごと掴もうとするスケールとともに、緻密な構図のショットと的確な演出によって作られた傑作だ。そして、言うまでもなく、我々の時代が共有しうる最も偉大な映画のひとつだ。この映画には、世界がある。ひとつの時代があり、多くの人々が暮らす都市があり、異なる集団の間における争いがあり、ある家族の生活があり、友人たちの交わりがあり、恋人同士の関係がある。約4時間にわた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:07 PM

June 12, 2017

ここには何もない −−第70回カンヌ国際映画祭報告
槻館南菜子

受賞結果 パルムドール: ルーベン・オストルンド『The Square』 監督賞: ロバン・カンピヨ『120 Beats per minutes』 主演女優賞: ダイアン・クルーガー(ファティ・アキン『In the Fade』) 主演男優賞: ホアキン・フェニックス(リン・ラムジー『You were never really here』) 脚本賞: ヨルゴス・ランティモス『The Killin...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:24 PM

May 21, 2017

『パーソナル・ショッパー』オリヴィエ・アサイヤス
田中竜輔

このフィルムのクリステン・ステュワートはとにかく片付けをしない。というよりも、自分のために用意したものを使う素振りさえない。コーヒーを入れてもビールを開けてもほとんど口をつけぬまま、片付けもせずテーブルに放置していってしまう。彼女は何かしらを自らのものにするという様子は微塵も見せない。すでにこの世を去った兄について聞かれ「私たちは霊媒(メディウム)なの」と語る彼女は、自らの実体をもって何かを成し遂...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:13 AM

May 4, 2017

『幸せな時はもうすぐやって来る』アレッサンドロ・コモディン
渡辺進也

イタリア映画祭2017で上映されている、アレッサンドロ・コモディンの長編2本目となる『幸せな時はもうすぐやって来る』は、森を舞台にいくつかの物語が展開される。何かから逃れるように森の奥深くに分け入るふたりの男が、川で遊んだり、飢えをしのぐために罠を仕掛けたりして食べ物を探し求める物語。白い雌鹿に求愛する狼が人間の女性と恋に落ちたという伝説が人々の口から語られ、狼による家畜の被害が起きている最中に、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:15 PM

April 19, 2017

『未来よ こんにちは』ミア・ハンセン=ラブ
中村修七

『未来よ こんにちは』におけるイザベル・ユペールは、せかせかと歩き、パタパタと走る。小柄で華奢な体つきのユペールが細い腕と脚を動かして忙しなく動き回る姿が素晴らしい。彼女は、動き続けることで時間の流れに対処しているかのようだ。 ユペールは、思いがけない出来事に何度も不意撃ちされる。早朝に老いた母親からの電話で起こされ、勤め先の高校で生徒たちによるストライキに遭遇し、疲れて帰宅した後にソファで休んで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:42 PM

March 15, 2017

『ラ・ラ・ランド』デイミアン・チャゼル
田中竜輔

デイミアン・チャゼルはとりあえず「遅れる」ことに囚われた映画作家なのだろう。『セッション』の序盤で、鬼教官フレッチャー(J・K・シモンズ)とのプライヴェート・レッスンに、ドラマーのニーマン(マイルズ・テラー)が遅刻してしまうエピソードを見て、しかしこの遅刻がその後の展開にまったく何も作用しないことを不思議に思っていた。が、要するにあの場面は「こいつは何の理由もなく遅刻する男だ」と印象づけるだけのシ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:30 AM

March 9, 2017

『わたしたちの家』清原惟
三浦 翔

ここでありながらも何処か違う世界から届くプレゼントを受け取ること。同じ場所に前後関係もない、ふたつの時間が流れている、という設定だけを聞くとSF/ファンタジー的な想像力に支えられたアナザーワールドもののように思えてくるが、清原惟監督はそうした設定をなにも物語的に回収することはしない。そこで試みられているのは、ひたすらショットの連鎖だけでふたつの世界の関係を問うことであり、その視線は徹底的に映画的な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:17 PM

March 2, 2017

『マリアンヌ』ロバート・ゼメキス
結城秀勇

モロッコっぽさを出そうなんて気は毛頭ないように思える、あの書き割りめいた砂漠にパラシュートで降り立ったマックス(ブラッド・ピット)は、砂漠の道を歩く途中で、自動車が砂埃をあげて近づいてくるのを目にする。それは物語上、マックスをカサブランカに連れていくために遣わされた味方の車なわけだが、自他ともに認める腕利きスパイであるマックスは警戒を怠らず、腰のホルスターのボタンを外し、銃に手をかけたまま近づいて...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:01 PM

February 19, 2017

『息の跡』小森はるか
結城秀勇

なんだか色味が独特だな、と思った。監督本人にインタヴューでそれを聞いてみた(2月末発売予定のNOBODY issue46に掲載)ところ「ちょっと古いHDVで撮ったからですかね......」と戸惑い気味に答えていて、特に意識したことではないと言う。鮮やかではあるがどこかにじんだようでもある画の質感から、2000年代初頭の、デジタル撮影→35mmブローアップされたいくつかの作品のこと(そしてそういう作...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:21 PM

February 13, 2017

『本当の檸檬の木』グスタボ・フォンタン
結城秀勇

冒頭、夫婦が何気なくかわす「おはよう」という挨拶の声の凶暴さに耳を疑う。はじめは会話の音が環境音よりかなり大きくミックスされているということなのかと思ったがどうもそうではない。続く、親戚の少年とともに主人公である夫が川を下る場面でなんとなくわかるこの凶暴さの正体は、登場人物の画面内の位置関係とはまったく無関係に、彼らの言葉と見なされる音が発せられる画面中央の空間がある、ということである。男と少年は...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:22 PM

January 6, 2017

『ミューズ・アカデミー』ホセ・ルイス・ゲリン
三浦翔

『ミューズ・アカデミー』という題名から、どんなミューズ論が聞けるのかと真面目に期待をしていれば面喰ってしまう。これはムチャクチャな男の映画である。簡単に説明すれば、大学で文学の授業を開いているピント教授は、現代におけるミューズの探究と言いながら、高尚な理論を並べ立てて女生徒を誘惑(?)していく。舞台は大学でもあるし、とにかく出てくる人がみんな自分の理論を大きな声で相手に向かって喋る。言っていること...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:35 PM

December 31, 2016

『ピートと秘密の友達』デヴィッド・ロウリー
結城秀勇

『セインツ-約束の果て-』のデヴィッド・ロウリーの新作が公開されている、しかもとんでもなく傑作である、と荻野洋一さんから聞き、見に行った。するとその言葉に違わぬ作品で、もうただただ泣けた。 どこかドゥニ・ラヴァンを思い出させる面構えの少年が、裸足で川の水を跳ね上げながら走り出すだけで泣けた。彼が住み慣れた森の中から文明社会へと連れ出され、そこからどうにか森に帰ろうと、駆け出し、跳躍するのを見るだけ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:48 PM

December 16, 2016

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』リチャード・リンクレイター
結城秀勇

やっと見た。たぶん誰かがいろんなところですでに書いてることだろうとは思うけれど、この作品のアメリカ青春映画史における価値をもっともらしく一言でいうならば、スクールカーストのようなものがほとんど存在しない学園映画だ、ということだろう。ジョン・ヒューズ以来の学園青春もの映画では、学園内の序列やヒエラルキー、大人や社会から押し付けられるレッテルや分類といった類型化に苦しめられる若者たちが、なんとかその垣...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:33 PM

December 2, 2016

東京フィルメックス2016 『ザーヤンデルードの夜』モフセン・マフマルバフ
三浦 翔

『ザーヤンデルードの夜』で印象に残っているのは、主人公が同じ窓から見てしまうことで対比されるふたつの光景だ。イラン革命で街が煙に包まれるなか、倒れた仲間を助けようと引きずって運ぶ若者たちが銃で撃たれていく光景を、窓から主人公である大学教授が眺めるシーン。それと同じ窓から、今度はイラン革命以後の世界で、交通事故で人が倒れているにもかかわらずそこにいた人が逃げて助けなかったところを教授が目撃するシーン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:06 AM

東京フィルメックス2016 『マンダレーへの道』ミディ・ジー
三浦 翔

ミディ・ジー監督『マンダレーへの道』は繊細に移民労働者の問題を描いている。主人公のリャンチンはミャンマーからタイに来たものの、労働許可証がないゆえに街で労働をすることが出来ない。不法入国のときトラックで知り合ったグオの紹介のもと、管理された工場で奴隷のように働くことを余儀なくされる。リャンチンとグオは恋に落るわけだが、二人の目指す方向は別々で、すれ違い、それゆえに悲劇的な結末を招いてしまう。グオは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:54 AM

November 27, 2016

2016年 ボルドー国際インディペンデント映画祭(Fifib)報告 Part2
槻舘南菜子

前回に引き続き、ボルドー国際インディペンデント映画祭プログラム・ディレクター、レオ・ソエサント(Léo Soesanto、以下LS)氏へのインタヴューを掲載する。映画批評家の仕事の延長線上に自らのプログラマーとしての仕事があると語るソエサント。注目すべき若手作家を幾人も発見した彼が、いま必要だと考えていることとはどのようなものか。 ----フランスには、中堅の国際映画祭が多く存在します。たとえば、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:03 PM

『山〈モンテ〉』アミール・ナデリ
則定彩香

 アミール・ナデリ監督の最新作は全編イタリアで撮影された。前作『CUT』では主演の西島秀俊が物理的に殴られまくっていたが、今度の『山〈モンテ〉』ではアンドレア・サルトレッティが本作の主役である"山"を殴りまくっている。  物語は山の麓の村に住むアゴスティーノ一家がひとりの娘を亡くしたところから始まる。水は湧かず、土地はやせ、作物の育たないその山は"呪われた山"と呼ばれていた。その呪いから逃れるため...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:04 PM

November 24, 2016

2016年 ボルドー国際インディペンデント映画祭(Fifib)報告 Part 1
槻舘南菜子

フランスには数多くの中規模映画祭が存在する。とりわけ10月と11月は、リヨンのリュミエール映画祭、ラロシュヨン国際映画祭、べルフォール国際映画祭、ナント三大陸映画祭と、映画祭ラッシュの時期に当たる。映画祭激戦期間といえるこの時期を狙って、ボルドー国際インディペンデント映画祭は5年前に誕生した。長編・短編コンペティション部門とともに、先行上映プログラムや特別上映プログラムがあるほか、野外上映とコンサ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:37 AM

November 8, 2016

『ダゲレオタイプの女』黒沢清
結城秀勇

露光時間の長いダゲレオタイプという撮影技法では、映像が定着するまで被写体は長時間同じ姿勢をとり続けなければならない。そのこと自体は頭ではよく理解できるのだが、これだけ静止画だろうが動画だろうが思いつきのままインスタントに得られる時代に生きていると、ちょっとした錯覚というか思い違いに陥る。つまり、もし撮影の途中で被写体が動いてしまったとしたら、例えば暗い場所で花火やペンライトを振ったりするのを写真に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:25 PM

November 3, 2016

『二十代の夏』高野徹
増田景子

『二十代の夏』から溢れ出す、この圧倒的な若さに対して、一体どのように反応したらよいのだろう。 「青臭い」といって切り捨てることも出来れば、「青春」といって羨むこともできる。ただ取り違えてはいけないのは、この「若さ」が若手監督のたどたどしさや初々しさを指しているのではないということだ。確かに成熟したとは形容しがたい試行錯誤の跡のみえる粗削りだが、歩み始めた者の揚げ足をここで取る意味はないし、いくつか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:11 AM

October 22, 2016

『ハドソン川の奇跡』クリント・イーストウッド
樺島瞭

2009年1月15日、150人の乗客と5人の乗員をのせたエアウェイ1549便は、ニューヨークのラガーディア空港を飛び立った2分後に、バードストライクに見舞われる。エンジンが停止したエアバスを、機長のチェズリー・"サリー"・サレンバージャーは、咄嗟の判断と巧みな操縦によって、ハドソン川――その左岸はマンハッタンの高層ビル群である――に、ひとりの犠牲者も出すことなく不時着水させる。邦題にもなっているこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:20 AM

October 11, 2016

『チリの闘い』パトリシオ・グスマン
稲垣晴夏

1970年、チリでは世界で初めて民主的な選挙によって社会主義政権が誕生し、サルバドール・アジェンデが大統領に就任した。本作は政権を支持し共に社会主義を目指した労働者たちと、軍部やアメリカと画策してこれを妨害しようとする富裕層との階級間の対立を、全三部の巧みな構成をもって描く。 本作において、路は富裕層と労働者の間の緩衝帯として町に横たわっており、そのためおのずと闘いの舞台として幾度も映し出される。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:48 PM

October 5, 2016

『タナーホール』フランチェスカ・グレゴリーニ、タチアナ・フォン・ファステンバーグ
常川拓也

映画『タナーホール(Tanner Hall)』は、ローマ出身のフランチェスカ・グレゴリーニとNY出身のタチアナ・フォン・ファステンバーグが、アメリカ・ニューイングランドの全寮制学校の女子寮(寄宿学校)を舞台に4人の十代の女の子を描いた2009年の作品である。なんといってもまず見所は、2015年アカデミー賞において『キャロル』(2015)で助演女優賞にノミネートされたルーニー・マーラと、『ルーム R...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:47 PM

September 27, 2016

『バンコクナイツ』富田克也
渡辺進也

日本人の客とタイの女性の間で交わされる日本語での会話に、まるでこれがバンコクではなく東京かどこかで行われているかのような錯覚に襲われる。高層マンションとキラキラネオン輝くバンコクの夜は、街中に流れる川を隅田川に見立てた東京の河岸地域のようだ。日本人を相手にした店が並ぶタニヤ通りは、日本人が客引きをし、店の中では現地の女性が日本語で話す。ただ女性たちだけがタイの女性であり、そこにやってくる客も、はた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:21 PM

September 14, 2016

『スラッカー』リチャード・リンクレイター
結城秀勇

リンクレイターの長編2作目にあたる1991年の作品。「インディーズ映画の雄リチャード・リンクレイター(『6才のボクが、大人になるまで。』)が描くジェネレーションX青春映画です。後世に絶大な影響を与え(とくにケヴィン・スミス)、のちに監督する事となる傑作『バッド・チューニング』の関連も随所に見て取れる90年代インディペンデント映画の歴史的な一本!」(Gucchi's Free School 作品解説...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:25 PM

『チリの闘い』パトリシオ・グスマン
三浦 翔

一九七〇年、チリに世界初の選挙による社会主義政権が誕生した。『チリの闘い』には、このアジェンデ政権が、一九七三年九・一一の軍事クーデターによって倒れるまでの過程が記録されている。第一部「ブルジョワジーの反乱」と第二部「クーデター」を通して見えてくるのは、固有名詞の強さである。この映画の主役は政治家では無い。街頭インタビュー、工場での議論、デモなど、無数の発言によって政治が描かれる。彼らは「アジェン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:51 AM

September 10, 2016

『人間のために』三浦翔
結城秀勇

「闘争の最小回路とは、力のクリスタルのことだ。力のクリスタルは、ふたつのレヴェルにおいて形成される。第一のレヴェルは、行為と知覚の結晶化プロセスだ。映画や演劇の俳優は、行為と知覚とのこのクリスタルを生きている。優れた俳優は、演技をすると同時に、演技する自分をつねに知覚してもいるからだ。俳優とは、自己をアクター/オーディエンスへと二重化し、自己においてそれらを結晶化させる術を知っている者のこと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:45 PM

September 1, 2016

『ケンとカズ』小路紘史
若林良

本作は主人公であるケンとカズ、そして彼らの弟分のテルが、対立する組織の下っ端に喧嘩を吹っ掛ける場面から始まる。そこでの決着がついたあとに、ケンとカズを下から見上げるようなショットが印象的だ。前方にしゃがむカズと、後方からカズを見下ろすケン。本作において両者の「顔」が正面からはっきりと見える場面は、この対照的な姿勢のふたりを捉えたショットを除けばほとんど存在しない。物語は、妊娠した彼女や認知症の母の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:04 PM

August 29, 2016

『エミアビのはじまりとはじまり』渡辺謙作
隈元博樹

 幸福の先に訪れる死の予感は、絶えず映画の中で描かれてきたことだと思う。その例は枚挙に暇がないものの、たとえば北野武の『ソナチネ』は、沖縄の海辺で悠々自適な相撲遊びに興じていたヤクザたちを、またたく間に銃弾の飛び交う抗争の場面へと誘なっていく。またヤン・イクチュンの『息もできない』は、わだかまりを抱える男女が和解を遂げた矢先、女の弟による男への復讐によってその幕を閉じることとなる。こうして幸福が死...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:18 PM

August 15, 2016

マルセイユ国際映画祭(FID)報告
槻舘南菜子

ユーロ2016のため、今年のマルセイユ国際映画祭(FID)は通常の開催期間(6月下旬~7月上旬)ではなく、7月12~19日の開催となった。フランスには、ドキュメンタリーに特化した映画祭として2つの代表的な国際映画祭がある。ひとつは毎年3月にパリのポンピドゥーセンターで開催される「シネマ・デュ・レエル Cinéma du réel」。こちらがよりクラシックな趣きの作品が多く選出されることに対し、FI...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:43 PM

July 25, 2016

短編映画祭「Côte Court(コテ・クール)」 25周年!
槻舘南菜子

1992年に設立された短編映画祭Côté court(コテ・クール)は今年25周年を迎えた。この映画祭はパリ郊外の北に位置するパンタンの映画館「Ciné 104」で毎年6月に開催される。フランスの短編映画祭といえばカンヌ国際映画祭に次ぐ規模となるクレルモン=フェラン短編国際映画祭があるが、こちらは商業的でエンターテインメント色の強い作品が中心にセレクションされる傾向にある。それに対しコテ・クールは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:22 PM

July 16, 2016

『ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ』黒川幸則
田中竜輔

「村の中の村(Village in the village)」でなく「村の上の村(Village on the village)」。ひとりのバンドマンがごろりと迷い込んだこの村は、たとえばシャマランの『ヴィレッジ』のように隔離され幽閉された空間ではなく、スマホもネットもビールも充実しているし、なんなら普通に自動車も電車も走っているような場所だ。「on」という前置詞を率直に読み解こうとするのなら、古...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:06 PM

July 11, 2016

2016年 カンヌ国際映画祭報告(番外編)
槻舘南菜子

Hors Cannes 映画祭期間中に、トロント国際映画祭のプログラマーである友人のアダム・クックの紹介で、フィリップ・ガレルの弟、ティエリー・ガレルにインタヴューすることになった。ティエリー・ガレルは現在67歳、今回のカンヌには昨年から創設されたドキュメンタリー作品に与えられる「黄金の眼 L'Oeil d'or /The Golden Eye」賞 の審査員のひとりとして滞在していた。彼との出会...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:36 PM

July 2, 2016

2016年 カンヌ国際映画祭報告(3)
槻舘南菜子

「監督週間」部門 開幕・閉幕作品にマルコ・ベロッキオとポール・シュレイダーの新作が選ばれ、4本の処女長編がセレクションされた本年の監督週間。2012年にエドワード・ワイントロープがディレクターに就任して以来、その商業的なセレクションはたびたび批判されてきた。本年の「公式コンペティション」部門や「ある視点」部門から抜け落ちてしまったと思しきベルトラン・ボネロやアクセル・ロペールらの作品が救い上げられ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:48 AM

July 1, 2016

『ディストラクション・ベイビーズ』真利子哲也
結城秀勇

真利子哲也の作品では必ず、位相の違うふたつの世界が重なり合っている。『イエローキッド』のボクサーの日々とアメコミ、『NINIFUNI』の強盗犯の逃亡とアイドルの撮影、『あすなろ参上!』のアイドルの人間としての葛藤とゆるキャラが共存する街。それらふたつは平面的な距離において遠ざけられているのではなく、互いに重なりあって二重写しになっている。だからふたつの道筋が並行モンタージュ風につながれるとしても、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:14 PM

June 28, 2016

『団地』阪本順治
田中竜輔

タイトルからして団地で繰り広げられる悲喜交々の人間模様が描かれるのかと想像していたら、まったく違った。舞台となる団地で中心的な被写体となるのは10名前後。いわゆる「ご近所付き合い」はその範囲にしかなく、そして実質的に生活が描かれるのは主人公である藤山直美と岸部一徳の夫婦だけだ。建築物としての外観こそ頻繁にフレームに収められるも、他の住民の部屋はごくわずかな場面を除けば存在さえ示唆されることはない。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:14 PM

June 26, 2016

2016年 カンヌ国際映画祭報告(2)
槻舘南菜子

「ある視点」部門 本年の「ある視点」部門にセレクションされた18本中、7本が処女作、4本は監督第2作と、例年になく新人監督がフィーチャーされたプログラムだったが、作品の出来はといえば散々たるもの。なぜセレクションされたのが理解に苦しむような作品が大半を占めたというのが正直なところだ。ただその一方で特別上映枠にアルベルト・セラ(『ルイ14世の死 La Mort de Louis XIV』)とポール・...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:08 PM

June 25, 2016

2016年 カンヌ国際映画祭報告(1)
槻舘南菜子

2016年カンヌ国際映画祭 コンペティション部門受賞結果 パルムドール:『I, Daniel Blake』(ケン・ローチ) グランプリ:『Juste la fin du monde』(グザヴィエ・ドラン) 審査員賞:『American Honey』(アンドレア・アーノルド) 監督賞:クリスチャン・ムンジウ(『The Graduation』)、オリヴィエ・アサイヤス(『Personal Shoppe...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:27 AM

June 22, 2016

『天竜区奥領家大沢 夏』ほか「天竜区」シリーズ 堀禎一
田中竜輔

静岡県浜松市、その最北部の山間地に位置する天竜区大沢集落は、村の開拓当初からその限られた土地を活用するために――歩くのも大変なほど急な勾配の斜面は多くの畑で占められている――最大で8軒までしか戸数は増やされなかった。今日では過疎化が進み3軒で4人が生活しているこの場所の、およそ1年にわたる人々の生活を映し出すのがこの全4本で4時間を超える「天竜区」シリーズである。だが、そうした背景や事前知識につい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:58 AM

June 19, 2016

『あなたの目になりたい』サッシャ・ギトリ
結城秀勇

ジュヌヴィエーヴ・ギトリ演じるモデルが、サッシャ・ギトリ扮する彫刻家への恋心を祖母に打ち明けるとき、祖母はこう忠告する。一目ぼれは、それがふたり同時に起こるのなら、信じられる。もしどちらか一方だけなら危険だ。そして仮にふたり同時に起こったとしても、それでも危険なものだ。なぜならふたりは見つめあうけれど、実はなにも見ていないからだ。その熱いまなざし以外にはなにも。 画面に映し出される映像や文字や数量...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:22 PM

May 28, 2016

『或る終焉』ミシェル・フランコ
常川拓也

閑静な住宅街の中、ティム・ロス演じるデヴィッドは、ひとりの十代の少女が家から出て車に乗り込むまでをじっと観察し、彼女が通りを車で走り出すと無言のまま追跡しはじめる。カメラはその様子を車内の助手席から長回しで捉える。次のカットでは、彼は夜な夜なフェイスブックでナディアという女の子の写真を何枚もチェックしている。第68回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した『或る終焉』のこのアヴァンタイトルを見て、このふ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:48 AM

May 27, 2016

『わたしの自由について』西原孝至
三浦 翔

何故SEALDsをやっているのかという問いに対してSEALDsの牛田は、「授業でキング牧師の講演を見ていたら『私たちが目指してきたものは必ず達成される、しかしそれは私の生きている間では無い』と泣きながら語るシーンを見てしまったからだ」と語る。そこには、「どういった思想で」といった明確な答えがあるわけでは無い。過去から受け取ったバトン=コトバがあるだけだ。しかし、だからこそ彼らは強く、軽やかに運動を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:24 PM

May 26, 2016

第69回カンヌ国際映画祭 ジャン=ピエール・レオ パルムドール名誉賞 受賞シーン
坂本安美、茂木恵介

「ジャン=ピエール・レオ、あなたは私の人生を変えました」(アルノー・デプレシャン) その地に赴くことはできなかったにせよ、本年のカンヌ国際映画祭のハイライトのひとつは間違いなくクロージングにおけるジャン=ピエール・レオのパルムドール名誉賞受賞シーンだっただろう。コンペティション部門審査員のひとりであるアルノー・デプレシャンは、クロージング後の記者会見で「映画の学生に戻った気持ちで審査員として臨み、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:13 PM

May 17, 2016

『山河ノスタルジア』ジャ・ジャンクー
中村修七

『山河ノスタルジア』は、同時代を捉えてきたジャ・ジャンクーが初めて近未来を捉えた映画だ。とはいえ、近未来の人物も現代に生きている人物と異なるわけではない。近未来に生きる人物たちにとっても、母が子を思う愛情や子が母に対して抱く思慕の念は無縁なものではない。あるいは、このような近未来は現在を照らし返すものだと述べるべきかもしれない。近未来が舞台となっているジャン=リュック・ゴダールの『アルファヴィル』...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:20 PM

May 3, 2016

『追憶の森』ガス・ヴァン・サント
渡辺進也

『ミルク』以降、他人の書いたシナリオで作品を作るようになったガス・ヴァン・サントは、それまでの作家性とは異なる方法で、むしろ職人的なと言ってもいい熟練した方法で映画を作っているようで興味深い。前作『プロミスドランド』では、舞台となったあの町にないものは撮るつもりはないとばかりに、あの町にあるものだけをただひたすら撮り続けていた。「あるものはある」「ないものはない」である。今作の『追憶の森』において...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:48 AM

April 30, 2016

『台湾新電影時代』シエ・チンリン
隈元博樹

 巷のシネコンへ足を運ぶたびに、ふと気になってしまうことがある。それは予告編に続いて本編が始まろうとしてもなお、スクリーンのフレームサイズが一向に変わらなくなったということだ。たとえばこれがフィルム上映であれば、必ず上映前に映写技師の手によってスタンダード、ヴィスタ、スコープと、作品ごとのフレームサイズに応じたマスキングが行われていたと思う。それと同時にマスキングは画の左端に連なるサウンドトラック...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:05 AM

April 29, 2016

『SHARING アナザーバージョン』篠崎誠
結城秀勇

「このバージョンは、上映時間の長いバージョンのたんなる短縮版ではなく、文字通り"別の"バージョンなんです」とは、上映前の監督挨拶において強調されていたことであるが、このバージョンが、長いのと短いの、表と裏、右と左といったような対を補完するものとしてあるのではなく、ただ別なものとしてある、というのはなんだか重要な気がする。 というのも『SHARING』という作品自体が(そしてとりわけ「アナザーバージ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:02 AM

April 24, 2016

ブリィヴ・ヨーロッパ中編映画祭報告(2016年4月5日~ 4月10日) 
槻舘南菜子

ブリィヴ・ヨーロッパ中編映画祭(Festival du cinéma de Brive http://www.festivalcinemabrive.fr/home.php )は、五月革命後にカンヌ国際映画祭の監督週間部門を創設したフランス映画監督協会(Le SRF) の主導で、2004年に始まった。5日間の短い会期に関わらず、毎年数百人の映画人――批評家、プログラマー、映画監督、プロデューサー等...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:34 AM

April 10, 2016

『リリーのすべて』トム・フーパー
若林良

 本作『リリーのすべて』は、第二次世界大戦前のドイツで世界初の性別適合手術を受け、男性から女性になった実在の人物の物語である。その製作背景としては様々であろうが、おそらくは、主人公のアイナー・ヴェイナー=性別移行後はリリー・エルベが、歴史上はじめて性別転換にふみきったことの、歴史的な意義が再評価されたことが大きいだろう。いわば現在におけるトランスジェンダーの人々の希望を提示した、偉大な先達であると...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:42 PM

April 7, 2016

『ルーム ROOM』レニー・アブラハムソン
常川拓也

 ブリー・ラーソンの主演作としては前作にあたる『ショート・ターム』では、彼女の演じる役名はGraceだった。それに対し本作『ルーム』では、彼女はJoyという名を持って現れる。恩寵とよろこび──ときに皮肉な、そしてときに文字どおりの意味を物語の中にもたらす名前の響きが、短期保護施設を舞台に、ケアテイカーと心に深い傷を負ったティーンエイジャーとの間で築かれる疑似家族/親子を描いた『ショート・ターム』と...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:18 PM

March 11, 2016

『母よ、』ナンニ・モレッティ
隈元博樹

 ナンニ・モレッティのフィルモグラフィを紐解けば、ミケーレ・アピチェッラやドン・ジュリオという人物を演じる彼の姿が浮かんでくる。当然ながら彼らを演じる以上、彼らはモレッティ自身であり、いっぽうでは分身のような存在でもある。モレッティとは異なるアイデンティティを持ったミケーレやジュリオは、左翼崩れの青年、数学者、映画監督、神父、さらには水球選手(ときどき共産党員)として、それぞれのフィルムの一翼を担...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:58 AM

February 17, 2016

『大河の抱擁』チロ・ゲーラ
久保宏樹

近年、映画産業の発展の著しいコロンビアの若手映画映画監督チロ・ゲーラ(Ciro Guerra)による長編3作目、『大河の抱擁』(原題は「El Abrazo de la Serpiente / 蛇の抱擁」、ちなみに本作は日本でも第7回京都ヒストリカ国際映画祭にて上映されている)が、第68回カンヌ国際映画祭監督週間グランプリ受賞から7ヶ月の遅れを経て、パリでは昨年の12月23日よりMK2系列の映画館で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:55 AM

February 16, 2016

『ザ・ウォーク』ロバート・ゼメキス
田中竜輔

ジョゼフ・ゴードン=レヴィット演じるフィリップ・プティを語り部として、プティによって行われた地上400mを超えるツインタワー間の綱渡りという常軌を逸した実話を題材につくられた本作。遅ればせながらIMAX3Dでこの作品を見て、本当に様々な場面で魂のすくむ思いをさせられた。しかし一方で私がこのフィルムを見ながら終始不思議で仕方なかったのは、どうしてレヴィット=プティが「英語を話す」ということにここまで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:26 AM

February 7, 2016

『東から』シャンタル・アケルマン
結城秀勇

35mmフィルムで投射された映像がなんだかやけにぼんやりとして見える。粗い粒子のひとつひとつにはピントが合っているのに、それらが構成する映像全体のどこに焦点があるべきなのかがわからない。画面中央に置かれた樹木がその背景よりも鮮明であったりすることもなければ、画面の奥から近づいてくる農婦たちの誰かひとりが他の誰かよりも鮮明であることもなく、駅の待合室の、横移動するカメラの前に現れては消える人々もまた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:37 PM

February 4, 2016

『母よ、』ナンニ・モレッティ
増田景子

ナンニ・モレッティの新作『母よ、』を見て、アンナ・マニャーニのお尻を思い出した。『ベリッシマ』(1951、ルキノ・ヴィスコンティ)で子どものために階段を上り下り、あちこちを駆けずり回る姿のなかに光る、あのお尻である。ペドロ・アルモドバルが『ボルベール』の撮影の際に、つけ尻なるものをペネロペ・クルスにつけさせたのも、このお尻のせいだ。彼はこのアンナ・マニャーニのお尻に「母親」たるものを見出したからだ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:01 PM

January 31, 2016

『蜃気楼の舟』竹馬靖具
隈元博樹

 オープニングショットに捉えられた一艘の小舟が、ゆったりと画面の奥へ向かっていく。それは別に何かを運搬しているわけではなく、ただゆらゆらとスクリーンの前の私たちから離れていくだけだ。しかし佐々木靖之のカメラは、そんな無機質な舟の行方を丹念に追いつづける。どこへ向かうのかさえも問うことなく、誠実なまでにその舟の行き着く先を収めようとする。  このように『蜃気楼の舟』の被写体たちは、絶えずどこかへ向か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:39 AM

January 15, 2016

『ブリッジ・オブ・スパイ』スティーヴン・スピルバーグ
結城秀勇

この映画の最初のカットは、後にソ連のスパイとして逮捕されることになるルドルフ・アベルの顔を映し出す。カメラはそのままズームアウトして、その顔が鏡の前に座った男の鏡像であったことを明らかにし、そして彼が鏡を見ながら描きつつある自画像が画面右手に置かれていることをも示す。この、こちらに背を向けたひとりの男と、男についての二枚のイメージーー左側は鏡像、右側は自画像ーーを見ていてなんだか変な感じになる。そ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:47 PM

December 23, 2015

『独裁者と小さな孫』モフセン・マフマルバフ
常川拓也

「狂気が世界を支配し、人類の自由が失われていた頃の物語」──チャールズ・チャップリン『独裁者』は冒頭にこのように説明される。およそ75年前に警鐘が鳴らされた世界から現代はある意味では進歩していないのだろうか。そう思えてしまうほど、この文言は『独裁者と小さな孫』の冒頭に付けられていてもおかしくないかもしれない(その意味で、本作で独裁者と孫の最初の逃亡先が「床屋」なのは意識的だろう)。何の躊躇や葛藤も...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:03 PM

November 18, 2015

『約束の土地』アンジェイ・ワイダ
隈元博樹

 引き攣った顔の連続が、スクリーン越しに押し寄せてくる。カメラのクロースアップがそれを助長するかのように、時代の潮流に揉まれた人々の表情が、およそ40年の時を経てもなお刻まれている。舞台となる19世紀末のウッチは、世界でも有数な繊維工業地帯として栄華をきわめ、さらにはドイツ、ユダヤ、ポーランドによる民族と文化の入り混じる只中にあった時代だ。だからこのフィルムが描くウッチには、民族の多様性があり、貧...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:10 PM

November 10, 2015

『岸辺の旅』黒沢清
梅本健司

僕らと映画とその間  瑞希が言うように、瑞希と優介には違いなんてないのではないか。死んだように生きていている瑞希が、突如思いつき白玉を作っていると、生きているかのように死んでいる優介が帰ってくる。「たぶん、身体はカニにでも食べられてるだろーねぇ」と言いながら白玉を食らう優介と、「そう」と平然と答える瑞希は、3年ぶりに再会した夫婦であるのだが、それが生死を超えた再会には見えない。もしかしたら二人とも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:30 AM

November 6, 2015

『タンジェリン』ショーン・ベイカー
常川拓也

デュプラス兄弟が製作総指揮で携わる『タンジェリン』の舞台となるLAのクリスマス・イヴは、暖色の太陽が燦々と照っている。セックスワーカーをしているふたりのトランスウーマンと、アルメニア移民のタクシー運転手を中心に、掃き溜めのようなストリートが全編iPhone5Sでゲリラ的に撮影されているが、それによってショーン・ベイカーは街に溶け込むことに成功しているように思える。まるでラップをスピットするかのよう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:08 PM

November 2, 2015

『パリの灯は遠く』ジョゼフ・ロージー
高木佑介

よせばいいのにロベール・クライン(=アラン・ドロン)は自分と同じ名を持つもうひとりの「クライン氏」を追いはじめる。ナチス占領下のパリでユダヤ人から美術品を安く買い叩くクラインと、ユダヤ人と思しきもうひとりのクライン氏。単純に話の筋だけ追っていくと、出来の悪いミステリーを見ているかのような気がしてくる。自己の分身を追いかけることの不毛さ、あるいはその裏返しとしてのアイデンティティーの再獲得。もしくは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:09 AM

October 31, 2015

『私の血に流れる血』マルコ・ベロッキオ
高木佑介

TIFFにてベロッキオの新作を見る。とても奇妙な映画だ。魔女の嫌疑をかけられた修道女に課せられる数々の試練――そしてそれを乗り越えて神への無償の愛を体現する聖女の物語という話で終わるのかと思いきや、全然違った。中世のキリスト教魔女裁判を巡る話が前半部分を占め、後半では突如として現代を舞台にした話が展開される。魔女裁判のくだりでは、敬虔そうな神父たちが修道女に試練を課して、サタンと契約したことを示す...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:46 AM

October 30, 2015

『私の血に流れる血』マルコ・ベロッキオ
田中竜輔

デヴィッド・フィンチャーの『ソーシャル・ネットワーク』ではレディオヘッドの「Creep」のカヴァーが用いられていたベルギーの聖歌隊グループ、Scala and Kolacny Brothersによる本作の主題歌は、なんとメタリカの「Nothing else matters」。選曲がベロッキオ本人によるものなのかどうかはわからないが、ともあれ、「So close, no matter how far...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:55 PM

October 22, 2015

『マッドマックス2』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ジョージ・ミラー
結城秀勇

早稲田松竹で二本立て。やっと見た。 『マッドマックス』も『マッドマックス/サンダードーム』もテレビでは見てるはずだがまったく記憶にないので、あくまで『2』と『怒りのデス・ロード』を比較しての印象だが、メル・ギブソンとトム・ハーディのマックスの違いは、とりあえず仲間になりそうな感じの人たちへの応対の違いにあるんじゃないだろうか。ギブソンは無関心を装った苛立ちみたいに見えるのに対して、ハーディは無関心...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:37 AM

October 16, 2015

『パウリーナ』サンティアゴ・ミトレ
常川拓也

2015年カンヌ国際映画祭批評家週間でグランプリに輝いた『パウリーナ(原題:La Patota)』は、判事の父を持つ弁護士のパウリーナ(ドロレス・フォンシ)が、そのキャリアを捨て、社会奉仕を志してアルゼンチンの都会から生まれ故郷の田舎町へ帰るところからはじまる。誰かの人生のためになるべく、そこで暮らす貧しい若者たちへ現代の民主的な権利などを教える教師となった彼女だったが、しかし、同僚女性の家でワイ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:14 PM

October 9, 2015

『黒衣の刺客』ホウ・シャオシェン
結城秀勇

フィルムによる撮影・上映ではなく、デジタルによる撮影・上映でのみ可能になる映像のあり方があるんじゃないのか、と数日前に書いたばかりだが、『黒衣の刺客』がまざまざと見せるのは、とりあえずフィルムで撮っておけば、あとはデジタルのポスプロで作れない画面なんてない、という圧倒的な事実だ。フィルムで撮影しさえすれば、この世に存在するあらゆる映像はつくりだせる、そんな断言にも似た力強さーーそう呼ぶにはあまりに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:14 PM

October 5, 2015

『アカルイミライ』黒沢清
結城秀勇

『岸辺の旅』を見ていてすごく気になったのは、浅野忠信と一緒にいないときの深津絵里の生活が、極端に彩度の低い画面で映し出されていることだった。とくに中盤の、旅を中断して東京に帰る場面。ほとんど灰色と言ってもいいような色調で、旅の間に枯れ果てた鉢植えの植物が画面に映る。そのとき、なんだかとてつもなく取り返しのつかないことが起こったような、取り返しもつかないような途方もない時間が経過したような、そんな気...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:55 PM

October 3, 2015

『ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』ロン・マン
隈元博樹

 ある事物の性質やその特徴を言い表すとき、私たちは「らしさ」という接尾語を使うことがある。ここでの「らしさ」とは、礼節を重んじた人物に対する紳士らしさであり、しとやかで品格を備えた人物に対する淑女らしさのことを指している。ただしこれらは、実体に近しいことを表現しているにすぎず、それ自体のことではない。紳士らしさとは紳士に近い存在であり、完全なる紳士ではない。また淑女らしさとは、そのすべてをもって淑...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:36 PM

September 23, 2015

『みんな蒸してやる』大河原恵
渡辺進也

いまユーロスペースで「たまふぃるむナイト」が開催されている。 「たまふぃるむ」を説明しておくと、もともとが多摩美術大学の映像演劇学科の映画制作の授業の一環からはじまったものだったが、当学科がすでに募集を止めてしまったためにそこから派生して在学生やOBを含めた組織となった。彼らは、制作だけに留まらず上映も定期的に行っている。おそらくそのメンバーは10数人ほどで構成されていると思うのだが、誰かが作品を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:38 AM

『ひこうせんより』広田智大
渡辺進也

人里離れた廃墟のような場所で、男女7人が生活している。時代もまるで現代ではないような雰囲気で、無機質な衣装と無機質な物質の中で彼らは生活している。ある者は写真を撮り(フィルムが実際に装填されているのかわからない)、ある者は廃品だろうか機械を修理し、ある者は外部からの侵入者を警戒しているのだろうか金属バットを振り回し、ある者は紙に赤や青のペンキを塗り続け、ある者はひまわり型の風車をつくり、ある者は近...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:30 AM

July 23, 2015

特別講義「〜日仏映画作家「現代映画」を語る〜」@映画美学校(2015.6.28)
渡辺進也

今回、映画美学校で行われたマスタークラスでは、「〜日仏映画作家「現代映画」を語る〜」と題して、フランス映画祭2015に最新作『アクトレス〜彼女たちの舞台〜』と共に来日したオリヴィエ・アサイヤス監督が青山真治監督を相手に、映画制作の方法や映画への考え方、また『アクトレス』についてなど多岐に渡り話を聞く機会となった。 その講義の中でも特に印象に残ったアサイヤスの言葉は、映画制作の際に常に自分でもわから...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:52 AM

July 17, 2015

『海街diary』是枝裕和
若林良

『そして父になる』に続いてカンヌ映画祭コンペティション部門に出品された、是枝裕和監督の新作である。日本の美を色濃く残すような"古都"鎌倉で、四姉妹が織りなす一年間の日々をじっくりと描いている。鎌倉を舞台にした映画と言えば、小津安二郎の『晩春』『麦秋』など「家族の静かな別れ」を描いた作品が有名であるが、本作で描かれるのはそうした作品群とは対照的な、「家族の再生/誕生」である。それは『誰も知らない』『...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:04 AM

July 10, 2015

『サイの季節』バフマン・ゴバディ
グフロン・ヤジット

重い扉の開く音がする。不穏な影に、冷たい水。白く老いた髭。そして目に射し込むのは、暖かさを失った太陽の光――ある男の企みによって不当に逮捕されたクルド系イラン人の詩人サヘル・ファルザンが、30年間の獄中生活から釈放される場面で物語が幕を開ける。 時代はイスラム革命のさなか、サヘルは反革命的な詩を書いた罪を問われ投獄されてしまう。投獄中、政府の嘘によりサヘルは死んだことにされていた。釈放後に彼は愛す...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:55 PM

July 9, 2015

『チャイルド44 森に消えた子供たち』ダニエル・エスピノーサ
高木佑介

数年前に『デンジャラス・ラン』という映画が公開されていたダニエル・エスピノーサの新作。デンマークの国立映画学校にキャリアの出自を持つというこの南米系スウェーデン人監督のことは詳しくは知らないが、彼の前作『デンジャラス・ラン』は、CIAの「裏切り者」のベテランと新米の師弟関係を軸に、法と無法、行動と待機のあいだを絶えず行き来する人物や物語がそうした主題を最も得意としていたかつてのアメリカ映画への尊敬...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:41 PM

July 6, 2015

『冷たい水』オリヴィエ・アサイヤス
白浜哲

映画がエンディングを迎え川の流れる音が短くフェードアウトしていくと同時に、わたしの身体は再びいつもの重さを取り戻していた。『冷たい水』を見ることとは、まるで水のなかにいるようにふわふわと浮遊するような体験であり、また深く息つぎを繰り返すような重々しさを受け入れ、そこからの解放を伴なう体験であると言えるかもしれない。鬱屈を抱えた少女と、それに付き合おうとする少年の青春時代を描いたこの映画は、それがそ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:35 PM

『約束の地』リサンドロ・アロンソ
渡辺進也

new century new cinema やfilm commentで紹介されているように、数少ないリサンドロ・アロンソのフィルモグラフィーで繰り返し描かれてきたのは、孤独な男が、孤独な場所で、孤独に時を過ごすその様である。『La libertad』における木こりの男の1日の時間。『Los muertos』における刑務所を出た男のその後の時間。『Fantasma』における自分の出た映画(その劇...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:56 PM

June 20, 2015

『アクトレス ~女たちの舞台~』オリヴィエ・アサイヤス
坂本安美

シルス・マリアの雲とともに 電車の中でいくつもの携帯やコンピューターを使い、何人もの人たちとやり取りしている女性ふたり。世界的に活躍する40代のフランス人女優マリア(ジュリエット・ビノッシュ--おそらくこれまででもっとも素晴らしいビノッシュをこのフィルムでは発見できるだろう)と、そのアシスタントである20代前半のアメリカ人ヴァレンティーヌ(クリステン・スチュワート--もはや演技を越えた何かに到達し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:27 AM

June 11, 2015

『だれも知らない建築のはなし』石山友美
長島明夫

建築家および建築関係者へのインタヴュー映像を主につなぎ合わせて作られた73分間のドキュメンタリー。ところどころで実際の建築の映像が短く挿入される。話者は安藤忠雄、磯崎新、伊東豊雄、レム・コールハース、ピーター・アイゼンマン、チャールズ・ジェンクスら合計10名。インタヴュアーが中谷礼仁、太田佳代子、石山友美。もともとはヴェネチア・ビエンナーレの展覧会場で流しておくために作られた本作の制作の経緯は、石...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:14 PM

June 10, 2015

『パプーシャの黒い瞳』ヨアンナ・コス=クラウゼ、クシシュトフ・クラウゼ
長谷部友子

冒頭、けたたましいソプラノがジプシーについて歌い出し、一体何がはじまったのかと思った。どう考えたってこれはジプシーの音楽ではない。多分これはオペラなはずで、しかし何故こんなことになっているのだろう。この不自然さ、なにかおぞましいおどろおどろしい不穏なものがはじまっていく感覚こそがこの映画をもっとも端的にあらわしているように思う。 このオペラの歌詞を書いた人物は、「パプーシャ」(人形)という愛称で呼...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:16 AM

『パロアルト・ストーリー』ジア・コッポラ
四倉諒太郎

ジア・コッポラは『パロアルト・ストーリー』の監督を、職人的にこなしている。この作品は、ジアのセンスを堪能する映画ではない。『ヴァージン・スーサイズ』(1999)や『ガンモ』(1997)のような、ソフィア・コッポラやハーモニー・コリンの処女作にあった被写体への愛情を期待すると、大きく評価を損ねてしまう。ここでジアに対する評価を「ソフィアやハーモニーよりセンスがない」としてしまったら、それこそ不...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:08 AM

June 8, 2015

『ローリング』冨永昌敬 
渡辺進也

 小金をうまいことせしめた元高校教師とその元生徒たちは、東京の弁護士に何もないただ広い荒野に連れていかれ土地を買わされようとしている。この土地にソーラーパネルを置いて一儲けしないかと提案されているわけだ。そこで弁護士は次のような言葉で彼らの購買欲をかきたてる。 「想像してください。この土地にソーラーパネルが並ぶ様を」 「見てください。この眩しい太陽を。なぜ眩しいのか。それは電気だからです」  まる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:46 AM

June 7, 2015

『マナカマナ 雲上の巡礼』ステファニー・スプレイ&パチョ・ヴェレズ
渡辺進也

 映画のタイトルになっている『マナカマナ』は、女神像のある聖地のような場所で、かつては険しい山道を3日かけて登ることでようやくたどりつけるような場所にある誰でも簡単に行けるようなところではなかった。それが山の麓から頂上までをつなぐロープウェイができたことによりわずか10分ほどで行くことができるようになった。  と、書いてみたけれど、そういったことはこの映画の中で説明などされるわけでない。あくまでも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:55 PM

June 4, 2015

『僕の青春の三つの思い出(僕らのアルカディア) Trois souvenir de ma jeunesse - Nos arcadies』アルノー・デプレシャン
坂本安美

若き芸術家の肖像 © Jean-Claude Lother / Why Not Productions 「僕は思い出す」 ポール・デダリュス。この奇妙なちょっと発音し難いラスト・ネーム(それはジェイムズ・ジョイスの小説の主人公スティーヴン・ディーダラスから取られていると言われる)を持つ、アルノー・デプレシャンの長編2作目『そして僕は恋をする』の中で生み出されたこのひとりの登場人物は、90年代以降多...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:17 PM

June 3, 2015

カンヌ国際映画祭2015リポート Vol.05 
槻舘南菜子

5月16日 朝起きると連日の睡眠不足と栄養不足でなんだか体調が思わしくない。やばい。だが、見逃すわけにはいかないので8時半のプレス上映でナンニ・モレッティ『Mia Madre』からスタート。 Film Still © SACHER - FANDANGO 彼自身の私的なエピソードを元にした物語で、女性映画監督の制作現場と病床にある母親を見舞うエピソードが並行して語られる。最近のコメディータッチのモレ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:30 AM

June 2, 2015

カンヌ国際映画祭2015リポート Vol.04 
槻舘南菜子

5月15日 朝8時半からのプレス上映のために7時起床。前作『Alps』がかなり変わった作品で面白かったYorgos Lanthimos『The Lobster』からスタート。 近未来を舞台としたSFで、その世界では法律によって独身の男女は拘束され、あるホテルに送られる。そこで45日以内に相手を見つけられなければ、動物(ただし何になるかは選べる)に変えられ、森に放たれることになるという。そこから逃げ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:25 PM

カンヌ国際映画祭2015リポート Vol.03 
坂本安美

5月14日 夜20時近く、カンヌに到着。槻舘南菜子のお陰でフランスの若い批評家たちと6人でアパートを共有させてもらうことになっていたのだが、予想以上の狭さに一瞬たじろぐ。なんとか荷物を整理し、二段ベッドの下を寝床に確保させてもらい、長旅で疲弊した身体にむち打ち、南菜子ちゃんと共に「ある視点」部門のオープニング・パーティーに顔を出す。それで帰ればいいのに、しばらく会っていなかった友人に一目と出かけて...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:16 PM

May 28, 2015

『皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』シャウル・シュワルツ
常川 拓也

100万人が住むメキシコのシウダー・フアレスは、年間4000件近い殺人事件があり、警察は麻薬組織からの報復を恐れて黒い覆面を被って事件現場に向かう。この「世界で最も危険な街」フアレスからひとつの川を挟んだ国境の向こうには、年間殺人件数5件の「全米で最も安全な街」エルパソがある。イスラエル出身で米ニューヨーク在住のフォトジャーナリストであるシャウル・シュワルツ監督は自ら撮影も務め、シニックな視点...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:09 AM

May 24, 2015

映画『ローリング』完成披露試写会@水戸芸術館ACM劇場(2015.4.11) 
鈴木洋平

 4月11日に水戸芸術館ACM劇場にて行われた完成披露試写会で、2002年の水戸短編映像祭グランプリを経たのち、映画監督という職を得ることができたことへの感謝を述べつつ、監督の冨永昌敬は「また水戸芸術館で上映できたことが嬉しい」と観客の前で素直に語った。主演の三浦貴大は1年のロケの大半を茨城で過ごしているほど北関東に親しいらしく、ヒロインを演じた柳英里紗は映像祭で監督と初めて出会い、かねてから冨永...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:19 PM

カンヌ国際映画祭2015リポート Vol.02 
槻舘南菜子

5月14日 今朝は監督週間の開幕上映作品、フィリップ・ガレルの新作『L'ombre des femmes』+『Actua I』からスタート。 『Actua I』は当時のゴーモンやパテによるニュース映画批判として、68年5月ザンジバールのメンバーとともに撮影されたが、長年消失されたとされていた作品だ。昨年シネマテーク・フランセーズにより修復され、パリの短編映画祭 Côté court を皮切りに上映...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:34 PM

May 23, 2015

カンヌ国際映画祭2015リポート Vol.01 
槻舘南菜子

5月13日 パリ・リヨン駅7時19分発のTGVで出発。つまり朝5時半起き。いつも通り電車の中で眠れるはずがないので、印刷した上映スケジュールを睨みつけながら予定を立てていく。コンペティションを中心に監督週間部門や批評家週間部門の気になる作品をピックアップし、移動時間と待ち時間を計算する(私のプレスパスは青色、どの上映にも易々と入れてしまう魔法のピンクパスよりランクは下で、プレス上映は最低1時間半...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:03 PM

April 30, 2015

『THE COCKPIT』三宅唱
田中竜輔

三宅唱は、小さな部屋で2日間にわたって行われたOMSBやBimら若きHIPHOPミュージシャンの作曲&レコーディングの様子を被写体とした最新作『THE COCKPIT』において、真正面に据えられたカメラの前で機材に向かいトラックをつくり続けるOMSBの姿を見つめつつ、まるで鏡に向かい合っているような気分でこの作品の編集をしたと語っていた。それはたんにふたりの人物が、カメラ/モニターというひとつの面...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:53 AM

April 21, 2015

ミケランジェロ・アントニオーニ展 ――アントニオーニ、ポップの起源
茂木恵介

夏時間が始まって早一週間。ようやく、コート無しで外を出歩けるようになった。街にはサングラスをかけた人たちが、カフェのテラスや公園で飲み物片手に楽しそうに話している。ようやく、パリにも春が訪れた。そんな誰もがウキウキしてしまう季節の中、映画の殿堂シネマテーク・フランセーズにてミケランジェロ・アントニオーニの展覧会がオープンした。 展覧会に合わせたレトロスペクティブのオープニングには新旧のシネマテーク...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:11 PM

April 15, 2015

『La Sapienza(サピエンツァ)』ウジェーヌ・グリーン
茂木恵介

「工場は現代のカテドラルだ」という台詞を聞いたとき、スクリーンに映し出されるのは取り壊され半ば廃墟のような工場跡の映像であった。工場が資本主義の象徴のひとつであることは言うまでもない。昔、どこかのお偉いさんに「工場はひとつの村だ」と言われた記憶があるが、大工場を持つ企業がある地域の産業を支えており、その周辺に住む多くの人たちはその企業に勤め、工場に通勤している。加えてその地域の行政がそのような企業...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:40 PM

March 14, 2015

『ドノマ』ジン・カレナール
楠大史

この作品を見て、いまだに戸惑いを隠し切れない自分がいる。観客に対してここまで挑発的な姿勢の映画も、近年では珍しいのではないか。ジン・カレナールの『ドノマ』は良くも悪くも、映画の新しい形式をこれでもかと突きつけてくる作品である一方で、その基盤にはフランス映画がこれまで培ってきた即興演出の流れをも強く感じさせる。不思議な作品であり、こう言ってよければ怪作だ。 とはいえ『ドノマ』の面白さは、その新しい形...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:32 AM

March 5, 2015

『5 windows eb』『5 windows is』瀬田なつき
結城秀勇

どれだけの人が共感するかはわからないし、これが的を射た観点だとも思わないのだけれど、私にとって「5 windows」とは、『ローラ殺人事件』(オットー・プレミンジャー、1944)や『デジャヴ』(トニー・スコット、2006)の系譜に連なる「すでに死んだ女に恋をする話」の最新版なのであり、こうしてもともとのプロジェクトから時間も空間も距離をおいた◯◯ヴァージョンが付け加えられるたびに次第にその思いは強...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:59 PM

March 3, 2015

『さらば、愛の言葉よ』2D版 ジャン=リュック・ゴダール @横浜シネマリン
結城秀勇

2014年度ベストでも書いたことだが、この映画についてどう語るべきなのかを悩んでいた。つまり自分がこの映画で見たものと同じものを、自分以外の人たちも当然のように見た、という前提に立ってよいのかわからなかったのだ。もちろん、人と話せば「タイトルの3Dって文字が飛び出してたよね」とか「右目だけパンする画面があったよね」とか、自分が見たと思うものがたしかにスクリーンに映っていたらしいことは確認できる。だ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:34 PM

February 7, 2015

『少女と川』オレリア・ジョルジュ
隈元博樹

 この映画の水面には、ふたつの働きがあると思う。ひとつは物質として存在し、つねに外からの光を照り返すようにして反射させること。もうひとつは地上にかけて存在する現実の世界から、その奥底へと繋がる別の世界を想起させることだ。だからここに映る幾多の川はその水面下の状況を映し出すことはないし、つまりはどの水面も透き通ってはいない。目上の太陽や街灯を反射させることはあるけれど、私たちは水中の状況を知ることさ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:30 PM

February 5, 2015

『メルキュリアル』ヴィルジル・ヴェルニエ
結城秀勇

「第18回カイエ・デュ・シネマ週間in東京」のチラシには、この作品の物語が、いま現在ここにある世界とは別の世界を描いたある種のファンタジーのようなものとしてあらすじが書かれているのだが、実際映画を見てみて、半分同意するとともに半分納得できないでいる。ヴィルジル・ヴェルニエという若い映画監督の過去作について書かれた海外のいくつかの文章にちらっと目を通してみると、決まってドキュメンタリーとフィクション...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:52 AM

January 27, 2015

『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』アルノー・デプレシャン
結城秀勇

第二次世界大戦の従軍中に頭部に障害を負ったアメリカインディアン、ジミー・ピカード(ベニチオ・デル・トロ)は頭痛とめまいの治療のために、陸軍病院に入院することになる。その際に行われる様々な検査のなかで、ロールシャッハテストのような、特定の図像を見て思うことを述べる検査が行われるのだが、示された絵を見てしばし黙りこんだジミーは、やがてこんなことを言う。「代わりに毎晩オレが見るイメージの話をしよう」。高...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:35 AM

December 6, 2014

『自由が丘で』ホン・サンス
隈元博樹

 映画のなかの時間とは、ほんとうに厄介なものだと思う。どんな映画を見るにしろ、私たちはある決まった上映時間のなかで数多のシーンを目撃しつつ、物語の顛末や登場人物たちの過程を知るために、そのほとんどを映画のなかの時間に負うているからだ。だからその時間とは、基本的に登場する人物の行為や物語に委ねられている。そして時間を操作することのできる作り手は、そうした時間の経過を説明するための所作さえも必要とされ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:17 AM

November 23, 2014

『ショート・ターム』デスティン・クレットン
常川拓也

エドガー・ライトが2013年のベストの一本に挙げ、ジャド・アパトーが絶賛した(アパトーは次回作『Trainwreck』に本作主演のブリー・ラーソンをキャスティングしている)まだ無名の新鋭監督の長編二作目『ショート・ターム』の舞台となる短期保護施設にいるのは、家庭のトラブルで深い傷を負った子どもたちだ。つらい秘密を持ったナイーヴな彼らを、時に愛が傷つけている──触れると灯りが点いたり消えたりするラン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:18 PM

November 20, 2014

『息を殺して』五十嵐耕平
高木佑介

 上映終了が間近に迫っているが、五十嵐耕平の『息を殺して』が川越スカラ座にて上映されている。舞台はゴミ処理工場の内部とその近辺にあるとおぼしき森のみ。新年の訪れが朗らかに祝われそうな気配はなく、人々は皆一様に声が小さく活力が感じられない。年末ということで仕事納めは済んでいるはずなのだが、彼らが一向に家に帰ろうとしないのは、その工場の外側が大して面白くない場所だからだろうか。倦怠感や閉塞感に似た雰囲...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:01 AM

November 11, 2014

『下女』キム・ギヨン
常川拓也

姉と弟が愉しげにあやとりしているオープニング・シーン。幸福な家族然としたその場面に重なるのは、正反対であるはずの大仰で不吉な音楽だ。姿形を変えては絡まるあやとりの糸は、蜘蛛の巣のようでもあり、絡みつく女の性を想起させる。そして、いつほどけるかも知れないあやとりの脆さは、突如訪れる不穏な死を連想させもする。その危うさが『下女』を象徴している。 一見円満な暮らしを送るブルジョワ的な一家を舞台にした『下...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:46 PM

November 10, 2014

『ジャージー・ボーイズ』クリント・イーストウッド
吉本隆浩

 「あ、この曲聞いたことがある!この人たちが唄っていたのか。」こう思った瞬間、人々は不思議と感動に包まれる。監督のクリント・イーストウッドも同じ体験をしたであろう。彼自身、「フォーシーズンズ」についてはあまり知らなかったが、「ジャージー・ボーイズ」の舞台を見てストーリー、キャラクター、そして素晴らしい楽曲を純粋に楽しみ、映画化に挑戦した。その日の撮影を終えたあと、知らず知らずに彼らの歌を口ずさんで...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:06 AM

October 20, 2014

女優・中川安奈のこと
佐藤央

 2014年10月18日。二日酔いの朝に中川安奈さん逝去の知らせを聞く。今から6年前、それは2008年8月17日だったと思う、『シャーリーの好色人生』というとても小さな映画を撮影していた酷暑の水戸で、はじめて安奈さんにカメラを向けた時の驚きを今もはっきりと覚えています。いや、正確にははじめてカメラを向ける前、日本家屋の玄関口で出勤する夫(小田豊)を見送る場面での何でもないセリフのトーンについて、た...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:34 AM

October 16, 2014

『やさしい人』ギヨーム・ブラック
田中竜輔

 ギヨーム・ブラックが『女っ気なし』に続けてヴァンサン・マケーニュとのタッグで手掛けた長編『やさしい人』にまずもって惹きつけられるのは、やはり前作と同じく試みられる16ミリでの撮影だ。水彩の絵の具が混ざり合ったような、さまざまな事物の「あいだ」の質感。どこからどこまでが人物でどこからどこまでが背景なのか、あるいはどこからどこまでが「私」でどこからどこまでが「あなた」なのか。何かと何かを区分するパキ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:40 PM

October 10, 2014

『ジェラシー』フィリップ・ガレル
奥平詩野

 恐らく嫉妬という感情について描いたのだろうと思って見始めていると、クローディア(アナ・ムグラリス)の嫉妬心に捕らえられて窮屈そうなぎこちない笑みがやたら印象に残るシーンが続く。彼女がルイ(ルイ・ガレル)と居ることで彼に依存的になってしまう不安と危機感、満たされ得ずに増幅していく具体的に言葉には出来ない欲求に雁字搦めになって神経が過敏になって行く様子はリアルであって痛ましい。しかしこの映画は一組の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:47 PM

October 9, 2014

『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』サイモン・ブルック
三浦 翔

この映画はある重要な問いを含んでいる。というのは、伝説と言われる演劇人ピーター・ブルックの舞台制作メソッドが明らかにされるからではない。ピーター・ブルックが問題にするリアリティとは、如何にして生きた舞台を作り上げるかという単純なことだ。この映画では特に、役者の振る舞いが問題になる。それを映像化するということは、如何にして映像に力を与えるかという単純かつ重要な問いになっていく。 映画はピーター・ブル...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:39 AM

October 6, 2014

『ファーナス 訣別の朝』スコット・クーパー
高木佑介

『クレイジー・ハート』(2009)に続く、スコット・クーパー2本目の監督作。アメリカの片田舎の製鉄所で働く兄をクリスチャン・ベイルが、その廃れた町から逃れ出るようにイラク戦争に行く弟をケイシー・アフレックが演じている。安い賃金ながらもまっとうな仕事は祖父や父親たちの代から続くその製鉄所くらいなもので、あとは兵隊になるか博打で稼ぐか悪党になるしかないというようなスモールタウンの閉塞感がこのふたりの兄...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:21 PM

October 1, 2014

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ジェームズ・ガン
常川拓也

赤い革ジャンを着て、フェイス・マスクを装着しジェット・ブーツで悠々と空を舞う、そんな『ロケッティア』を想起させるフォルムを持ったピーター・クイル(クリス・プラット)は30過ぎではあるけれど、子どもである。そもそも誰もそう呼ばないのに自らを「スター・ロード(星の支配者)」と名乗るなんて、ただの中学生男子じゃないか? 彼が子どもであることを象徴するアイテムは、死んだ母からもらったカセットテープ「Awe...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:34 PM

September 30, 2014

マティアス・ピニェイロ映画祭2014
渡辺進也

 9月28日。渋谷アップリンクにてマティアス・ピニェイロ監督特集。『みんな嘘つき』、『ロサリンダ』、『ビオラ』の各作品と監督によるアルゼンチン映画のレクチャー。  どの映画も、男女が語らい、本を朗読し、歌い、演技をする。映画の中を言葉や台詞、物音が映画の中を豊かに飛び回っている。そうした音に耳を澄ませながら、これまで知ることのなかった若き監督の作品に魅了された。  一連の映画を見ていてまず気づくの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:42 AM

September 29, 2014

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ジェームズ・ガン
結城秀勇

最近毎日これを聞いている。 Guardians Of The Galaxy: Awesome Mix, Vol. 1 [OST] - Full album 2014 正直言ってこれがサントラとしてそんなに秀逸だとも思わないし(厳密にはサントラではなく登場人物のひとりが聞いているBGMなわけだが)、作品内での一曲一曲の使い方もそんなに飛び抜けてすごいということもないと思う(例えば最近聞いた「Ain...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:12 PM

September 21, 2014

『ヘウォンの恋愛日記』/『ソニはご機嫌ななめ』ホン・サンス
隈元博樹

 『ヘウォンの恋愛日記』では、女学生のヘウォン(チョン・ウンチェ)と映画監督の大学教授(イ・ソンギュン)、そしてアメリカの大学教授を名乗るジュンウォン(キム・ウィソン)との三角関係が描かれ、『ソニはご機嫌ななめ』では女学生のソニ(チョン・ユミ)と元カレのムンス(イ・ソンギュン)、先輩のジェハク(チョン・ジェヨン)、大学教授のドンヒョン(キム・サンジュン)による四角関係が描かれる。ひとりの女性によっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:49 PM

September 15, 2014

『渇き。』中島哲也
田中竜輔

 役所広司という俳優が、ある種の「普通ではないもの」をめぐって右往左往する姿を、私たちは幾度となく目にしてきた。たとえば正体不明の殺人鬼や、徘徊する幽霊たち、あるいは自分自身にそっくりな誰か。「普通ではないもの」とは「理解し得ないもの」とも言い換えられるだろう。そういったものどもを追いかける役所広司は、いつもきわめて具体的なものと接触し、論理的に振る舞っていた。痕跡を調査し、調査から推論し、推論に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:11 AM

August 21, 2014

『300<スリーハンドレッド>~帝国の進撃~』ノーム・ムーロ
常川拓也

前作『300<スリーハンドレッド>』(06、以下『300』)で最も特徴的だった点はその「男根」性である。スパルタ兵は皆白人であり、戦場に女は存在しない。レオニダス王(ジェラルド・バトラー)は軍隊のように命を賭けてスパルタ兵を統率する。『300』は反時代的なマチズモの映画であった(軍隊同士の盾を持ってのぶつかり合い、押し合いはアメリカのジョックスの象徴であるフットボールのようですらある)のに対し、監...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:06 AM

August 14, 2014

『ジョナスは2000年に25才になる』アラン・タネール
中村修七

 「ジョナスは2000年に25才になる」。そのように歌われて、妊娠を明らかにした女性は、これから生まれてくる男の子の名前の候補を幾つも挙げられた末に、テーブルを囲んでワインを飲み交わす知己の人々から祝福を受けることとなる。グラスに入っているワインの量が少なくなれば部屋の壁に寄りかかって佇む子供たちが大人たちに注いで回る、奇妙といえば奇妙に違いない状況で、酔っ払った大人たちが合唱するシーンが素晴らし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:03 AM

August 9, 2014

『消えた画 クメール・ルージュの真実』リティ・パニュ
中村修七

 リティ・パニュの映画は、不在をめぐる映画だ。彼の映画はいつも何らかの不在を抱え込んでいる。『さすらう者たちの地』(2000)では、被写体となる人々が敷設工事を行っている光ファイバーケーブルを利用することになる人々の姿が不在だった。あるいは、光ファイバーの敷設工事を行っている人々がそれらを利用して恩恵を蒙ることになる映像は、撮影されることがなく、失われたままだった。『S21 クメール・ルージュの虐...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:29 AM

July 28, 2014

『収容病棟』ワン・ビン
渡辺進也

 『収容病棟』に出てくる人々は昼だろうが夜だろうが通路をうろうろして、何の抑揚もない生活というか四六時中ほとんど変わらない生活をしているように思える。彼らがいるのは刑務所のように閉じ込められて外に出ることはできない場所で、しかも彼らは自分たちがその中にいる理由もよくわかっていない。彼らは病気だから収容されているということになっているが、収容されている理由も家族に迷惑をかけているとか、政治的な行動を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:09 PM

July 16, 2014

『エンリコ四世』マルコ・ベロッキオ
渡辺進也

 アストル・ピアソラの、うねってるというか弾けてるというか、スクリーン上で何ひとつ起こっていなくとも何か意味があるようにしか聞こえない、一言でいうとラテン風のドラクエみたいな音楽が流れている。その音楽をバックに車が林の中を進んでいく。  車に乗っているのは運転手の他に、精神科医風の男、後部座席には妙齢の女性とその彼女の愛人風な男。精神科医風の男は若い男が仮装した姿の写真を見ていて、その理由を質問し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:45 AM

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』ダグ・リーマン
渡辺進也

 2008年ぐらいに『ジャンパー』という映画があって、これは主人公が時空を飛び越える能力を持っていて、敵からその能力を使って逃げ切るというものだった。この映画で主に展開されるのは、(実際にはあったのかもしれないが)敵との戦闘シーンではなくて、ひたすら主人公が逃げるというものであって、その能力の発揮の仕方がハードルのように跳ぶと東京からエジプトというように瞬間移動するということもあり、ハードル競技を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:39 AM

July 3, 2014

『X‑MEN: フューチャー&パスト』ブライアン・シンガー
結城秀勇

「X‑MEN」シリーズが結局あまり好きになれないのは、プロフェッサーXが「導く」ところのミュータントと人間の共生が、つまるところミュータントだけの自律した世界(エグゼビア・スクール)をつくることに他ならないからだ。外部から隔絶した環境で、カッコつきの「マイノリティ」として認めてもらうこと。そこが本当にブライアン・シンガーの鼻持ちならないところで、かつて『スーパーマン・リターンズ』について書いたよう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:27 PM

May 21, 2014

『吉祥寺バウスシアター 映画から船出した映画館』@LAST BAUS
渡辺進也

 この本の後ろの方に「バウスシアター年間上映年表1984〜2014」という80頁の資料があって、バウシアターのオープンしてからのすべての上映作品が掲載されている。ぼんやりとこの資料を見ていると、僕が最初にバウスに行ったのは2001年5月の〈「降霊」劇場初公開記念・黒沢清監督特集〉が最初らしい。『地獄の警備員』とか『ワタナベ』とか見たなあと思う。  吉祥寺の近くに住んだことなどないから、僕がバウスシ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:44 PM

May 17, 2014

『ソウル・パワー』ジェフリー・レヴィ=ヒント@LAST BAUS
中村修七

1974年にザイール(現・コンゴ民主共和国)の首都キンシャサで、モハメド・アリ対ジョージ・フォアマンの世界ヘビー級王者決定戦が行われるのに先駆け、“ブラック・ウッドストック”とも呼ばれる音楽祭が、3日間に渡って開催された。 音楽祭に出演したのは、ソウル・グループのザ・スピナーズ、“ソウルの帝王”ジェイムズ・ブラウン、“ブルーズの神様”B.B.キング、“サルサの女王”セリア・クルースとファニア・オー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:52 PM

May 10, 2014

『ニール・ヤング/ジャーニーズ』ジョナサン・デミ@LAST BAUS
田中竜輔

自らの故郷トロント州オメミーを2011年の世界ツアーのファイナルに選んだニール・ヤング。このフィルムで私たちはギターを持ったその人の姿より先に、コンサート会場マッセイ・ホールへと、自らハンドルを握って車を走らせようとするニール・ヤングの横顔を見る。ニール・ヤングに(あるいは彼の車をマッセイ・ホールまで別の車で先導する実の兄に)導れるトロントの短い旅。車を運転しながらこの片田舎での思い出を語り続ける...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:56 AM

May 8, 2014

『ザ・シャウト/さまよえる幻響』イェジー・スコリモフスキ@LAST BAUS
隈元博樹

 穴のあいた缶詰をひっかく、グラスの淵を指でこする、タバコに火をつける……。あらゆる音源をダイナミックマイクで録音し、その振動音を電気信号に変えてミキシングするアンソニー(ジョン・ハート)に対し、クロスリー(アラン・ベイツ)がポツリと挑発する。「君の音は空疎だな」。どこか自信さえうかがえるその一言に、笑みを浮かべるのも無理はない。彼にはこの世の生物を一瞬にして殺めるための「叫び」があるのだから。 ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:56 PM

『プラットホーム』ジャ・ジャンクー@LAST BAUS
結城秀勇

『プラットホーム』はシネスコの映画だと、長らく勝手に思い込んでいたのだが、実際にはヴィスタサイズだった。あの、石造りの狭い室内を光が零れる開口部方向にカメラを向けて撮る、初期ジャ・ジャンクースタイルを決定的に特徴づける美しいショット群と初めて出会ったのはこの作品だったが、その小さな家から一歩足を踏み出せば、巨大な山々や霞む地平線などの広大な中国の大地がどこまでも広がっている、そんな印象を持っていた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:36 AM

May 3, 2014

『アメイジングスパイダーマン2』マーク・ウェブ
結城秀勇

スパイダーマンが他のマーヴェルヒーローやDCヒーローよりもスペクタクル的な理由として、彼が重力や慣性といった物理法則に拘束されているから、そしてそれを利用して運動のダイナミズムを生み出すからだというのは言を待たないだろう。その運動の快感はおそらく、球技において走り回るプレイヤーを置き去りにしつつ一瞬でゲーム全体の状況を一変させるボールの動きを見つめることに似ているのではないか。スタンドの向こうに消...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:33 PM

April 28, 2014

『闇をはらう呪文』ベン・リヴァース、ベン・ラッセル
結城秀勇

未明の湖上で、カメラはゆっくりと360°パンする。 レンズが南東側に向かうにつれてほのかな陽の光とともに画面は白んでゆき、また次第に黒みを帯びていき、やがて再び北西方向を指したときにはスクリーンの大半が闇に沈む。その闇のもっとも深い部分、フィルムがほとんどなににも感光せずに残ったはずのその場所で、灰白色の蠕虫に似たデジタルノイズがにぎやかに蠢きだす。光量の少なさが一定の閾値を越えて、情報の無として...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:46 PM

『ゴダール・ソシアリスム』ジャン=リュック・ゴダール@LAST BAUS
田中竜輔

たとえばジェームズ・キャメロンは『タイタニック』で、豪華客船を直立させる様子を圧倒的なスペクタクルとして私たちの目の前に映し出した。一方でジャン=リュック・ゴダールは、船ではなく「海」そのものをひとつの壁としてスクリーンに屹立させることを選ぶ。もちろん『ゴダール・ソシアリスム』の海は、その上に浮かぶ豪華客船に乗り込んでいた人々(=イメージ)を落とし込みなどしない。ゴダールがこのフィルムにおいて真に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:53 AM

April 22, 2014

『クローズEXPLODE』豊田利晃
渡辺進也

 くすんだねずみ色の中に灰のような白い塊がふわふわと舞っている。小さい男の子が母親に手を連れられて孤児院へと連れて入るときに降っているこの雪は冷たいとか、重いとか、そんなことは考える由もなく、ただただ乾いていて、軽い綿のように見える。そして、例えばこの雪は、この映画で後ほど出てくる、ふたりの男が殴り合いをする産業廃棄場に舞う綿ぼこりか何かとまるで同じもののように見える。この2つの場面の雪がほとんど...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:04 PM

April 13, 2014

『ダブリンの時計職人』ダラ・バーン
三浦 翔

 夕焼けの海辺の中でフレッド(コルム・ミーニイ)が見上げるのは、落書きをされた彼の車がいきなりクレーンで廃棄にされるという光景だ。ダラ・バーンという監督はもともとドキュメンタリーの監督だと聞いていたものだから、いかにも嘘っぽく見えるこの始まりには、正直戸惑ってしまった。ただそんなことは私の勝手な思い込みに過ぎない。時には幻想的な光を帯びるアイルランドの自然や街のなかでユーモアを炸裂させながら、どの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:25 PM

『チトー・オン・アイス』マックス・アンダーソン&ヘレナ・アホネン
隈元博樹

 カメラによって切り取られた現実のドキュメントと、カメラによって切り取られた現実のストップモーション。現実のドキュメントとは旧ユーゴスラビア以降の国々の現在やその記憶を語る人々の証言であり、ストップモーションとはその現実をもとに100パーセントの再生紙によってデフォルメされたモノクロ映像のことを指している。  ふたつの世界をマックス、ラースとともに媒介していくのは、スウェーデンから旧ユーゴへと向か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:22 PM

April 10, 2014

『悪魔の起源 -ジン-』トビー・フーパー
結城秀勇

霧が怖いのは、たんによく見えないからではなくて、見通せない状況と見通せる状況の間にあるはずの境目、閾値がどこにあるのかわからないからなのではないか。くっきりと見えているものがだんだん遠ざかるにつれて、細部がぼやけ、シルエットだけがかろうじて判別できる状態になり、やがてなにも見えなくなる。澄んだ空気のもとであれば長大な距離を経て表れるそうしたプロセスが、極濃の霧の中では極限まで圧縮され、たった一歩の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:49 AM

April 1, 2014

『それでも夜は明ける』スティーヴ・マックィーン
渡辺進也

 最初に、まるでこれから起こることをダイジェストで示すように一連の様子が描かれる。サトウキビの収穫の仕方を教えられ、金属の皿に載せられた食事を素手で掴み、木の実からインクを作ろうとして失敗し、夜中横に寝る女奴隷に誘われる。そこにあるのは、陥ってしまったことに対してどうしようもないあきらめの表情なのか、それともうまくいかないことへのいらだちなのか。  『それでも夜は明ける』の原題は、’12YEARS...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:39 PM

March 14, 2014

『アメリカン・スリープオーバー』デヴィッド・ロバート・ミッチェル
高木佑介

 何か突飛なことをするには遅すぎる、でもこのまま終わってしまうのはつまらない。若さを無邪気に謳歌したいわけでも、少し背伸びして大人の気分を味わいたいわけでもない。夏の終わりの空気とともに揺らぐティーンエイジャーたちの、そんな感情。すぐに終わりが訪れることなど言われなくともわかっている、楽しくもありどこかもどかしくもあるその時間。実際にあるのかどうかもわからぬそのような一時期を迎えつつある人々のあり...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:34 PM

March 8, 2014

『パリ、ただよう花』ロウ・イエ
三浦 翔

 この映画の後半に、印象的な場面がある。中国の知識人による、インタビューの場面だ。「中国では共同で見る幻想として映画があります。そうではなく、私たちが求める本当の映画とは悪夢のことなのです」この知識人とは、いわゆるロウ・イエの生き写しであるわけだが、中国政府に5年間の制作を禁じられた彼は、いまどのようにして、「映画」を撮り続けようとしているのか、そして彼の答えにある悪夢とはいったい何のことなのだろ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:54 AM

『息を殺して』五十嵐耕平
田中竜輔

2017年の12月30日から2018年1月1日にかけてのとある清掃工場での出来事。未来と呼ぶには近過ぎて、現在と呼ぶには遠過ぎる、そのような『息を殺して』の時代設定とはいったい何なのだろう。このフィルムの登場人物たちは、どうやら自衛隊が「国防軍」と名前を変え、若い人々が戦地で命を落とすことが決して珍しい出来事でなくなった時代を生きているようだ。しかし一方で、彼らは2014年と同じような機種のスマー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:42 AM

March 4, 2014

『お気づきだっただろうか?』core of bells
徳永綸

「『怪物さんと退屈くんの12ヵ月』は降霊術と極めてよく似ています。」 公演フライヤーの裏にはそう書いてあった。core of bells――バンドという形態でありながらも、映画制作、ワークショップ、お泊りキャンプ、ホルモン屋などなど活動の範囲を自由に設定する彼ら(HPプロフィール欄参照)は、今年いっぱい、毎月一回ずつ舞台に立つらしい。それがこの「怪物さんと退屈くんの12ヵ月」という企画であり、その...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:03 PM

February 23, 2014

『ワンダー・フル!!』水江未来
隈元博樹

作品は本来「work」と呼ばれ、なした仕事が積もり積もれば「works」となる。だから作品を作ることが仕事である以上、作家は労働者であり、作品を作り続けることが労働の集積となる。いっぽう仕事は「job」とも言い換えられるのかもしれない。だけど「仕事をしろ」「定職に就けよ」と日々のなかで口酸っぱく言われてやってしまうものが「job」ならば、能動性を孕んだ労働こそが「work=作品」であり、やっぱり作...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:56 PM

『ハロー、スーパーノヴァ』 今野裕一郎
汐田海平

北千住を拠点とし、演劇・映画・写真等ジャンルを横断しながら、独創的な作品を生み出しているユニット・バストリオ主宰の今野裕一郎。彼が様々な手法を通して表現し続けるものは「日常」であると同時に、「寓話」でもある。   バストリオは今冬、東京を中心に、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアでもツアーを行うエレクトロ・アコースティックユニットminamoとのコラボレーションでも注目された『100万回』の公演...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:06 PM

February 22, 2014

『ラッシュ/プライドと友情』ロン・ハワード
結城秀勇

このストレートに痛快な作品をストレートに痛快だと言おうと思って書き始めたのだがどうもうまくいかない。男がふたりいる、マシンが二台ある、そのどちらかが世界一。それでおもしろくないわけないだろ、ごちゃごちゃ言うな、ってな具合にいけばよかったのだが。そもそも『ラッシュ/プライドと友情』の痛快さはそれほどストレートなものではないのかもしれない。 というのも私の思い違いでなければ『ラッシュ』は、ドイツGP当...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:09 PM

February 13, 2014

『祖谷物語-おくのひと-』蔦哲一朗
隈元博樹

35ミリのシネスコで捉えられた「祖谷(いや)」とは、40近くの山村集落からなる祖谷山地方の通称である。現在は徳島県三好市に合併された限界集落であり、かつて屋島の戦いに敗れた平氏の残党たちが、平家復古の望みをつなぎつつ、身を潜めて暮らした場所でもあるらしい。『祖谷物語-おくのひと-』とはそうした平家伝説の諸説しかり、いわゆる「秘境の地」と呼ばれる特別なロケーションのもとで撮影されたフィルムだ。 残念...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:33 AM

January 28, 2014

『Dressing Up』安川有果
松井宏

 そのプリンセスは自分の血に呪いがかけられていることに気づく。いまはもういない母がかつて患っていたなにかを、自分もまた受け継いでいるのだと。母は自分のなかにあるそれに耐えられず自殺したのだろうか? わからない。だがとにかくそのなにかが、呪いが、自分の身体のなかを流れていることは確かだ。いや、その少女は自らのそんな血に気づいた瞬間から、プリンセスとなるのだった。おぞましさと気高さが彼女のなかでひとつ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:27 PM

January 14, 2014

最高の映画作家、ジャン・グレミヨン
ステファン・ドゥロルム

第17回「カイエ・デュ・シネマ週間」ジャン・グレミヨン特集:2014年1月17日(金)~2月2日(日)フランス新世代監督特集:2014年2月14日(金)~2月16日(日)@アンスティチュ・フランセ東京 ジャン・グレミヨンの著作や言葉を出版することは、 彼が映画の伝道師であり、理論家であったことを明らかにするだろう  呪われるとはどういうことなのか? それは自分のことについて他のいかなる言い換えも不...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:09 AM

January 7, 2014

『A touch of sin』ジャ・ジャンクー
増田景子

ジャ・ジャンクーは「世界」を描こうとしている。それは世界名所を寄せ集めた「世界」を舞台にした『世界』だけに限らず、ノイズを編集し、記憶を再構成することで「ある物語」だけではなく、その物語が置かれている土台の「世界」までもカメラに収めてきた。2013年の新作『A touch of sin』では、新聞の三面記事から着想を得たという、中国各地で起きた貧困をめぐる大なり小なりの4つの犯罪を描く。 驚くべき...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:37 AM

December 10, 2013

『あすなろ参上!』真利子哲也
結城秀勇

愛媛県松山のご当地アイドル「ひめキュンフルーツ缶」と愛媛のゆるキャラたちを起用し全編松山ロケにて製作された『あすなろ参上!』という全6話のドラマを見た素朴な感想は、松山ってほんとにいいとこそうだな、ということである。 その「いいとこ」そうな感じはどこからきたものなのか。一話目のオープニングを彩る『坂の上の雲』的な雰囲気の映像からくる、歴史ある街な感じかといえば、そうでもあるがそれだけではない。梅...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:24 PM

November 27, 2013

『フラッシュバックメモリーズ 4D』松江哲明+GOMA&The Jungle Rhythm Section@立川シネマ・ツー
田中竜輔

『フラッシュバックメモリーズ 3D』は見逃してしまっていた。だから『フラッシュバックメモリーズ 4D』が、3Dヴァージョンからどう変化したものなのかということは(特に音響の側面において)言えない。けれども今のところ二夜限りのこの「作品」に圧倒され、そして感動した。なぜなのだろう。まだ全然まとまっていない考えを、ひとまず言葉にしてみようと思う。ここには、現在の映画をめぐっての、そして現代の上映をめぐ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:07 PM

November 25, 2013

『悪の法則』リドリー・スコット
高木佑介

 もちろん、『ノーカントリー』(07)をすでに見ている者としては、リドリー・スコットの手によるこのコーマック・マッカーシー脚本の映画に少し物足りなさを感じもするが、それでもとても面白く見た。麻薬ビジネスに足を踏み入れた野心溢れる弁護士=カウンセラー(マイケル・ファスベンダー)の転落と、彼が支払うその代償。この物語は、たしかに色気あるさまざまな登場人物たちが交錯するものの、ほぼそれだけしか語っていな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:26 AM

November 21, 2013

ALC CINEMA vol.4 『やくたたず』三宅唱
隈元博樹

青春映画に流れる時間には、絶えず終焉の影が潜んでいる。徴兵を間近に控えた若者たち、ひと夏のバカンスがもたらす出会いと別れ、結婚や葬儀による通過儀礼もそのひとつだろう。その必要不可欠な「終焉=リミット」とは、時代とともにさまざまな方法で語り継がれてきた。もちろんそれは、若者時分のものだけではない。老若は関係なしに、青春は己の記憶として生き続けていく。 作り手が青春映画というジャンルを選ぶならば、「終...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:57 PM

November 6, 2013

『眠れる美女』マルコ・ベロッキオ
隈元博樹

たがいに交わり合うことのない3つのマリアの物語は、テレビに映る植物状態のエルアーナ・エングラーロとつねに伴走している。昏睡状態の妻を安楽死させたウリアーノ(トニ・セルヴィッロ)とその娘マリア(アルバ・ロルヴァケル)、かつて舞台女優だったディビナ(イザベル・ユペール)、そして医師のパッリド(ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ)と名もなき精神疾患者ロッサ(マヤ・サンサ)。彼らはエルアーナの尊厳死を巡る2...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:41 PM

October 30, 2013

『華麗なるギャツビー』バズ・ラーマン
結城秀勇

「アメリカでは身元不明の死体を「ジョン・ドー」と呼ぶが、身元不明の生者を「ジェイ」と呼ぶのかもしれない」。そう樋口泰人は爆音収穫祭で上映の『マーヴェリックス』について書いたが、未見だったもうひとつの「ジェイ」の物語を見る。しかも音楽と製作にはJay-Zが名を連ねている! それにしても、ジェイ・ギャツビーほど、「身元不明の生者」と呼ぶにふさわしい者はあるまい。ドイツの皇帝のいとことも暗殺者だとも噂さ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:29 PM

October 20, 2013

『ウルヴァリン:SAMURAI』ジェームズ・マンゴールド
高木佑介

 公開から時間が経ってしまい、遅きに失してしまったが、このジェームズ・マンゴールドの最新作について、と言うよりも、思い返してみれば何故か全作品に付き合ってしまっている「X-MEN」シリーズについて主に。  ブライアン・シンガーらが手掛けた本筋の「X-MEN」三部作はまったく面白くなかったのにも関わらず、そこからスピンオフした『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(09、ギャビン・フッド)、その後に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:05 AM

September 24, 2013

『映像の歴史哲学』多木浩二 /今福龍太編
長島明夫

 多木浩二が2011年4月に82歳で亡くなった後、多木に関連する本がいくつか出版された。1991年刊行の磯崎新との対談集『世紀末の思想と建築』の復刊(岩波人文書セレクション、2011.11)もそのひとつに数えられるかもしれないが、新刊の著作としては、2007年の講演をまとめた『トリノ──夢とカタストロフィーの彼方へ』(多木陽介監修、BEARLIN、2012.9)と、主に1970年代の建築やデザイン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:32 PM

『祭の馬』松林要樹
結城秀勇

『花と兵隊』という映画を見た誰もが抱く感想なのではないかと思うのだが、私もまた多分に漏れず、この映画からビルマ・タイ国境にとどまった旧日本軍兵士の数奇な運命などといったことを考える以前に、まず真っ先に「みんな奥さんがとんでもなくカワイイな」と思ったのだった。それとほとんど同じレベルで、『祭の馬』の冒頭10分間ずっと思っていたのは、映る馬のどれもがみな美しい顔をしているということだ。彼らは震災によっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:39 PM

September 9, 2013

『La Jalousie(嫉妬)』フィリップ・ガレル
槻舘南菜子

ほぼ2年の歳月をかけていた企画――前作『灼熱の肌』(11)と同様、イタリア、チネチッタを舞台とし、モニカ・ベルッチ、ルイ・ガレル、ミシェル・ピコリ、ローラ・スメットを迎え、映画撮影と現実が交錯していくような作品となる予定だった――が頓挫した後、ほんの数ヶ月で書かれたシナリオと3週間の撮影。フィリップ・ガレル自らもっとも「無意識」に近い映画と称する『La Jalousie』のモノクロ、シネマスコー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:33 PM

August 30, 2013

『スター・トレック イントゥ・ダークネス』J.J.エイブラムス
結城秀勇

もはや船長というよりただの上陸部隊の隊長じゃないか、という感じのUSSエンタープライズ号の艦長ジム・カークは、登場シーンからすでにとある惑星の原住民に追われている。その作戦の実行の際に絶体絶命の危機に陥ったミスター・スポックの命を救うため、現地の住民の文化に干渉すべからず、という規則を破り、カークは住民たちにエンタープライズの姿を見せながらもスポックの命を救う。そして助けたスポックからは規則を破っ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:45 AM

August 28, 2013

『不気味なものの肌に触れる』濱口竜介
結城秀勇

キャストの名前が表示されていくのと平行して繰り広げられる、染谷将太と石田法嗣のふたりによるダンスで、この作品は幕を開ける。手のひらや腕が相手の体に触れるか触れないかの距離をとるのにあわせて、ふたりの体幹の位置関係が変わっていき、石田が染谷に振れてしまうことで、そのダンスは中断される。もちろん「触れるか触れないかの距離」と書いたのは修辞に過ぎなくて、距離があるというからには触れてはいない。言ってみれ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:54 PM

August 14, 2013

『スプリング・ブレイカーズ』ハーモニー・コリン
結城秀勇

スプリングはおろかサマーも半ば終わったというのにやっと『スプリング・ブレイカーズ』を見た。最高だった。 だいたい、おれは大学生が嫌いだ。中学や高校には、学校になんか微塵も来たくもないけどサボって遊びに行く場所もそうそうねえから仕方なく来て、この平板な時間をいかにしてやり過ごすか考えてるヤツらがいて、そういうのとは仲良くなれる。でも大学になるとそういうヤツらは本当に学校にこなくなるから、学校にいるの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:54 PM

July 10, 2013

『3人のアンヌ』ホン・サンス
隈元博樹

『3人のアンヌ』は映画学校に通うウォンジュ(チョン・ユミ)が、短編のシナリオを書くことからはじまる。だけど彼女が黄色い小さなメモ用紙に書くシナリオは、映画学校の課題でもなければ、プロデューサーを説得するものでもない。借金取りから逃れるために、彼女は民俗学者の母(パク・スク)と海辺の街モハンへ逃れてきたらしく、シナリオを書きはじめたのは、このことに対する腹いせだという。「それでこの映画ははじまってし...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:23 AM

June 23, 2013

『遭難者』(仮)『女っ気なし』(仮) ギョーム・ブラック
代田愛実

パリの友人の評判通り、とても面白い作品だった。個性があり、次の作品も見たいという欲求に駆られる監督の発見に、胸を躍らせた。 撮影された土地への愛着、友人を起用したキャスティング、撮影時ちょうど孤独を感じる時期だったという監督、季節や時間帯で変化する光と、脚本に書かれていない役者の突発的なアクションを大切にする姿勢・・・それら全てがこの2作品で成功している。時間を長く取る/切り取るといった配分が絶妙...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:28 PM

June 14, 2013

『女っ気なし』ギヨーム・ブラック
増田景子

「この男、まじで女っ気ないな」と確信したのは、食べ方からだった。ふたについたアイスクリームまできちんと指でなめ、いちごに見えなくなるほどスプレークリームをかけたその上にざらめをかけて食べる。どうやら彼に気があるような若い女性も、そのいちごの食べ方を前に「いつもそんな風に食べているの?」と一瞬引いていた。こんながりがりと音を立てて(ざらめのせいだ)いちごを食べるような奴が女にもてるわけがない。「女っ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:11 AM

May 19, 2013

『グッバイ・ファーストラブ』ミア・ハンセン=ラブ
代田愛実

 前半に展開される若い2人の恋愛事情の描写は、監督が女性だからなのだろうか、女の私に取っては、いささか凡庸に映った。ロメールであれば、トリュフォーであれば、もう少し女性に対する"あこがれ"の視点が介入するであろう——女という生き物の、そばにいても手の届かないミステリアスな部分や、理解に苦しむ奔放な姿が描かれたであろう——、だからこそ、観ている者をときめかせたるのだが、このクリシェのような、凡庸さは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:25 PM

May 18, 2013

『コズモポリス』デイヴィッド・クローネンバーグ
代田愛実

 2台のリムジンがカンヌを湧かせていたのは、ちょうど1年前の今頃のことだろう。『ホーリー・モーターズ』と『コズモポリス』。レオス・カラックスとデビッド・クローネンバーグの、全く似ていないような2人の監督の奇妙な共通項にとても驚かされた。  同名小説をたった6日間で脚本化したというし、台詞はほぼ原作通りだというから、サマンサ・モートンが発する散文詩のような魅惑的な言葉についてもここでは言及する必要は...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:30 PM

May 2, 2013

ベン・リヴァース インタビュー

location.href="/interview/benrivers/"; 今年の2月に開催された第5回恵比寿映像祭(http://www.yebizo.com/)での、ベン・リヴァース『湖畔の2年間』との出会いは本当に幸福なものだった。森と雪と湖に囲まれた中で暮らすひとりの初老の男性を見つめる90分間。16mmの粒子とコントラストが織りなす映像、そこに被さる音。それらはかつて経験したことのない...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:46 AM

April 23, 2013

『グッバイ・ファーストラブ』ミア・ハンセン=ラブ
中村修吾

 ノースリーブのワンピースを着た女性が、麦わら帽子を被り、木の杖を手に持ち、木々の葉や草の美しい緑に囲まれた道を歩いている。傍らには誰もおらず、彼女はひとりで川へと向かっている。あたりの風景には、空から南仏の明るい陽光が降り注いでいる。  自転車での走行や街中での歩行や部屋の中での移動といった、フレームの中の空間を動く人物を捉えたショットが多いミア・ハンセン=ラブの『グッバイ・ファーストラブ』にお...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:03 AM

April 15, 2013

『小さな仕立屋』ルイ・ガレル
結城秀勇

この映画の、コントラストの強い白黒で映し出されたパリとそこにいる男女の姿に、父フィリップの影響を見るのはたやすい。テイラーとしての師匠である、二世代は離れた老人と向き合う主人公アルチュールの顔に、『恋人たちの失われた革命』で故モーリス・ガレルとテーブルを挟んで対峙していたルイの面影が重なる。しかしこの作品全体からより強く感じるのは、高名な映画監督を父に持った青年が先天的に継承した演出の遺伝子とい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:41 PM

ALC CINEMA vol.2 『PASSION』濱口竜介
増田景子

ALC CINEMAが催されたのは、建築・アート関係の書物が天井近くまで並べられた横浜吉田町のArchiship Library&Caféで、木枠できちんとゾーニングされているため圧迫感はないが、40人座ればいっぱいになってしまう小さなスペースである。2階が建築事務所でもあるこの場所で「映画」「場所の記憶」「そして、これから」を再考しようというALC CINEMAが第2回目の作品として選んだのは濱...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:40 PM

April 11, 2013

『ホーリー・モーターズ』レオス・カラックス
増田景子

かつて見た映画がある時、自分の日常にすっと寄り添ってくることがある。 初めてリアルタイムで見られるレオス・カラックスの新作、そして監督の来日とお祭り騒ぎの熱狂のなか、午前中に日仏(現アンスティチュ・フランセ東京)で行われた廣瀬純さんの映画講義(スペシャルゲストにカラックス!)を受け、そこから渋谷に移動してユーロスペースでの日本初上映を立見席で見たのは、まだ息の白かった1月末だった。 その時は霊柩車...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:50 PM

March 30, 2013

『オデット』ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
田中竜輔

 『オデット』は、ペドロというひとりの同性愛者の男の死を契機に、彼の恋人であるルイという男、そして同じアパートの住人であっただけのつながりしか持たない、恋人と別れたばかりのオデットという女を出会わせる。ひとりの男の死を決定的な喪失として生きる男と、一方でその死を自らの妊娠願望を叶えるための新たな出会いとして利用する女。二重の身体という映画の原初的な欲望を原動力とするこのフィルムは、当然のことながら...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:31 AM

March 23, 2013

『あれから』篠崎誠
結城秀勇

かつて安井豊作が語ったという「黒沢清のカタカナタイトル問題」を、いろんな人経由で聞いた。本人からは聞いていないので正確にどういう問題提起だったのかはわからないのだが、それを聞かせてくれた人たちの意見を捨象すると、黒沢清の映画にはカタカナのタイトル、それもおそらく他の監督ならカタカナにしないような言葉のタイトルがあり、それらにはなんらかの共通性がある、ということだった。これに倣ってもし「○○の漢字...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:18 AM

March 17, 2013

東横線渋谷ターミナル駅
藤原徹平

3月16日から、副都心線と東横線が相互乗り入れし、東武東上線~副都心線~東横線~みなとみらい線が一つにつながった。これで気持ちよく泥酔すれば埼玉県・川越から東京を縦断して横浜・元町中華街まで寝過ごすことが可能になったわけだ。僕は1975年生だが記憶している限り、横浜駅はずっと昔から工事中で、つい先日駅ビルを見上げてみたら半分くらいなくなっていることに気が付いた。詳しい人に聞いてみれば全部解体して...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:08 AM

February 27, 2013

「週刊金曜日」2013年2/22号
結城秀勇

人間は悲しいものだ。希望の少ない人ほど善人だ。正確な引用ではないが、先日見たフレデリック・ワイズマンの『最後の手紙』にそんな言葉があった。ワシリー・グロスマンの『人生と運命』中の一章を戯曲化したものを、主演女優のカトリーヌ・サミーのためにワイズマン自身が脚色した一人舞台。サミー演じるアナ・セミノワはユダヤ人収容所の中で、希望を抱く人間ほど利己的になり、生存本能の奴隷となっていくさまを見る。医者で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:24 PM

February 14, 2013

『アウトロー』クリストファー・マッカリー
高木佑介

 この映画によってトム・クルーズは現代のシャーロック・ホームズになった。と、見終わったあとにさまざまな手続きを省略して秘かに呟きたくなるような作品、それがこの『アウトロー』である。  元軍のエリート捜査官で今はアメリカ各地を放浪とする謎の人物ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)が、数奇な縁あって無差別殺人事件の容疑者からの要請で捜査に乗り出し、(いろいろ問題はあったけれど)見事この壮大な陰謀事件...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:24 PM

February 8, 2013

『湖畔の2年間』ベン・リヴァース
結城秀勇

人気のない森に降り積もった雪。その中を歩いて行く男の後ろ姿。それを形作る白黒の粒子、不規則に変化する影のグラデーション。16mmで撮影(そしておそらく監督自身の手で自家現像)されさらに35mmにブローアップされた映像は、粒子の大きさやノイズの乗り方にも関わらず、紛れもなく美しい。もちろんその美しさとは、解像度や輝度や鮮明さといった、いつしか映像の美しさを語るのにあたかも必要不可欠なもののように振...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:49 PM

February 6, 2013

『あなたはまだ何も見ていない』アラン・レネ
梅本洋一

 この作品の幾重にも折り重なった豊饒さを書き記すにはかなりの字数が必要だろう。かつての和田誠の書物のタイトルにもなった『お楽しみはこれからだ』という『ジャズ・シンガー』の台詞You ain’t seen nothing yetからタイトルを借りたこのフィルムの豊饒さを一端でも語ろうとすれば、オルフェウスとエウリディケの神話のように、ぼくらも冥界への長い旅に出なければならない。  ジャン・アヌイの『...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:39 PM

January 30, 2013

『コックファイター』モンテ・ヘルマン
結城秀勇

『カリフォルニア・ドールズ』のピーター・フォーク、『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』のベン・ギャザラ、あるいはもっと時代をくだって『さすらいの女神たち』のマチュー・アマルリック。彼らが演じた役柄に対する愛着をどうしても抑えきれない。女子プロレスのマネージャー、ストリップバーのディレクター、バーレスク劇団のプロデューサー、といった彼らの役柄は、つまるところ女たちを喰い物にしているのだし、その免罪...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:01 PM

『ホーリー・モーターズ』レオス・カラックス
隈元博樹

目の前に映る登場人物たちに、僕たちはそれぞれの行動原理や動機を求めたがる。登場人物の頭に、必ず「なぜ、どのようにして」といった簡単な疑問詞を投げかけるのだ。行動原理や動機が説得される場面に出くわすと、僕たちはそのフィルムの浄化作用(=カタルシス)に触れ、ポンと膝を打ったように満足感を覚える。だけどカタルシスは時に迂回し、見え隠れするものだ。そう最初からたやすく目の前に現れてくるものでもない。一度全...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:21 AM

November 3, 2012

『5windows』劇場用編集版と、円山町篇
代田愛実

『5windows』劇場用編集版 何度も繰り返される「ニジゴジュップン」という声(=音)と、ピっという電子音とともに表示される「14:50」。 ニジゴジュップンとはある時刻を指す。あるいは、60秒間の時間を指す。あるいは、14:50ごろ、という曖昧な時刻と曖昧な長さの時間を指す。 いったいどのニジゴジュップンが正解なのか?という問いが立つかもしれないが、答えは、「どれも正解」。 "14:50"ある...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:17 PM

October 28, 2012

【TIFF2012】映画祭後半レポート
代田愛実

10月25日−26日、鑑賞作品〈コンペティション部門〉『イエロー』(ニック・カサヴェテス/アメリカ)〈日本映画・ある視点部門〉『少女と夏の終わり』(石山友美)〈ワールドシネマ〉『5月の後』(オリヴィエ・アサイヤス)『ヒア・アンド・ゼア』(アントニオ・メンデス・エスパルザ)『眠れる美女』(マルコ・ベロッキオ)前半に比べて明らかに鑑賞本数が減ってしまった。25日の最後に観た『5月の後』が、あまりにも大...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:41 AM

October 26, 2012

『ミステリーズ 運命のリスボン』ラウル・ルイス
結城秀勇

パンフレットに掲載のインタヴューで、ラウル・ルイスは次のように語っている。「連続ドラマは、全てを消化することのできる優れた肝臓を持つ生物である」。この作品はラウル・ルイスという映画史でも有数の巨大な肝臓をもつ監督の持つ消化力が遺憾なく発揮された作品であり、同時に観客の肝臓を信頼した「ひらめき」に満ちた作品となっている。壮大で優雅であると同時にどこか胡散臭くもありそこがまた魅力であるという、ルイス...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:14 PM

October 25, 2012

【TIFF2012】前半レポート
代田愛実

10月22日−24日、鑑賞作品 〈コンペティション部門〉『風水』(ワン・ジン/中国)『ティモール島アタンブア39℃』(リリ・リザ/インドネシア)『アクセッション ― 増殖』(マイケル・J・リックス/南アフリカ)『シージャック』(トビアス・リンホルム/デンマーク)『黒い四角』(奥原浩志/日本)『NO』(パブロ・ラライン/チリ=アメリカ)『未熟な犯罪者』(カン・イグァン/韓国)『もうひとりの息子』(ロ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:11 AM

【TIFF2012】レポートvol.02 10月22日(月)
増田景子

この日は当日券の列に並ぶところから始まった。お目当ては在仏カンボジア人の若い監督の撮った『ゴールデン・スランバーズ』(監督:ダヴィ・チュウ)。ポル・ポト政権前の幻のカンボジア映画全盛期といってもピンとこないが、見た人は誰もがおもしろいと口を揃えて言うこの映画のために朝から並んだのだ。座席指定やチケット発券で時間がかかっているのだろう、新しい映画史との出会いに胸をふくらましつつも、列の進みの遅さに業...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:05 AM

October 23, 2012

『ゴールデン・スランバーズ』ダヴィ・チュウ
結城秀勇

 1960年代から70年代前半にかけて、東南アジアを代表する映画の都であったプノンペン。だがポル・ポト政権によって、産業としての映画は完全に崩壊し、またフィルム自体の圧倒的多数が消失した。本作品はそれらの失われた映像を巡るドキュメンタリーである。黄金期の映画を直接的に記録するはずのフィルムは失われており、したがって作品中に引用される映画のシーンはごくごく限られたものである。その代わりに、その時代に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:42 PM

TIFF2012に寄せて
代田愛実

第25回東京国際映画祭が始まっている。 昨日は東京国際映画祭にてコンペ作品4本、ある視点部門1本を鑑賞した。 コンペは中国、インドネシア、南アフリカ、デンマークと国際色豊か。どの作品もある個人の日常を追う事で背景となる国や社会を映し出そうとする企画意図があるようだが、個人的キャラクターの掘り下げ不足によって、結局は個人的な物語にまとめてしまっている感があった。どの主人公にも辛い状況が次々と襲ってく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:00 AM

October 22, 2012

【TIFF2012】レポートvol.01 10月21日(日)
増田景子

今日はインドの右に始まり、左で終わった1日であった。 午前中はザ・ボリウッド映画の『火の道』(監督:カラン・マルホートラー)を見る。どうやら最近インドもシネコン化が進み、回転のいい2時間ものが増えているらしいのだが、この映画はそんな波に抗いながらの167分。もちろんアクションも歌もダンスも盛りだくさん。しかしボリウッドをあなどってはいけない。ハリウッド映画に比べ、ボリウッドの方が昔堅気な職人気質な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:29 AM

October 3, 2012

『バビロン2―THE OZAWA―』相澤虎之助
高木佑介

 東南アジアをバックパッカー旅行していたという監督の相澤虎之助は、自分や欧米人がビーチで能天気に遊んでいるこの旅には何か欠けている、それは恐らく「歴史」だと思い至り、『花物語バビロン』(97)から始まるこの「バビロンシリーズ」を構想したという。 「なぜなら歴史とは列強国の植民地支配の歴史であり、その基で経済と文化の交流が行われていることを意味するからです。過去を忘れ未来に向けて意識を覚醒しようとも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:28 AM

September 20, 2012

『蜃気楼』製作報告イベント『今、僕は』竹馬靖具
増田景子

竹馬靖具監督の最新作『蜃気楼』の製作報告イベントに行ってきた。しかし『蜃気楼』の撮影は現在7分の1しか終わっておらず、今回のイベントでは前作の『今、僕は』(09)と数分の『蜃気楼』の特報の上映、そしてゲストによるトークショーが行われた。なので『蜃気楼』についてふれる前に、『今、僕は』の話をさせてもらう。  『今、僕は』はとてつもなく閉鎖的な映画だ。主人公は20歳の引きこもり青年。部屋にはゲームや漫...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:54 AM

September 13, 2012

『適切な距離』大江崇充
隈元博樹

映画における現実と虚構とのはざまのなかで、虚構が現実へと歩み寄っていく時間を思い起こしてみることがある。たとえば古参の隠遁画家が、新参画家の恋人である女性とのやりとりを通じ、その豊満な裸体を精緻に描いていくあの時間(リヴェットの『美しき諍い女』)や、舞台と私生活とのはざまを往来する老名優の時間(オリヴェイラの『家路』)など、映画には何にも代えがたい奇妙なひとときが存在する。挙げればキリがないけれど...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:46 PM

August 10, 2012

『親密さ』濱口竜介
結城秀勇

 当然だが、電車が走る線路というものは平行して進むふたつの線からできている。この映画のタイトルである「親密さ」とはその線路みたいなものなのではなかろうか。ふたつの長い長い線を、どこまでも離れず同じ距離で寄り添って走るものだとみなすのか、それともどこまで行っても決して交わらないものだと見るのか。それだけが親密さを巡って問われる唯一の事柄なのであって、そのことに比べれば実際にふたつの線の間にある距離な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:18 PM

August 3, 2012

『アメイジング・スパイダーマン』マーク・ウェブ
結城秀勇

おそらく前シリーズと『アメイジング〜』との最大の違いは、ピーター・パーカーの父の存在だ。いや前シリーズだけでなく、幾度となく繰り返されてきたスパイダーマンのリメイクにおいて、これほどまでに父親の存在がクロースアップされたスパイダーマンはないだろう。たとえばサム・ライミ版では彼はあらかじめ孤児なのであって、そのことを改めて思い出させるかのように伯父は死ぬ。ピーターに力を与えるクモにしたって、ほとん...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:12 PM

July 18, 2012

『愛の残像』フィリップ・ガレル
高木佑介

 恋人との結婚を間近に控えているフランソワ(ルイ・ガレル)は、1年前に彼が捨てたことで死んでしまった元恋人・キャロル(ローラ・スメット)の幻影を見るようになる。「あなたが愛したのは私だけ。あなたは今の人生に飽きている。だから私のほうに来なさい……」。鏡の中のキャロルからの問いかけに対し、はじめは自分に言い聞かせるかのように今の恋人エヴ(クレマンティーヌ・ポワダツ)への愛を口にしていたフランソワも、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:52 AM

July 12, 2012

『5 windows 吉祥寺remix』
安田和高

 Cinema de Nomad「漂流する映画館」。それは街全体を映画館に変えてしまう試み。『5 windows』は、5つの空間と、5つの物語を、観客それぞれが街を漂流しながら体験するというもので、昨年の10月にシネマ・ジャック&ベティを起点としてロケ地である黄金町界隈で上映された。じっさいにスクリーンで見た風景のなかを歩き、同じように空を見あげ、同じように「緑色に濁った川」の匂いを嗅ぎ、同じよう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:50 AM

July 5, 2012

『バビロン2ーthe OZAWAー』相澤虎之助
結城秀勇

「旅行なんてなあ、結局誰かが占領したり侵略したところに行くだけなんだよ」、そんなようなことを伊藤仁演じる古神は言う。だからだろうか、この映画のあらゆる映像や音や言葉は、○○の後に映し出され、鳴り響いているように感じた。映画における映像や音は本質的に現実より先には起こらない、というような原理的な言説としてではなくて、もっと経験的な考察として、たとえば旅行者として踏みしめているこの地面は、侵略者や征...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:19 AM

June 26, 2012

ユーロ2012──(3)クォーターファイナル
梅本洋一

 結局まったく予想通りの4チームが残った。ポルトガル対チェコも、ドイツ対ギリシャもアップセットがなかった。スペインが順当に勝利し、イタリアがしぶとく残った。  4ゲームのうち最低だったのが、スペイン対フランス。ローラン・ブランのレブルーは、前半を0-0で終えるつもりだったのだろうが、シャビ・アロンソの一発でそのゲームプランが狂うと、ほとんど無抵抗。外していたナスリを入れたりしたが停滞したゲームに変...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:10 AM

June 25, 2012

小出豊『綱渡り』ほか
結城秀勇

小出豊の作品には必ずDVが存在する。それは彼の監督作だけではなく、『県境』や佐藤央『MISSING』といった他監督への脚本提供作にも必ずある。 ここでまず付け加えなければならないのは、もちろんDVの定義などではなく、また一ぬ見してそれとわかる具体的なアクションとして記録されたヴァイオレンス=Vのありようですらなく、なにはさておき彼の作品におけるドメスティック=Dの重要性なのだ。鋭利なVよりも、内部...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:15 AM

June 22, 2012

ユーロ2012──(2) グループリーグ総括
梅本洋一

 もう明日の明け方から準々決勝だ。結局アップセットはなかった。チェコ対ポルトガル、ドイツ対ギリシャとだいたい見るまえから勝負がついている──もちろん、ゲームだから何が起こるか分からないのだが、こういうゲームは、チェコやギリシャには健闘して欲しいが、PK戦でも何でもいいからポルトガルとドイツが勝利を収めて欲しい──2ゲームの後に、フランス対スペイン、イングランド対イタリアという、これまた最初の2ゲー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:11 AM

June 14, 2012

ユーロ2012──(1) オランダは古くなった!
梅本洋一

 ユーロのグループ・リーグも2巡目に入った。すべてのチームが1ゲーム以上消化したことになる。ポーランド=ウクライナという馴染みのない場所での開催。毎ゲーム開催場所を地図で確かめている。ワルシャワやキエフといった大都市名は知っているし位置も分かるが、ハリコフとかリビウなんて初耳でいったいどこにあるのか確かめてみるとハリコフはハリキウだったりするし、ポーランドにしてもグダニスク、ボズナニという場所は知...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:06 PM

『ミッドナイト・イン・パリ』ウディ・アレン
結城秀勇

冒頭、まるで絵ハガキのような構図で切り取られたパリの街角が連なっていく。イメージ通りのパリ。だがだからといって、それらが魅力を欠いているわけではない。ひとつひとつの映像というよりも、雨が降りだし、止み、いつの間にか昼は夜になる、そうした時間の流れに、気づけば魅了されている。 同じ事が、オーウェン・ウィルソンが行う時間旅行にも言える。その行き先もまたイメージ通りの「黄金時代のパリ」なのだ。フィッ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:20 PM

June 8, 2012

『ミッシングID』 ジョン・シングルトン
結城秀勇

 ここまで顕著になったのはいつからだろうか、気付くとアメリカ映画の主人公たちは皆、アイデンティティを探している。ヒーローやヒロインたちも(『アヴェンジャーズ』の設定説明だけのために作られたかのような『キャプテン・アメリカ』、ついに幕を閉じるノーランの「バットマン」)、そうではない平凡すぎる人々も(『ヤング≒アダルト』『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』)。単に『ボーン・アイデンティティ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:51 AM

May 28, 2012

『ダーク・シャドウ』ティム・バートン
増田景子

 盟友であるジョニー・デップ、ミッシェル・ファイファー、エヴァ・グリーンにヘレナ・ボナム=カーター。さらに最近話題のクロエ・グレース・モレッツやガリー・マクグラス。ざっとクレジットを並べるだけで、この映画に出ている面々がどれだけ華やかかということが分かってもらえると思う。それも、すべては「監督ティム・バートン」という名のもとに集まっている。わたしは渋谷駅構内で、キャストがひとりずつ映ったポスターが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:56 PM

May 26, 2012

『先生を流産させる会』内藤瑛亮
田中竜輔

 現実の事件において用いられた「先生を流産させる会」という言葉、その得体の知れなさにこそ、このフィルムの着想は得られたのだと、内藤監督はすでにいくつかの場所で証言している。たとえば「先生を殺す会」のような直接的な悪意とは異なり、より曖昧で、より底知れぬ異様さをしたためたこの言葉にこそ、『先生を流産させる会』というフィルムは突き動かされているのだと。しかしながら『先生を流産させる会』は、そのような不...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:57 AM

May 14, 2012

『灰と血』ファニー・アルダン
田中竜輔

 パウロ・ブランコ製作によるファニー・アルダンの果敢な監督第1作、『灰と血』にはふたりの母がいる。ひとりは一族の歴史を支える白髪の女であり、もうひとりは夫の死を契機にその呪縛から一度は身を引いた女だ。三つの家族をめぐる複雑なシナリオの中で、彼女たちはつねに特異点としての役割を担っている。多くの場面で椅子に腰掛けながらも、そこに映る誰よりも強大な力を占有し、誰彼構わず檄を飛ばし、一族の法を強要する白...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:16 PM

May 6, 2012

『刑事ベラミー』クロード・シャブロル
梅本洋一

 クロード・シャブロルは、この遺作で映画をかつてないくらいに抽象的な場に導いた。もちろん、形態はいつもの刑事物である。丁寧なことに、このフィルムのタイトルには、このフィルムをシムノンとブラッサンスに捧げるという言葉まで見つかる。つまりベラミー警視とは、メグレ刑事なのであり、キャリアも晩年に達したジェラール・ドゥパルデューは、メグレ=ベラミーのメランコリーをを演じるにふさわしい存在なのだろう。妻の出...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:58 PM

April 27, 2012

『灼熱の肌』フィリップ・ガレル
田中竜輔

 豊満な肉体をしなやかに弾ませ、見知らぬ男性と踊る女優のアンジェル(モニカ・ベルッチ)に、その夫である画家のフレデリック(ルイ・ガレル)は「まるで娼婦みたいに見えた」と吐き捨てる。ひと組のカップルにおける深刻な危機を明確に示すこの言葉を耳にして、しかしそれに当惑せざるを得ないのは、映画が始まった時点ですでに成立していた(と、同時に破局していた)このカップルの育んだであろう「愛」のありようを、私たち...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:45 AM

April 8, 2012

『少年と自転車』ダルデンヌ兄弟
梅本洋一

 父親に捨てられた息子は、それでも父親を信じようとする。だってまだあそこに父親は住んでいる。だって、まだあそこに父親が買ってくれた自転車があるじゃないか。施設の指導員たちは、隙を見て常に脱出を試みようとする少年に「落ち着け、落ち着くんだ」と繰り返す。それでも脱出を繰り返す少年。  偶然、逃げ込んだクリニックの待合室で噛みついた女性と知り合い、彼女は、盗まれた自転車を少年に買い戻す。なぜか? そんな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:10 PM

March 16, 2012

『おとなのけんか』ロマン・ポランスキー
増田景子

『おとなのけんか』は黄色いチューリップと電話の映画だったと記憶しようと思う。 2011年にヒットした『ゴーストライター』(2010)の監督として記憶に新しい、ロマン・ポランスキーの作品が公開されている。ヤスミナ・レザの戯曲『大人は、かく戦えり』を映画化した『おとなのけんか』は会話ばかりの80分作品。戯曲から生まれた映画だけあって限られた空間を巧みに利用した室内劇で、登場人物も4人と少ない。しかし、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:30 PM

March 15, 2012

『グッバイ・マイ・ファースト・ラヴ』ミア・ハンセン=ラヴ
結城秀勇

 ミア・ハンセン=ラヴは井口奈己らとのトークで、『人のセックスを笑うな』と自分の作品とのドラマタイズにおける共通点は「暴力的なシーンの欠如」にあるのではないか、と語っていた。続けて、「暴力的なシーンを回避することはなにか保守的なことだと思われがちだが、むしろ暴力的なシーンが存在してしまうことの方がよほど因習的なのだ」とも言っていた。  その言葉は、これまでよく見えていなかった彼女の作品のある側面を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:44 PM

March 14, 2012

「恐怖の哲学、哲学の恐怖——黒沢清レトロスペクティヴによせて」
ジャン=フランソワ・ロジェ

 黒沢清は、B級映画とジャンル映画でデビューした多作の映画作家だが、彼は、国際的な舞台で次々に評価される、異論を挟む余地のないほどに個人的な作品世界を築き上げてきた。彼は恐怖と不安の映画作家だと考えられてきたが、恐怖映画の諸々の規則が、彼にあってはしばしば、それを通して日本の文化的な歴史と社会的な現実を垣間見せるプリズムにもなっている。その演出術は、自らの映画から、これまで実現されたことのない極限...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:24 PM

March 12, 2012

『ロング・グッドバイ パパ・タラフマラとその時代』パパ・タラフマラ、小池博史
増田景子

 2012年パパ・タラフマラが解散する、ということは知っていた。観劇するともらう分厚い折り込みチラシの束にたしか最終公演のフライヤーを目にしたからだ。でも、「パパ・タラフマラが解散する」ということが何を意味するかは知らなかった。さらに、パパ・タラフマラがどんな劇団で、どんな歴史を築いてきたかってことも知らなかった。そう、何も知らなかったのだ。 「パパ・タラフマラは1982年に小池博史を中心に結成さ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:33 AM

February 19, 2012

『なみのおと』酒井耕&濱口竜介
松井宏

 声による圧倒的な体験。  酒井耕、濱口竜介という初めてドキュメンタリーを撮るふたりの監督によるこの作品は、声による圧倒的な体験と言い換えられる。ふたりは2011年3月11日の東日本大震災以後に宮城県に入り、各地の何人もの(何組もの)人々との接触を何度も重ね、やがて彼ら自身の体験をそれぞれ語ってもらい、そのなかの11人をこの作品に登場させている。昭和初期に同地域に発生した大地震を経験したおばあさん...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:05 AM

February 17, 2012

淡島千景追悼
梅本洋一

 映画って本当に不思議だ。森繁に「たよりにしてまっせ」と言われていたり、原節子の長年の友人の料亭の娘だったりした、あのキャピキャピしていて、屈託のない、それでいて頼りがいのある女性が、87歳でこの世を去ってしまった。映画の中ではいつも美しくて、行動的で、「いいなあ、こんな人が友だちにいたらな」といつも思っていた人が、実は、現実の世界では80歳をとおに越えていた。当たり前のことだ。小津安二郎(『麦秋...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:54 AM

February 16, 2012

『ドラゴン・タトゥーの女』デヴィッド・フィンチャー
隈元博樹

リスベット(ルーニー・マーラ)の背中から美尻にかけて彫られた漆黒のドラゴン・タトゥー。その美しいドラゴンから一瞬たりとも目が離せないかのように、気がつけば誰もがこの158分の「犯人探し」の旅へと巻き込まれていくだろう。ただしデヴィッド・フィンチャーのフィルモグラフィーをたどってみると、『セブン』では捜査中に連続猟奇殺人事件の犯人が自ら出頭してしまうことで「犯人探し」は終わりを告げた。『ゲーム』や『...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:44 PM

February 15, 2012

『ヒミズ』園子温
増田景子

園子温監督ははやくも震災を映画にとりこんだ。それが『ヒミズ』だ。結果、この映画は今後の被災地のひとつの可能性を描きだしたといえる。 この映画は古谷実による同名の漫画(2001-2003年連載)を原作とした映画で、9月に行われたヴェネチア映画祭ではコンペティション部門で主演の染谷将太と二階堂ふみがマルチェロ・マストロヤニン賞(新人賞)を受賞、1月から全国でロードショーが始まった。「普通」を夢見る中学...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:53 PM

January 30, 2012

『J・エドガー』クリント・イーストウッド
梅本洋一

 イーストウッドは、あるインタヴューで、ものごころついたときからFBIの長官はずっとフーヴァーだった、と言っている。49年間も同じ地位になった人物なので、イーストウッドの感想も当然のことだろう。だが、ぼくはこの人をまったく知らなかった。この人の名前を知ったのも、イーストウッドが、ディカプリオ主演でこの人についての伝記映画を撮影中だというニュースを聞いたからだ。つまり、ぼくは、まったくの白紙でこのフ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:04 PM

January 21, 2012

『永遠の僕たち』ガス・ヴァン・サント
梅本洋一

 このフィルムの原題はrestless。文字通りrestがない。「落ち着きがない」とか「動き続ける」とか、「そわそわしている」とか、だから「不安」や「不穏」だという意味になる。見知らぬ他人の葬儀に出席し続ける登校拒否生徒のイーノックは、ある葬儀で短髪で色白の少女アナベラに会う。  難病もの? 青春映画? どちらも当たっている。青春映画というのは、タイムリミットのある若さを疾走する映画であり、その極...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:49 PM

December 20, 2011

『ラブ・アゲイン』グレン・フィカーラ&ジョン・レクア
松井宏

「長年連れ添った妻に突然離婚を告げられた中年男スティーヴ・カレルがなんとか彼女を取り戻そうとがんばる」。そんなあらすじを読んだだけでわかるけど、これは典型的なリマリッジ・コメディである。つまり冒頭でさっそく駄目になったカップルが以降、どのように再生するかが問題となる。「再生するかどうか」じゃなくて「どのように」こそが、このジャンルの焦点だ。    その点『ラブ・アゲイン』は見事。妻エミリー(ジュリ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:16 PM

December 9, 2011

『カルロス』オリヴィエ・アサイヤス
田中竜輔

 このフィルムが5時間半という時間を通じて映し出すカルロス=イリイッチ・ラミレス・サンチェスとは、もちろんかつて世界を揺るがした極左テロリストのことだ。膨大な一次資料に目を通し、俳優の国籍や使用言語にも固執し、 いくつかのシーンでは現存する資料の中に再構築されたカルロス自身の言葉をそのままに使い、実在の関係者たちと面会するにまで至ったというオリヴィエ・アサイヤスの史実に接する態度は、きわめて誠実な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:37 PM

『ウィンターズ・ボーン』デブラ・グラニック
松井宏

 ファーストカット。ああ、16ミリ!と思い、それだけで画面に釘付けになってしまったのだが、エンドクレジットで「レッド・ワンで撮影」とあった。レッドというのはこんな画面まで可能なのか。しかしいったいどうやって、どんなプロセスであんな映像になるのか。正直よくわからないので、どなたかわかる方がいたら教えてほしいです。  バーバラ・ローデンの『Wanda』(70)も、ダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』(99)も...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:16 PM

December 8, 2011

関東大学ラグビー対抗戦 早稲田対明治 18-16
梅本洋一

 ちょっと遅きに失したが備忘録として今年の早明戦について。  早慶戦でツボにはまった早稲田のワイドに振る方法とキックパスだが、早明戦の明治では毎年のことだが、ここ一番のディフェンスをシャローで仕掛けてこられると、ふたつともうまく行かなかった。もちろん強風の影響がキックパスをためらわせたかもしれない。だが、SOが狙いを定めたキックをする余裕が明治のディフェンスで与えられていなかった。さらに明治のシャ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:38 AM

December 7, 2011

『トゥー・ラバーズ』ジェームズ・グレイ
高木佑介

 ジェームズ・グレイの新作(と言っても、製作は2008年)が、先日紹介したリチャード・リンクレイターの新作と同じくDVDスルーされている。シネコンではハリウッド大作映画だけが画一的に公開されている一方で、こういった「多様」な海外作品が劇場公開すらされない事実には頭を抱えるばかりだ。たとえば、シネコンと大手配給会社が結託した「デジタル上映システム」への完全移行がこのまま推し進められていくと、弊害が巡...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:39 PM

December 5, 2011

『CUT』アミール・ナデリ
隈元博樹

鎌倉にある黒澤明、池上にある溝口健二、そして北鎌倉にある小津安二郎の3つの墓場。秀二(西島秀俊)が、黒澤の墓石の前でただ静かに「先生」とつぶやく。溝口の墓石の前では記念碑に彫られた『雨月物語』の文字を自らの指でなで合わせる。そして小津の墓石の前では「無」と彫られた一点の文字を見据え、静かに両手を合わせる。 このフィルムには、たくさんの墓場が登場する。秀二の兄の慎吾が殺されたヤクザのシマの倉庫の便所...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:03 PM

November 28, 2011

『ニーチェの馬』タル・ベーラ
増田景子

 10分ほどだっただろうか。数分遅れて入り着席して数秒後には、荷車を引く馬が走る様だけをただただ見ていた。  きっと白か灰色で、お世辞にもきれいとは言えない毛並みの痩せ馬なので、そのものに目を奪われたというよりも、馬が全身の筋肉を使って行っている運動に目を奪われたということなのだろう。だからといって、馬が変わった動きをするわけではない。馬は鼻息荒く、課された任務、つまり荷車を引っ張るために淡々と走...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:59 PM

November 24, 2011

関東大学ラグビー対抗戦 早稲田対慶應 54-24
梅本洋一

 点差はもちろんトライ数でも早稲田9トライ、慶應3トライで早稲田の快勝。少人数でラックから速くボールを出し、一気に攻めるという早稲田の戦術が見事にはまった。ブレイク・ダウンでの慶應の劣勢と慶應のディフェンスに「魂のタックル」が見られなかったことが原因。早稲田のアタックは、ウィングの外側に山下や金が立っているという往年のレ・ブルーのマーニュ、ベッツェンの時代を彷彿とさせた。  スペースと間合いを作る...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:57 AM

November 23, 2011

『独り者の山』ユー・グァンイー
高木佑介

 いや、数時間前に見た本作に対する興奮がまったく冷めやらぬままにこの文章を書き始めたものの、絶対にこの言葉だけは書くまいとさっきまで固く心に誓っていた常套句を、ここで早くもあっさりと吐きだしてさっさと楽になってしまいたいと思う。やはりこの監督は、ほかの誰よりも「映画」から祝福を受けている作家だ、と。なんだ、そんなことなら3年ほど前のフィルメックスで上映された『サバイバル・ソング』を見たときから知っ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:04 AM

November 22, 2011

『フライング・フィッシュ』サンジーワ・プシュパクマーラ
高木佑介

 東京フィルメックス・コンペ部門の一本。開映前に「小津安二郎に捧げます」という監督からの言葉がアナウンスされたこの作品は、スリランカにおけるシンハラ人(政府軍)とタミル人(反政府軍)の内戦を背景に描かれた若手映画監督のデビュー作である。冒頭に映し出される、夕陽が沈んでいくスリランカの海辺をとらえた一連の画の美しさには目を見張るものがあったが、まるで鬱屈した時勢に対する感情を吐き出すかのように、途中...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:05 AM

『カウントダウン』ホ・ジョンホ
高木佑介

 本年度の東京フィルメックス・コンペ部門の一本。余命3カ月の肝臓ガンと宣告された、借金の「取り立て屋」を生業とする男が主人公で、彼の死んだ息子の心臓を移植されたことのある女から肝臓を移植してもらうために奮闘するというのがこの物語の主な筋。つまり自分が生きるために肝臓を取り立てに行く、ということである。こう書くと至極シンプルなお話のように思えるのだが、実際に映画を見ていると物語の「錯綜ぶり」に驚く。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:42 AM

November 18, 2011

『猫、聖職者、奴隷』アラン・ドゥラ・ネグラ+木下香
田中竜輔

 『猫、聖職者、奴隷』は「セカンドライフ」なるものの、その魅力やら中毒性やらを理解することの手助けになるような作品では一切ない。「なぜ人々はセカンドライフに熱中するのか」などといったことを心理学的に解きほぐすような手つきもほとんどゼロだと言っていい。彼らはすでに「セカンドライフ」を生きている。これは前提であり、探求の目的ではない。では、このフィルムは何を映し出そうとしているのか。仏映画レーベルカプ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:57 PM

『べガス』アミール・ナデリ
増田景子

 新しい映画監督との出会いほどワクワクすることはないし、その出会えたばかりの監督の最新作の公開が近日中に控えているなんていう状況は、2011年現在の映画状況からしてみれば希有な幸福で、興奮をよぶ興奮、その歓喜をさけばずにはいられないのである。ともかく、アミール・ナデリとの出会いは衝撃であった。  恥ずかしながら私は『CUT』の監督名を見るまで、東京国際映画祭の常連で、今年の第12回東京フィルメック...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:11 PM

November 17, 2011

『サウダーヂ』富田克也
増田景子

いま巷の映画ファンで一番の話題作はまちがいなく空族の『サウダーヂ』だろう。あらかたの映画雑誌、新聞各社、テレビやラジオ番組で取り上げられ、多くの人がこの映画に関して発言を残している。そのせいもあってか、ミニシアターの不況が嘆かれているにもかかわらず、唯一の上映館であるユーロスペースには『サウダーヂ』を見ようと連日大勢の人が押しかけている。 でも、一体『サウダーヂ』のなにがすごいのか。自分たちで資金...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:00 PM

October 31, 2011

チェルシー対アーセナル 3-5
梅本洋一

 溜飲を下げるという表現はあまり好きではないけれど、こういうゲームの後は、その表現を使いたくなる。  アーセナルというチームに疑いを持ち始めてからずいぶん経つ。いったい何度期待を裏切られたのだろう? 別にタイトルを取れなかったことが残念なのではない。かつてこのチームのフットボールを見ることで、フットボールを見る快楽を感じ、それからこのチームと共に何年も歩んできたのに、最近、快楽どころか不満や苦痛ば...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:21 PM

October 28, 2011

『MISSING』佐藤央
高木佑介

「息子は自分のせいで失踪してしまった」と負い目を感じている母親であるとか、「悪い行いをすれば必ず悪いことが起こるのよ!」と物事の因果を熱弁する女であるとか、「嘘」ばかり言う少年であるとか、とにかくそのような人物たちのやり取りが1時間にも満たない慎ましい尺のなかで描かれているこの『MISSING』。まず何よりこの映画を見て驚かされるのは、各々が独自の価値観を持って行動しているように見える上記のよう...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:17 AM

October 9, 2011

ラグビーW杯──(8)クォーターファイナル(1) 
梅本洋一

アイルランド対ウェールズ 10-22 理想的な組み合わせになったクォーターファイナルの第1戦。スタッツは、ポゼッション(54-46)でも敵陣22メートルに侵入した時間(14,51-6.34)でもアイルランドが勝っていたことを示すが、スコアは見ての通り。トライ数では1-3と上記とまったく逆の数字を示している。  もちろんラグビーは、サッカーとは異なり、スタッツの内容は勝負とは異なることが多い。だが、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:00 AM

October 5, 2011

『5 windows』瀬田なつき
松井宏

Stay Gold!    横浜の京急沿い、つまり大岡川沿いの黄金町界隈の屋外や屋内の各所に4つの小さなスクリーンが設置されている。それぞれで、瀬田なつき監督が撮った約5分の異なる短編がループ上映されていて、観客はまちを歩きながらそれぞれをめぐり見てゆく。そして最後は映画館ジャック&ベティにて、25分ほどのまとめヴァージョン(各5分のものを単につなげただけではなく、新たなショットもたくさん加えてひ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:01 AM

October 1, 2011

ラグビーW杯2011──(6) フランス対トンガ 14-19 イングランド対スコットランド 16-12
梅本洋一

 ワラビーズ対アイルランドに続いて2戦目のアップセットが対フランス戦のトンガの勝利。具体的には異なるけれど、抽象的なレヴェルで考えれば、トンガの勝因はアイルランドと同じ。戦術を単純なものに落とし込んで、自分たちの長所を活かす戦いをすれば、たとえ相手の方が力が上でも僅差の勝負に持ちこめるということだ。1対1のぶつかり合いになればトンガは負けない。さらに重量級のSHと走力抜群のナンバー8とウィングにボ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:12 PM

『5 windows』瀬田なつき
結城秀勇

 橋の上、電車の中、マンションの屋上、川沿いの道。さしたる理由もなく、彼らはその時、その場所にいる。歩きながら、電車や自転車などの乗り物に乗りながら、ぼんやりと立ち尽くしながら。それがたった一度きりの人生のまぎれもないひとつの断片だなどとは微塵も意識しようはずもない、ただ通り過ぎていくだけの時間の中で、彼らは皆孤立している。たとえば未曽有の大地震でも起きない限り、そんな瞬間があったことすら知覚され...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:47 PM

September 28, 2011

『宣戦布告』ヴァレリー・ドンゼッリ
高木佑介

「この世界は素晴らしい。戦う価値がある」と言ったのはヘミングウェイだった。「その後半の部分には賛成だ」と言ったのは、『セブン』のモーガン・フリーマンだった。そして、戦い疲れた元ボクサー役の彼がナレーションを務めた映画で、戦う女ボクサーにイーストウッドが投げかけた言葉は、“Tough is not enough”だった。いつか耳にしたそんな言葉をあれこれと思い返しつつ、遅ればせながら、先日の東京日...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:05 AM

September 22, 2011

『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』アンドリュー・ラウ
隈元 博樹

このフィルムの主人公チェン・ジェンはかつてブルース・リーが『ドラゴン 怒りの鉄拳』で演じた架空の武道家である。その名前は、ブルース・リーという伝説的なスターがかつて演じたひとつのキャラクターであることを越えて、その後のカンフー映画に繰り返しその影を落とす。後にこのチェン・ジェンは、彼の死後を物語にしたり、リメイクをしたりしてジャッキー・チェンやジェット・リーによって演じられてきた。今回の『レジェン...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:35 PM

September 21, 2011

ラグビーW杯2011──(3)トンガ対ジャパン 31-18
梅本洋一

 もう誰かが正直に書いてもよい頃だろう。結果論なら誰にでも書けるよと言われるだろう。確かに結果は上記の通りだ。ノルマは最低2勝。相手はトンガとカナダ。そしてゲームを見た者なら誰にでも分かるとおり、まったく勝つ気配が感じられなかった。選手たちは頑張っているのだろうが、このやり方では勝てないとゲームを見ている者は確信してしまう。さらに、この4年と少しの間、W杯で2勝すると豪語し続けたのだから、それなり...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:44 PM

September 20, 2011

『ソラからジェシカ』佐向大
高木佑介

 “地域発信型映画”企画の一本として、千葉を舞台に撮影された今作。だが、佐向大のこの新作短篇のベクトルは、そうした「企画もの」の枠組みを大きく越えた場所へと向けられていると言えるだろう。実際、『マッチ工場の少女』(90)を否応なしに彷彿とさせる一連の見事なショットによって映し出される落花生工場は、もちろんロケ地である千葉という土地の地域性を十二分に担っているのだが、他方で、海外からの出稼ぎ労働者が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:48 AM

September 3, 2011

『ゴーストライター』ロマン・ポランスキー
梅本洋一

 すでにこのフィルムについてはいろいろなことが語られている。ヒッチコック的な作品、堂々とした古典的な作品、流浪を余儀なくされたポランスキーの似姿……どれも当たっている。冒頭の豪雨の中、フェリーが港に着くシーンから、無駄なショットなどひとつもないし、見事な編集で見る者の関心を惹き付けて放さない。ヒッチコック的な分類に従えば、「巻き込まれ型」の物語。前任者の死によってイギリス前首相の二人目のゴーストラ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:52 PM

August 29, 2011

マンチェスター・ユナイティド対アーセナル 8-2
梅本洋一

 対ウディネーゼ戦の勝利の後、マンU戦は引き分け狙いで、とぼくは書いた。ところが上記の結果だ。サミュエル・ベケットの『ゴドーを待ちながら』の冒頭ではないが、Rien à faire! どうしようもない。こうしたゲームは堅く落ち着いて入り、ゲームを「殺す」方向へ進めていくのが鉄則だ。だが、当日の先発メンバーを見ると、誰でもが理解できるそうした方向性は「絵に描いた餅」であることが即座に納得される。まず...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:55 PM

July 25, 2011

季刊「真夜中」2011 Early Autumn
結城秀勇

「真夜中」の最新号をぱらぱらめくっていて、ふたつの文章に真っ先に目がいった。全部読んでいないので特集全体に対するコメントではないのだが、最近考えていることも含め書いておこうと思った。ふたつの文章はどちらも、HIPHOPに関係していて、3月11日の地震に関係していて、人生に関係している。  目にとまった文章のひとつは、三宅唱によるラッパー・B.I.G.JOEへのインタヴューで、「とりかえしのつかな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:41 PM

July 23, 2011

『MISSING』佐藤央
濱口竜介

たった一つの声      役者たちとのワークショップから生まれた前作『Moanin’』(10)を見れば、佐藤央が役者に課す最も根本的な演出とは、発話の統一であるのは明らかだ。現実には様々な声質、発声が溢れるのがこの世界であるわけだが、佐藤央はその多様さを認めない。いや、実際のところ単に一見多様であるに過ぎない「個性」としての声を佐藤央は抑圧する。「発声」でなく「発話」と言うのは、佐藤央の演出が、お...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:41 PM

July 9, 2011

『MORE』 伊藤丈紘
槻舘南菜子

 可能性ではなく不可能性からしか自分の未来を想像できなくなりはじめる頃。振り返るにはまだ早いであろう生々しい過去の時間の中にありえたかもしれない現在を夢想せずにはいられない頃。新しいことを始めるには少し遅い。でもまだ何かを諦めてしまうには少し早い。そう、もう一度やり直そうと思えば、可能性はゼロではない。  『MORE』の主人公は3人の女性だ。OLのユリ(小深山菜美)、フリーのカメラマンであるモエコ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:33 PM

June 25, 2011

『サウダーヂ』富田克也
結城秀勇

 昼休憩の時間が終わりに近づき、味噌ラーメンを食い終えたふたりの男は冷房の効いたラーメン屋を出る。その戸口で彼らは、呼吸と共に急激に襲いかかる熱気にむせかえるようにしながら、大きく伸びをする。そして、「こんな日に仕事しちゃだめっすよねえ」。  ただそれだけのことで、その暑さを理解する。山梨の夏がどんなものかは知らないし、その暑さの中での肉体労働の経験があるわけでもない。でもなんとなく、生まれ育った...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:32 PM

June 15, 2011

『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』マルコ・ベロッキオ
増田景子

「あなたはひとりでファシズムや国と戦おうとしている。」と、若き日のムッソリーニの愛人であるイーダは言われる。この映画はまぎれもなく第二次世界大戦に続いていく戦争の話であり、また、イーダというひとりの女性の戦いの話でもある。しかしながら、結局この映画の中で彼女はいったい何と戦っていたのだろうか。     ムッソリーニとイーダのふたりが愛し合っていた頃、彼女はファシズムに勝利していた。成り上がるために...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:36 PM

June 14, 2011

『NINIFUNI』真利子哲也
渡辺進也

 まだ興奮冷め切れぬままにこれを書いているので、乱文であること、ご容赦いただきたいと思う。とにかく、一刻も早く吹聴して回りたくて仕方ないのだ。『NINIFUNI』がとんでもない傑作であること。どれだけ言葉を費やそうともかなわないくらいにすごい作品であり、少しでも多くの人の眼に触れることを願ってやまないことを、もうとにかく吹聴したくてたまらないのだ。  『NINIFUNI』はこれまで見たことがないよ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:04 AM

June 10, 2011

『まなざしの旅 土本典昭と大津幸四郎』代島治彦
萩野亮

「土本典昭お別れの会」のようすを映した冒頭、壇上の熊谷博子は、次の弔辞に立つ人物をこのように紹介する。 「土本さんの容態が少し悪くなり、皆さんが駆けつけたときがありました。土本さんは大津さんを見つけると、必死に起き上がろうとしながら、大津さんの手を強く握り締め、こう云いました。『ぼくはきみに会えて本当に幸せだった。きみのおかげでぼくの人生はゆたかなものに変わった』と」。  そうして前に立った大...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:57 AM

June 9, 2011

モーリス・ガレルが亡くなった
梅本洋一

 不思議なことに若かりし頃の彼をほとんど覚えていない。フィルモグラフィーを見れば、トリュフォーの『柔らかい肌』にも『黒衣の花嫁』にも出演している。だが覚えていない。ジャック・ロジエの『アデュー・フィリピーヌ』にも父親役で出演している。こちらは朧気に覚えている。  やはり決定的だったのは息子フィリップの映画『自由、夜』の彼だ。彼は1923年2月24日生まれだそうだから、このフィルムの完成時、60歳。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:29 AM

May 21, 2011

『甘い罠』クロード・シャブロル 
増田景子

 リストの「葬送曲」が繰り返し演奏される。それは、ピアニストであるジャック・デュトロンが、そこを訪れるピアニストの卵であるアナ・ムグラリスに間近に控えたコンクールに向けてレッスンをしているからなのだが、それ以上の接点がこの曲とこの映画自体にあるように思えてしょうがない。この映画のタイトルが「葬送曲」でもうなずけるほどである。  誰を葬送するのか。それはイザベル・ユペールに他ならない。イザベル・ユペ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:17 AM

『悪の華』クロード・シャブロル 
隈元博樹

 冒頭からダミアの『UN SOUVENIR』に呼応するように、外部から内部へとゆっくりと移動していく長回しのキャメラ。左に首を振ってダイニングをなめたあと、深紅のカーペットがかかる階段を(これもゆっくりと)上がり、2階に横たわる何者かの死体を捉えた瞬間にその場で立ち止まる。なぜ最初からこれほどまでにシャブロルは邸宅を丁寧に撮っているのだろう?  ドイツ占領下の時代、父親にレジスタンスとして殺害され...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:01 AM

May 20, 2011

『最後の賭け』クロード・シャブロル 
渡辺進也

 長らく日本で未公開であったクロード・シャブロル監督の3つの作品が公開される。  そのうちの1本である『最後の賭け』は1997年製作、デビュー作となった『美しきセルジュ』以来ほぼ毎年、3年と空けず監督作を残しているシャブロルの長編映画47本目にあたる。  『最後の賭け』は『ヴィオレット・ノジュール』以来シャブロル映画の常連となったイザベル・ユペールと『帽子屋の幻影』以来の出演となるミシェル・セロー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:58 PM

May 8, 2011

『歓待』深田晃司 
増田景子

 川沿いにある東京の下町。下町特有の車がすれ違えなさそうな狭い路地の一角にある特徴のない建物のすりガラスに書かれた小林印刷の文字。この、歩いていたら足を止めないような地味な家族経営の印刷所が、この映画の舞台である。ガラスの引き戸を開けると、そこには通路を挟んで大きな印刷機が2台置かれていて、奥には8畳間ほどの居間と上に続く急な階段。どうやら印刷所と居間の境には風呂があるようだが、それくらいしかない...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:10 AM

May 6, 2011

イタリア映画祭2011レポート 2011年5月3日 
隈元博樹

Il quinto giorno  午後からのロベルタ・トッレ『キスを叶えて』。ここまでタイトルに「キス」がついてしまえばもはやお手上げである。このフィルムは今年のサンダンス映画祭コンペ部門出品作であり、行方不明になった聖母像の頭部をシチリア・リプリーノに住む美容師見習いの少女が自分の見た夢によってその居場所を発見したことに端を発し、その「奇跡」に便乗して彼女の母親が金稼ぎに奮闘するというあらすじ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:34 AM

May 3, 2011

イタリア映画祭2011レポート 2011年5月2日 
隈元博樹

Il quarto giorno  「A pancia si consulta bene」(=「腹が減っては戦はできぬ」)。以前からとても気になっていた銀座7丁目の交詢社通りにある「銀座 梅林」でカツライス、980円。ここも昭和2年創業と歴史古く、本店のほかに銀座三越店やハワイ、羽田空港カウンター、最近では秋葉原にも小売展開しているという。自分が頼んだカツライスのカツより隣のサラリーマンが頼んだラ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:26 PM

イタリア映画祭2011レポート 2011年5月1日 
隈元博樹

Il terzo giorno  映画祭も前半を折り返す。ダニエーレ・ルケッティ『ぼくたちの生活』。「Sacher Film」設立当初からナンニ・モレッティと協働していたということは知っていたけども、このフィルムにはどこかオリヴィエ・アサイヤス、とくに『8月の終わり、9月の始め』を喚起させる瞬間が随所に存在している。それは人物をキャメラが尾行(ルケッティ曰く、「ペディナメント」と呼ぶらしい)し、ま...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:16 PM

イタリア映画祭2011レポート 2011年4月30日 
隈元博樹

Il second giorno   本日1本目はカルロ・マッツァクラーティ『ラ・パッショーネ』。昨日の『われわれは信じていた』同様、去年のヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門出品作である。さて映画監督のスランプと言えば必然的にフェリーニの『8 1/2』や北野武の『監督・ばんざい!』などの再審に付すフィルム群が思い浮ぶけれども、シルヴィオ・オルランド扮する映画監督のジャンニはフェリーニのよ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:48 AM

イタリア映画祭2011レポート 2011年4月29日
隈元博樹

Il primo giorno   GWに開催されるということで毎年恒例のイタリア映画祭も今回で11回目。今年はなぜか去年のCL決勝でインテルのスタメンにアズッリの選手がいなかったこと(マテラッツィは途中出場したけども)を思い出したり、その頃ロブ・マーシャルの『NINE』がハリウッド資本で製作されたり、あれやこれやと反芻しながら気がつけば有楽町・朝日ホール。日比谷の高架下近くにあるピザトースト発...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:43 AM

April 26, 2011

『引き裂かれた女』クロード・シャブロル
梅本洋一

 小説家のシャルル・サン=ドゥニ(フランソワ・ベルレアン)が、テレビで天気予報をやっているガブリエル・ドゥネージュ(リュドゥヴィーヌ・サニエ)に狙いを付け、彼女を最初に誘う場所はオークションだ。父ほどの年齢に達した小説家に惹かれた女性は、彼女に一目惚れした金持ちのどら息子(ブノワ・マジメル)の誘いを振り切ってオークションに出かける。若い女性に、オークションに行かないか、という信じがたい誘惑手段を用...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:58 AM

April 22, 2011

『ファンタスティックMr.FOX』ウェス・アンダーソン
高木佑介

 この作品が好評を博していることは雑誌の論評などですでに知っていたし、ロアルド・ダールの原作を映画化することがウェス・アンダーソンの念願の企画であったこと、そしてその意気込みに見合った力作であることもなんとなく耳にはしていた。とはいえ、特に大きな期待を抱くわけでもなく、いわば消極的な心構えで映画館に足を運んでしまったことをまず正直に書いておきたい。前作の『ダージリン急行』(07)がそれほど面白くな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:44 AM

April 15, 2011

『悲しみのミルク』クラウディア・リョサ
隈元博樹

 ファウスタ(マガリ・ソリエル)には常に「母性」が依拠しており、彼女という存在は彼女の母から与えられたその一連の系譜から逃れることのできない運命にあるのかもしれない。  とは言うものの、彼女と実母が同じスクリーン上に捉えられるのは冒頭の場面、あるいは遺体となって言語を失ってしまった「以後」にしか二人の女性はひとつの空間をともに生きることを許されてはいない。 しかし息絶えし間際、ケチュア語で紡ぎ出さ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:38 PM

April 11, 2011

『神々と男たち』グザヴィエ・ボーヴォワ
増田景子

 この映画を観て、遠藤周作の『沈黙』を思い出す。『沈黙』は鎖国をしていた江戸時代の長崎を舞台とした隠れキリシタンの日本人と宣教師たちの話である。ちなみにこの『神々と男たち』は、アフリカのアルジェリアの小さな村が舞台であり、イスラム教のアルジェリアの人とフランスから来たキリスト教の修道士たちの話であり、平和だった村がテロリストの攻撃によって戦場へと変貌してしまうのだ。こうして文字にしてみるとふたつの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:29 AM

February 20, 2011

『ヒアアフター』クリント・イーストウッド
梅本洋一

 正直に告白しよう。イーストウッド・ファンを自認するぼくだが『グラントリノ』も『インビクタス』もなぜか絶賛することができなかった。『グラントリノ』は俳優イーストウッドの喪の儀式には相応しかったし、それなりに感動したけれども、すべてが「想定の範囲内に収まっていた」気がしたし、肝腎のクルマがあまり好きになれなかった。たとえば『センチメンタル・アドベンチャー』のクルマの方が良かった。そして『インビクタス...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:35 PM

February 15, 2011

『SOMEWHERE』ソフィア・コッポラ
田中竜輔

 ほとんど風景と呼べるランドマークのない、サーキットのような道路をグルグルと抑揚なく走る一台の真っ黒なフェラーリ。運転しているのは無気力な映画スターのジョニー・マルコ(スティーヴン・ドーフ)。車に乗るか、酒を呑むか、適当な女とセックスするか、はたまたポールダンサーをデリバリーするか、一応映画の仕事は続けているようだけれども、記者会見では質問に満足な受け答えもできないほどの熱のなさ、ルーティンと惰性...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:30 AM

January 27, 2011

『アブラクサスの祭』加藤直輝
松井宏

 東京藝大大学院卒の加藤直輝監督による「商業映画」第1作目となる今作。「商業デビュー作として今作は云々かんぬん」とか「以前の加藤監督作品と比べて云々かんぬん」とか「監督の作家性が今作では云々かんぬん」などと言った話を抜きにして、『アブラクサスの祭』はごく素直に心動かされる作品だ。  まず成功の理由として、物語の構造のシンプルさがあると思う。同名の原作小説でもそうらしいのだが、ラストはライブである。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:25 AM

January 26, 2011

2011アジアカップ準決勝 日本対韓国 2-2(PK3-0)
梅本洋一

 今野のブロックがPKに値するかどうか(もちろん後半の岡崎に対するファウルがPKに値するかどうかも含めて)は、主審の問題に帰着するので(より高いレヴェルのレフリングができる審判の養成を希望する以外)書きようがない。だが、前半の日本は、今大会で一番の出来だったことは疑いようがない。パススピード、ボールの回り、ポジショニングもとても良かった。悪かったのは1点しか取れなかったこと。だが、こんなことはフッ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:42 PM

January 22, 2011

アジアカップ2011準々決勝 日本対カタール 3-2
梅本洋一

 このゲームが終わった後、遠藤は、6年前に似てきた、と言っていたそうだ。6年前の中国開催のアジアカップでも確かに薄氷を踏む勝利の連続だった。準々決勝のヨルダン戦では、PK戦で俊輔、アレックスが連続して外し、宮本の機転で反対側のゴールが使用されたこともあった。(懐かしいね!)  遠藤の言っていることは、ゲームの結果については、近いかも知れないが、ゲーム内容について見ると、今回の方が数段上だ。開幕戦の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:27 PM

January 6, 2011

『アブラクサスの祭』加藤直輝
梅本洋一

 暮れから正月にかけていろんな人が死んでいく。ブレイク・エドワーズ、そして高峰秀子……。ここ7〜8年、ブレイク・エドワーズのロマンティック・コメディを再見したり、成瀬の『浮雲』や『流れる』を授業で何度も見て、高峰秀子の凄さを感じていた。もちろん数年前のオスカー授賞式で、もう歩けなくなって車椅子で移動し、それでもギャグを飛ばしているブレイク・エドワーズの姿を目にしているし、その傍らに唄を歌えなくなっ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:13 AM

December 16, 2010

『キス&キル』ロバート・ルケティック
高木佑介

 家族旅行で南仏ニースを訪れたジェン(キャサリン・ハイグル)は、結婚秒読みかと思われた彼氏に最近フラれたばかり。両親と一緒に旅行なんて、もう子供じゃないんだから・・・・・・みたいなことをニース行きの機内で口にしつつも、婚期を見事に逃しちゃった感が全身から毒々しく滲み出ている彼女の姿を見ていると、このあと起こるだろうロマコメ的展開に否が応でも期待が高まってしまう。顔は全然似てないけど、キャメロン・デ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:44 AM

December 4, 2010

『海上伝奇』ジャ・ジャンクー
増田景子

 喋り声、物を売る声、テレビやラジオの放送音、中華鍋で炒める音、食器がぶつかる音、椅子やテーブルのぶつかる音、麻雀牌の音、歩く音、車のエンジンをふかした音、けたたましいクラクションの音――。  賈 樟柯の新作である『海上伝奇』からは、まるで上海にいるかのごとく音が鳴り響く。路地にも、店内にも、どこでもかしこでもあらゆる音が鳴り響き重なり合って存在しているのだ。それらの音に私は感動を覚える。というも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:37 AM

November 30, 2010

バルセロナ対レアル・マドリー 5-0
梅本洋一

 火曜日の朝から信じがたいものを見てしまった。チャビの一発に始まり、ジェフレンの5点目まで、バルサがディフェンダーを付けたアタック練習のように得点を重ねていく。ディフェンス側は、ボールを奪取するまでの仕事で、アタック側は決め事の確認。息子のチームでさえよくやっている練習だ。彼によれば、ディフェンス組に入ると「つまんないよ!」ということ。このゲームではディフェンス組がこのゲームまで無敗のレアルなのだ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:33 PM

『行きずりの街』阪本順治
梅本洋一

 志水辰夫の原作を読んでいないし、水谷豊主演で一度テレビドラマ化されたようだが、それも見ていない。何となくこの映画を見た。平日の午後の横浜ブルク13という新しいシネコンはガラガラだった。  見る者に少しずつしか物語のキーを与えない編集が続く。きっと複雑な話なのだろうと思う。田舎の病院で呼吸器を付けている老婆。見守る波多野(仲村トオル)。老婆の遠縁にあたる娘を東京へ探しに行く波多野。なぜ?  確かに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:21 AM

November 26, 2010

『The Depths』濱口竜介
結城秀勇

 濱口作品のトレードマークとなりつつあるモノレールの車窓を通じて、デジタルカメラが風景を切り取る。そのフレームはシネマスコープであるこの作品自体のフレームより小さい。ふたつのフレームに挟まれた中間領域はグレーに沈み、見られると同時に見なかったもの、カメラによって切り取られたと同時に切り取られなかったものにされる。あえていうまでもないが、濱口竜介の映画における登場人物の「深さ」とは現実感や奥行きの問...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:47 AM

November 22, 2010

『森崎書店の日々』日向朝子
梅本洋一

 片岡義男の新刊短編集『階段を駆け上がる』に収められた7篇の短編の中に『雨降りのミロンガ』という素敵な短編がある。地下鉄の神保町を出ると雨が降っていて、そこで主人公は20年ぶりの偶然ある女性に会う。その女性は、20年前「ミロンガ」のウェイトレスをしていて、主人公はそこの客だったという話だ。「ミロンガ」とか「ラドリオ」とか「さぼうる」とかを知っている人には、とても吸引力のある短編だ。ぜったいに神保町...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:05 AM

November 3, 2010

『ナイト&デイ』ジェームズ・マンゴールド
結城秀勇

 謎に満ちたエージェント・ロイ(トム・クルーズ)に連れ去られるようにして、ジューン(キャメロン・ディアス)は世界中を駆け巡る。カンザス、ブルックリン、南海の孤島、オーストリア、スペイン……。その移動の過程はほとんど描かれることなく、彼女の意識が薄れた後再び甦ることを意味する黒いスクリーンが、その距離を埋める。唯一映画だけが、その空間的な距離をなにも映らない映像によって代用することが出来る。ブラック...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:31 AM

October 28, 2010

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』瀬田なつき+『神々と男たち』グザヴィエ・ボーヴォワ@東京国際映画祭
結城秀勇

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』瀬田なつき。東京湾岸の光景、横たわる少女と彼女の生足、スクリーンのこちら側だけに向かって放たれる「嘘だけど」という台詞、宇宙の姿を映し出すスクリーンプロセス……。瀬田なつきの商業映画第一作はどこをどう切っても瀬田印が満載だ。 陰惨な過去の事件ーーそうではなかったこともあり得たのかもしれない過去ーーによってだけ結びつくひと組の少年少女。過去はなぜかいま唐突に現在を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:13 PM

October 27, 2010

『刑事ベラミー』クロード・シャブロル+『ゲスト』ホセ・ルイス・ゲリン@東京国際映画祭
結城秀勇

『刑事ベラミー』クロード・シャブロル。墓地とそこに流れる口笛。カメラがゆっくりとパンし始め、それがクレーンを使ったパンに切り替わって左回りにぐるりぐるりとこうべを巡らせていくと海へ。しかし最終的にカメラが指し示すのは美しい海の姿の方ではなくて、その縁の掛けしたに落ちた丸焦げの車と、そのすぐそばに転がる丸焦げの死体である。 この事件の発端を示すショットを映した後すぐに、そこから30km離れたベラミー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:51 AM

October 26, 2010

『そして、地に平和を』 マッテオ・ボトルーニョ、ダニエレ・コルッチーニ+『ハンズ・アップ!』ロマン・グーピル@東京国際映画祭
結城秀勇

ローマ郊外の低所得者層向け集合住宅を舞台とする『そして、地に平和を』は、ひとつの場所を描こうとする試みであるだろう。 長い刑務所生活から帰ってきたひとりの服役囚を観察者として、非常にフォトジェニックな大型の集合住宅の姿が切り取られる。ある共同体への帰還者の視点を通じて、高い建物に見下ろされる公園や広場や駐車場は、単に荒廃した地方都市の生活のドキュメントとなるのではなく、サーガ的な空間が立ち上がる場...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:12 AM

October 12, 2010

池部良追悼
梅本洋一

 池部良が亡くなった。享年92歳とのことで、大往生だ。  とりわけ最近になって、このハンサムな2枚目スターに興味を持っていた。かつて、この俳優が現役の時代──といっても、高倉健の傍らにいつもスッと立っている彼の図像ではなく、テレビを含めて、俳優・池部良が際立っていた、それ以前のことだ──、どうもこの俳優の演技が好きになれなかった。好きになれなかった、という表現は正しくない。この俳優の演技がうまいと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:27 PM

September 28, 2010

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』瀬田なつき
梅本洋一

 かつて、『女は女である』でジャン=クロード・ブリアリとアンナ・カリーナが住むアパルトマンには自転車が置いてあった。かつて、母娘に扮した桜田淳子と田畑智子は、相米慎二の『お引越し』で乗る電車の中で「ある日、森の中……」とクマさんの歌を唄った。黒沢清の『回路』でしばしば映るビルの屋上からは、東京の「意気地なしの風景」が映り込んでいた。映画には、そうした無数の「かつて」がある。映画的な記憶と呼ばれたこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:54 PM

September 22, 2010

『黄色い家の記憶』ジョアン・セーザル・モンテイロ
結城秀勇

 モンテイロの映画を見るといつも、演奏(ダンス)、酒宴、犬の3つが出てきて、なぜかはまったくわからないが、そのどれかでも画面に映し出されると反射的に心躍る。 「幼い頃、私たちは刑務所を「黄色い家」と呼んでいた」というインポーズからこの映画は始まる。黄色い家がこの映画の終盤に出てくる精神病院を意味しているのか、あるいはもっと他のものなのかはわからない。だがモンテイロ扮するジョアン・デ・デウスが住ん...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:24 AM

September 21, 2010

10-11プレミアリーグ サンダーランド対アーセナル 1-1
梅本洋一

 チャンピオンズリーグの緒戦でブラガに6-0で大勝した2日後の対サンダーランドのアウェイゲーム。ブラガ戦がロンドンだったとはいえ、わずか2日後のゲームで、疲労が蓄積している様子はゲームを見ていても手に取るように分かる。ボールへの寄りが遅いし、パススピードも落ちている。アーセナルようなチームは疲労が溜まっていると好ゲームはできない。そんなことはどのチームも同じさ、と言われるだろうが、そうではない。あ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:46 PM

『ZERO NOIR』伊藤丈紘
高木佑介

 映画の可能性が不意に大きく刷新されてしまった瞬間、あるいはまさにいまそれが刷新されようとしている瞬間に立ち会うとはこういうことなのだろうか。こう言うと大袈裟に聞こえるかもしれないが、この映画にはとにかく打ちのめされた。何から書けばいいかわからないけれど、とりあえず何か書き始めることにしたい。  冒頭、モノクロの戦争記録映像がモンタージュされたあと、アイリスの効いた画面からこの映画は始まる。クリス...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:19 PM

September 13, 2010

クロード・シャブロル追悼
梅本洋一

 9月12日にクロード・シャブロルが亡くなった。リベラシオン紙は、「フランスは、自らの鏡を失った」(オリヴィエ・セギュレ)と書き、レザンロキュップティーブルのサイトも「フランスは、その最良の肖像画家を失った」と書いている。自らが属するブルジョワジーへの表裏一体になった愛着と嫌悪が彼の作品の多くには噎せ返っていたし、『美しきセルジュ』以降、70本ほどになる数多い作品で、彼が描き続けたフランスの地方の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:52 PM

August 14, 2010

『ソルト』フィリップ・ノイス
結城秀勇

 東西冷戦の落とし子として、数十年間という時間をかけてアメリカ人になりすましCIAに潜入したロシア人女スパイ。そのシンプルかつ典型的な設定にもかかわらず『ソルト』のストーリーには、どこかタガの外れた部分がある。ロシア人大統領を暗殺し、その報復に見せかけてアメリカの大統領を殺し、中東を巻き込んで世界規模の核戦争を引き起こす、などというどこの国家の利益にもならない陰謀自体がそうなのだが、それを食い止め...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:41 PM

July 23, 2010

スポポリリズムvol.12 プレ録音映画祭
渡辺進也

 今回の録音映画祭にも縁がある、『SR サイタマノラッパー』の音楽のP.O.P ORCHeSTRA(「1」「2」に出演のSHO-GUNGやB-huckも姿を現す)、『ライブテープ』の前野健太とDAVID BOWIEたちのライブが(映画をなぞるように『天気予報』から『東京の空』へと。ステージ上で暴れてた。)が終わると、暗くなったステージ上で厳かにセッティングが始まる。  真ん中に簡易的なスクリーンが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:08 AM

July 17, 2010

『クレイジー・ハート』スコット・クーパー
梅本洋一

 落ちぶれたカントリー&ウェスタンの歌手の巡業、そして人生の最後の輝きと再生──ありふれた物語だろう。もちろんこのフィルムを見に行ったのは、このフィルムで主演してオスカー主演男優賞を獲得したジェフ・ブリッジズのことを俳優として大好きだという理由もあるけれども、このフィルムを監督したスコット・クーパーのインタヴューを読んだからでもあった。  今年40歳になるスコット・クーパーにとってこのフィルムが初...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:16 AM

July 7, 2010

『あの夏の子供たち』ミア・ハンセン=ラブ
松井宏

 処女長編『すべてが許される』に引き続いて、自殺する男を仮の中心に据えたミア・ハンセン=ラブの長編第2作目は、やはり前作と同じく「どのように不幸を描くか」ではなく「どのように幸福を描くか」をまずもって問題にする作品だった。弱冠30歳のこの女性監督は、たぶん不幸を描くための前段として幸福を描いておこうなんて、そんなチャチなことは考えていない。幸福は否定されない。幸福はこの作品のルールそのものだ。だか...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:57 PM

June 24, 2010

『アイアンマン2』ジョン・ファヴロー
結城秀勇

 テレンス・ハワードが降板した時点で、このシリーズ続編には正直あまり期待していなかった。スカーレット・ヨハンソンの起用が大々的に宣伝され、先日公開されていた『シャーロック・ホームズ』ではロバート・ダウニーJr.の演技がほとんどトニー・スタークに見え、完全にブロックバスター的な大作にシフトしたのだろうと思っていたのだ。前作のダウニー Jr.、グウィネス・パルトロウ、テレンス・ハワード、ジェフ・ブリッ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:41 PM

June 19, 2010

『アウトレイジ』北野武
結城秀勇

 ビートたけしがいつもとちょっと違うな、と見ていて感じた。なんだかあまりこわくないのだ。『アキレスと亀』のような作品の彼と比べてさえ。しばらくしてその理由がわかった。普通にしゃべったり怒鳴ったりしてるからだ、と。彼に限らず、椎名桔平も北村総一朗も杉本哲太も三浦友和でさえもが、「ばかやろう」「なめんじゃねえ」とほとんど無内容な暴言(?)を吐き散らす。まるで掛け合いのように繰り返されるそのやりとりは、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:01 AM

June 18, 2010

『夜光』桝井孝則
松井宏

桝井孝則監督の2009年作品『夜光』。その51分のなかでは、ある風通しの良さ、というか解放感のようなものが本当に強く感じられる。そして見るたびごとに、この印象は増すばかりだ。その理由を考えてみた。そしてこう言ってみようと思った。つまり、まさしく「無垢」こそをこの作品が提示しようと試みているからだ、と。  けれど無垢とは何だろう。それは生まれつき与えられたお気楽なものでもないし、単純さや素朴さでもな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:22 PM

June 15, 2010

『テト』後閑広
田中竜輔

 このフィルムが私たちに明瞭に提示してくれる最初のことは、水に濡れたパラシュートはとても重い、というごく単純な事柄である。何らかの理由でパラシュートによる降下訓練に臨まされた国家諜報員見習「テト」が、沼地に足を取られつつ着水したその場所から陸地までそれを引き摺る冒頭のシークエンスから、私たちはその大きな布の重みを見てとることができる。そんなものを実際に引き摺った経験など誰にでもあるわけはないという...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:23 AM

June 12, 2010

『やくたたず』三宅唱
渡辺進也

 ざらついたモノクロの画面の中、背後にうっすらと雪がとけ残るあぜ道を、学生服を着た3人の少年が歩いていく。言葉を交わすわけでもなく、並んで歩くわけでもなく、思い思いの表情で歩いていく。しかし、それまで3人に寄り添うようにあった画面は、少しずつ彼らを置いてけぼりするようにスピードを持って離れていく。彼らはそれに遅れをとるまいと早足で、そして全力で走り始めるが、画面は彼らを置いてけぼりにする。画面に追...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:57 AM

『やくたたず』三宅唱
松井宏

 冬。北海道。卒業間近の高校生3人。ガンちゃん、タニくん、テツヲ。彼らは、先輩イタミが働く会社で研修めいたバイトをはじめる。先輩の他に社長と、その愛人だか妻だか、はたまだ何だかよくわからないような女性社員キョウコからなる、小さな会社。また社長には息子ジローちゃんがいるが、彼は刑事だ。  そんな三宅唱監督の処女長編『やくたたず』を見ると、何はともあれ役者たちの顔と振る舞いが、とても良いのだ。何を阿呆...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:34 AM

June 1, 2010

『あの夏の子供たち』ミア・ハンセン=ラブ
梅本洋一

 このフィルムの物語について記すと、インディーズ系の映画プロデューサーの自殺とそれ以後の家族の物語ということになる。ミア・ハンセン=ラブの長編第2作にあたるこのフィルムは、彼女の処女作のプロデューサーになるはずだったアンベール・バルサンが突然自死を選んだことから想起されたという。確かにアンベール・バルサンの自殺というのは大事件でもあったけれども、このフィルムに描かれているのは、今世紀の映画が背負わ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:02 AM

May 31, 2010

『ハーツ・アンド・マインズ/ベトナム戦争の真実』ピーター・デイヴィス
高木佑介

 アフガンやイラク戦争を経てきたいわゆる9.11以降のアメリカで、再び注目を集めているというヴェトナム戦争を巡ったドキュメンタリー作品がここ日本でも公開される。政府高官やヴェトナム帰還兵たちの証言がニュース・フィルム映像を交えながら映し出されていくこの作品が製作された期間は1972年から2年間――つまりナム戦の終結前夜、アメリカが“名誉ある撤退”に奔走していたとき――である。ということは、すでにこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:54 AM

May 28, 2010

『音の城 音の海 SOUND to MUSIC』服部智行
田中竜輔

 知的障害を有した人々と音楽家・音楽療法家たちが未知の音楽を求めて即興演奏を行うワークショップ「音遊びの会」、そこを初めて訪れた際に大友良英氏が発言していた、「「空調の音」を「音楽」として聴くことができるかどうか」という問いかけは、オーケストラの演奏や3分間のポップスを「音楽」として聴くことができるかという問いと、本質的には同じことであり、とどのつまりそれは「音楽とは何か」という根源的な問いへと通...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:03 PM

May 18, 2010

『トラッシュ・ハンパーズ』ハーモニー・コリン
菅江美津穂

 ハーモニー・コリンの新作。『ミスター・ロンリー』で見た「逃亡から対話」をハーモニー・コリンは新しい形で表現してくれたように思う。  この映画は「80 年代に誰かが撮影して、そのまま捨て去られていたホームビデオ」というコンセプトで作られた作品である。その内容とは3人の老人がゴミ箱に対して腰を振り続け、子どもが刃物を持ち振り回す……というその破壊的な行為は枚挙に暇がない程である。主人公たちはそれぞれ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:52 PM

May 13, 2010

『勝利を』マルコ・ベロッキオ
田中竜輔

 この驚嘆すべき傑作『勝利を』を目にしてから随分と日が経ってしまったが、いまだその衝撃から逃れられていない。今すぐにでももう一度スクリーンでこのフィルムを見直してみたい欲求に駆られている。このフィルムについての熱狂は様々なblogやTwitter上で目撃したが、その熱狂がこのフィルムの公開へと繋がることを願ってやまない。  少なからぬ人々がベニート・ムッソリーニの愛人のひとりイーダ・ダルセル=ジョ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:23 AM

May 11, 2010

『シャッターアイランド』マーティン・スコセッシ
梅本洋一

 もちろん思い出してみれば『アリスの恋』のハーヴェイ・カイテルや『タクシー・ドライバー』のロバート・デニーロもそうだったのだが、マーティン・スコセッシのフィルムにおける男性主人公のパラノイアは、どこから来るのだろう。レオナルド・ディカプリオが、スコセッシ映画の主人公に迎えられてからも、彼は常にパラノイアを生きているように感じられる。「感じられる」どころではない。たとえば、『シャッターアイランド』で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:23 AM

April 25, 2010

『脱獄囚』鈴木英夫
結城秀勇

 窓辺に立った人間の太ももから上がまるまる見えてしまうような、高さ150cmはあるだろう大きな窓が、正面にみっつ並んだ住宅。小川一夫の手によるこのセットによって、練馬区にあり、近所にプールや市場があるらしい、池部良と草笛光子の平凡な家庭は、どこか現実感をはぎ取られたような空間になる。自分を捕まえた刑事への恨みからその妻の命を狙う脱獄囚による監視と、その監視に気づきながらも囮として開け広げられた窓...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:39 AM

April 19, 2010

『死に至る愛』アラン・レネ
結城秀勇

 タイトルには『死に至る愛』の名を挙げたが、この文章は東京日仏学院とユーロスペースの特集「アラン・レネ全作上映」を終えて、思いついたことをとりとめもなく書き記す。この作品と前年の『人生は小説なり』は、レネの複雑怪奇なフィルモグラフィに道筋を与える手がかりとなるような気がしている(あるいは『アメリカの叔父さん』を含んだジャン・グリュオーとの3本の共同作だろうか)のだが、考えがまとまっていない。  こ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:41 AM

April 18, 2010

『息もできない』ヤン・イクチュン
梅本洋一

 このフィルムについて侯孝賢は、まるでゴダールの『勝手にしやがれ』が出てきたときと同じだ、と言っている。このフィルムの英語タイトルが « Breathless »という『勝手にしやがれ』の英語タイトルと同じことから来る発想だろうが、それだけではない。そこに何かが生まれるときに必ず感じられる同質の強度を感じるからだ。同質の強度と書いたが、『勝手にしやがれ』と『息もできない』は異なる。『勝手にしやがれ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:08 PM

April 16, 2010

『ハート・ロッカー』キャスリン・ビグロー
結城秀勇

 『ハート・ロッカー』を見ていると、爆発物処理班とは爆発物を爆発させない人なのではなくて、むしろ積極的に爆発の契機になる人なのではないかと思ってしまう。無論、はじめに先任の班長が行う選択のように、適切に爆発させることは爆発物処理の一環ではあるのだが、なぜだかこの映画の中の爆発は「爆発させてしまった」とでもいうようなやましさに満ちている。130分ほどの映画で、4回も5回も沸き立つ噴煙と爆発音を耳にす...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:32 AM

April 7, 2010

チャンピオンズリーグ09-10 準々決勝2nd Leg
バルセロナ対アーセナル 4-1
梅本洋一

 メッシの4得点! ぼくらアーセナルのサポーターにとっては、溜息しか出ないゲームだった。単なるラッキーで2-2のドローだったロンドンの1st Legから判っていたことだが、今のバルサとアーセナルには、この2nd Leg程度の差があるということだ。このゲームでは切れ切れメッシの素晴らしさについては、誰もが語るだろう。このゲームでメッシの両側にいるペドロやボージャンとはやはりモノが違う。  それよりも...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:50 PM

April 1, 2010

『シャーロック・ホームズ』ガイ・リッチー
結城秀勇

 魔術と科学の対立という構図に持ち込んだ時点で、原作に忠実な映画化はあり得ない。もともとガイ・リッチーがそんなものを目指していないのは、同性愛的な匂いすら感じさせるホームズとワトソンの関係、頭脳というより肉体的な情報処理能力を示すホームズ、という点からも明らかであるが、結果としてそれがなにに似てくるかと言えば『ダヴィンチ・コード』のような過剰な情報の横溢によってのみ展開する類のアクション映画だ。...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:49 PM

March 21, 2010

『風にそよぐ草』アラン・レネ
梅本洋一

 かなり前からクリスティアン・ガイイのファンだったぼくはこのフィルムを心待ちにしていた。アラン・レネとクリスティアン・ガイイの遭遇。そして何よりも、その遭遇を望んだのはレネだった。レネがやるこの種の遭遇はいつも重要だ。最初は、たとえばマルグリット・デュラスとの遭遇、もちろん『ヒロシマ、モナムール』だ。そしてアラン・ロブ=グリエとの遭遇、『去年マリエンバードで』。いちいち挙げることはしないけれど、ア...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:13 PM

March 19, 2010

『愚か者は誰だ』渡辺裕子
高木佑介

 30分という尺に留めておくには惜しいほどに贅沢な短篇だった『テクニカラー』(船曳真珠)と並び、今年の「桃まつり」の中でもとりわけてクオリティの高い作品に仕上がっているこの『愚か者は誰だ』。渡辺裕子が脚本を担当した濱口竜介の新作『永遠に君を愛す』(09)も男女が向かえる修羅場とその極端なタイトルが印象的だったが、あるいは彼女が持つ「色」のようなものがあるのだろうか、やはり今作でもひとりの女の不貞を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:35 PM

March 17, 2010

『あの夏の子供たち』ミア・ハンセン=ラブ
結城秀勇

 ジョナサン・リッチマンの「エジプシャン・レゲエ」が流れる中、矢継ぎ早にパリの街角の映像が継ぎ接ぎされ、その上に色とりどりのクレジットが重ねられる。「エジプシャン」と「レゲエ」の突飛な組み合わせからなる曲名からも想像できるそのままの、どこかすっとぼけたようなエキゾチシズムが断片的なパリを積み上げていく。ホテルの入り口から姿を現した男が、これまた非常に短いショットの連なりの中で続ける携帯電話越しの会...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:27 PM

March 10, 2010

『ハート・ロッカー』キャスリン・ビグロー
鈴木淳哉

 私は「戦争」に反応できない。なにか考えても、思うところがあっても、それらは戦争経験のない身にとって、反応からはるかに遅れた、それとは別のある振る舞いとしかならない。「振舞う」こと自体すらも何らかの倫理基準に抵触するのではないかと思い、縮こまるのである。だから、映画の冒頭で、「戦争は麻薬だ」という提言がなされても、「戦争」とも「麻薬」とも縁遠い身としては、どういう意味か考えてしまい、また「反応」は...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:17 PM

February 24, 2010

『The Anchorage 投錨地』C.W.ウィンター&アンダース・エドストローム
結城秀勇

 セルジュ・ダネーは、「目のための墓場」と題されたストローブとユイレの映画についての文章で、次のように述べている。「映画を、映像を、声を、投錨するということ、それは映画の不均質性を真剣に受けとめることである。また、そういった投錨、つまりひとつの映像にとって、他の場所ではなくそこでしか可能ではなかったという事実、それは単に言葉と声の問題だけではない。それはまた身体の問題でもある」(「カイエ・デュ・シ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:41 AM

February 22, 2010

『リミッツ・オブ・コントロール』ジム・ジャームッシュ
結城秀勇

 吉祥寺バウスシアターで行われている「爆音ナイト傑作選2009」にて。  爆音上映ということで当然期待していたのは、BORISのサウンドトラックでもあるのだが、冒頭イザック・ド・バンコレとアレックス・デスカスとジャン=フランソワ・ステヴナンの3人の対話で、予期していなかった音の位相のありように気づく。アレックス・デスカスの言葉を英語に翻訳して反復するステヴナン。そこでセンターから聞こえてくる彼らの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:57 AM

February 17, 2010

『抱擁のかけら』ペドロ・アルモドバル
梅本洋一

 アルモドバルはもう完全に「巨匠」だ。彼の監督歴もすでに40年近く、そして年齢も還暦に達している。諦念と達観、そしてメランコリー。失った恋と眼差し、家族、そして職業としての映画。ほとんどアルフレッド・ヒッチコックのようなタッチで恋愛を描き、なんとかロッセリーニの『イタリア旅行』のような透明な単純さに到達しようとする倒錯的な欲望。ペドロ・アルモドバルのこのフィルムは、そうした混濁と透明の中間地帯を浮...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:27 PM

February 15, 2010

『(500)日のサマー』マーク・ウェブ
結城秀勇

 「彼女のキスで俺は生まれ、彼女が去って俺は死んだ。彼女が愛した数週間だけ、俺は生きた」。そんなセリフを『孤独な場所で』のハンフリー・ボガートは脚本の中に挿入したが、主人公トムにとっての500日間が意味するのもひとつの「生」のサイクルだろう。いや、「生」というほどハードボイルドなものではとてもないので、タイトルどおり、ひとつの季節を彼は通過する、というくらいにしておくのが適切か。渡辺進也はこの映画...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:08 PM

February 13, 2010

『まだ楽園』佐向大
結城秀勇

 曖昧で矛盾したやりとりは、対話をどこへも導かないまま、その量を増加させていく。前進しているのにどこへも行かない、月並みだけれど見たことのない風景がどこまでも広がっていく。そうした世界を名付けるとすれば、その公開から4年を経たいまでも、やはり“まだ”楽園なのだと呼ぶほかない。  この映画を初めて見た2004年の初夏から、何度か繰り返しこの映画について書いてきた。この作品に捉えられた私たちを取り巻く...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:36 PM

February 1, 2010

『サロゲート』ジョナサン・モストウ
結城秀勇

「ターミネーター」シリーズを3でキャメロンから引き継いだジョナサン・モストウ。日本では奇しくもキャメロン12年振りの劇場長編と同じタイミングで、モストウの新作『サロゲート』が公開されている。偶然にしては出来過ぎなほど、キャメロン『アバター』とモストウ『サロゲート』は比較対象としてうまい対になっている。  どちらの作品も、生身の人間が異なった外見の人工物に乗り込み、人工物の体験を生身のものとして感...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:37 PM

January 30, 2010

『永遠に君を愛す』濱口竜介
結城秀勇

 ああしておくべきった、あるいは、ああすべきではなかったという、日常私たちが無批判に繰り返す些細な誤った振る舞いを、濱口竜介の作品は上映時間いっぱいをかけて極限まで高めていく。結婚式の3ヶ月前にあった浮気を些細なこととみなすかどうかは意見の分かれるところだろう。というか、『永遠に君を愛す』の登場人物は誰ひとりとして些細なことだとは認識しない。だがここであえて些細な過ちと呼ぶのは、結婚式3ヶ月前の浮...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:22 AM

January 26, 2010

『夜光』桝井孝則
梅本洋一

 「未来の巨匠たち」特集上映の枠で、桝井孝則の『夜光』を見た。プログラミングに携わるひとりなのに、初めて見たと告白する無責任さを許して欲しい。関西に住む彼の作品に触れる機会がなかったと言い訳するのも、DV撮影されているのに、ディジタル時代のアナログメディアである映画がなかなか距離を踏破しづらいことを示しているのかも知れない。  海老根剛の文章はこのフィルムにはうってつけのイントロダクションになるだ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:50 PM

January 23, 2010

『オルエットの方へ』ジャック・ロジエ
結城秀勇

 職場では偉そうにしているが好きな部下の女の子には頭が上がらない男が、偶然を装ってヴァカンスにその女の子とその女友達ふたりと、大西洋岸のとある海辺の町で2週間ばかりの夏の日々を過ごす。  この映画のなにが素晴らしいかを一言で言えば、2時間半あまりあるこの映画のほとんどの時間で女の子たちがバカみたいに笑ってきゃあきゃあ言っているだけということだ。木靴を履いて踊ってはきゃあきゃあ言い、エクレア食っては...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:16 PM

January 21, 2010

『インビクタス 負けざる者たち』クリント・イーストウッド
結城秀勇

 モーガン・フリーマン演じるネルソン・マンデラは、民族融和のための象徴的なイベントとして1995年のラグビー・ワールドカップを位置づける。その成功のために彼は、南アフリカ共和国代表チーム・スプリングボクスのキャプテン、マット・デイモン演じるフランソワ・ピナールとの面会を行う。ふたりは互いに自分の立場を重ね合わせるかのようにして、実現不可能に見える目標に向かって人々を指導(リード)していくことについ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:59 PM

January 15, 2010

『怒る西行 これで、いーのかしら。(井の頭)』沖島勲
田中竜輔

 誰の目にも明らかなように、竹中直人の代表芸である「笑いながら怒る人」とは、「笑い/怒り」という感情を、「顔」と「声」によるたったふたつのイメージによって分断する芸である。つまりこの芸が成立するためには、このふたつの感情がそれぞれまったく別の次元に属するイメージであると、そう認めなければならないのだ。しかし「笑い」と「怒り」の境界など本当に存在するのだろうか。もしもそんなものがあるとしても、それは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:43 PM

January 14, 2010

『蘇りの血』豊田利晃
結城秀勇

「手に職を持ってますから、どうとでも生きていけます」と按摩のオグリは言う。この映画のなかで名指しされる具体的な職業は「按摩」と「薬屋」だけだ。その貴重な職の中でも、「手」で行う仕事は按摩だけなのだから彼は極めて特権的な職業に就いていると言えるだろう。ヒエラルキーの頂点にいると思われる「大王」でさえもが病に苦しむこの社会で、あらゆる経済活動は健康を通じて行われる。そしてこの「健康」は、「死」の対義...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:07 PM

January 7, 2010

『ジュリー&ジュリア』ノーラ・エフロン
結城秀勇

 自宅のキッチンがスミソニアン博物館に展示されているというほどの、アメリカでのジュリア・チャイルドの人気のほどはあずかり知らないが、とにかく料理と恋愛の共有部分を描いた佳作だと思う。正直なところ、美味しそうな料理が出てくる映画はそれだけでいつも高評価を与えてしまっている気もする……。  パリを訪れたジュリアが初めて食べる平目のムニエルから、彼女の料理レシピを制覇しようと試みるジュリーが最後の難関と...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:29 PM

January 6, 2010

『マイケル・ジャクソンTHIS IS IT』ケニー・オルテガ
結城秀勇

 憧れの舞台に立つために世界中から集まり、見事オーディションを勝ち抜いたダンサーたちのインタヴューを見て、ハーモニー・コリンの『ミスター・ロンリー』を思い出してしまう。ずっと夢だった、マイケルのためならなんだってする、口々にそう語り、あるいは感極まって泣き出しすらする彼らは、もちろん国籍も人種も年齢も性別もスタイルも様々なのだが、なぜかふとした瞬間、口調や呼吸が『ミスター・ロンリー』のディエゴ・ル...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:47 PM

December 29, 2009

『アバター』ジェームズ・キャメロン
結城秀勇

 非3D上映にて。  脊椎の損傷によって下半身不随になっているサム・ワーシントンに、上司である大佐が「任務に成功すれば足を与えよう」と言うとき、問題になっているのは大地に接するふたつの足ではなくて、その間にあるもう一本の足であることは明らかだ。車椅子に乗ったサム・ワーシントンには、アクションの欠如によるフラストレーションは感じられない。それよりもむしろ、苦み走ってなにかを思い詰めたようなワーシント...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:26 PM

December 24, 2009

『明日が、あなたの日々の最高の一日になりますように。なぜなら、あなたの最後のであるから』ベン・リヴァース
結城秀勇

 渋谷イメージフォーラムで行われた「Imaginary Riverside」と題された上映会で、ベン・リヴァースの作品群を初めて目にし、衝撃を受ける。ロッテルダム映画祭のタイガーアワードに2年連続ノミネート、そして同賞を受賞と、世界ではまさに評価の固まりつつある作家であるだけに、こうした機会に発見できたのはとても良かった。  彼の作品を薦めてくれた中原昌也さんも言っていたことだが、とにかく音の処理...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:17 PM

December 10, 2009

『パンドラの匣』冨永昌敬
安田和高

1945年~1946年。といえば、体制が大きく変化し、日本社会が少なからず混乱していた時期であろう。ところが『パンドラの匣』は、1945年~1946年にかけての物語でありながら、そのような混乱とはほとんど無縁である。まるで戦禍を逃れるかのように、混乱した社会を避け、結核を患った主人公は山奥の療養所へと“疎開”していく。そこでは戦後のドタバタなど、どこ吹く風。時間はゆったりと流れていく。そう。これは...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:27 PM

December 3, 2009

『動くな、死ね、甦れ!』ヴィターリー・カネフスキー
結城秀勇

 開催中の特集上映にはなかなか駆けつけることができず、気づけば他の2本(『ひとりで生きる』『20世紀の子供たち』)の上映は終了してしまっていたが、なにはともあれ『動くな、死ね、甦れ!』だけでも見直しておこうとユーロスペースへ。レイトショーだがほぼ満員。  かつての記憶の中では、とにかく靴にまとわりつくぬかるみがひどく心に焼き付いていた。それは見直したいまでもそうだが、まとわりつくぬかるみの質こそが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:50 PM

December 1, 2009

アーセナル対チェルシー 0-3
梅本洋一

 やはりチェルシーは強い。ファン・ペルシの怪我が靱帯の断裂という大きなものであることはアーセナルに大きくのしかかっている。セスクを中心に、ナスリ、アルシャヴィン、ソング、デニウソンをいう中盤は、さすがにボールがよく回り、一見、中盤をほぼ押さえているかに見えるのだが、エドゥアルドのワントップだとボールが収まらない。サニャ、トラオレの両サイドまで含めて、何度もバイタルエリアまで侵入するのだが、チェルシ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:56 AM

November 27, 2009

『2012』ローランド・エメリッヒ
結城秀勇

 この作品を見るために新宿ピカデリーへ向かう。MUJIの前の階段を上り3階のチケット売り場へあがるエスカレーターがある踊り場には、もう一台別のエスカレーターがある。プラチナルーム及びプラチナシートの利用客だけが使う専用入り口である。その入り口を使わない客は3階のチケット売り場に並ぶ。 『2012』の世界の終末は、それとまったく同じ仕組みでやってくる。そこではまずプラチナシートを買う必要があるのだ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:35 PM

November 17, 2009

『ロト』/『MUGEN』甲斐田祐輔
松井宏

2009年において1971年生れの監督の過去2作品がひょっこり公開されるのは、やはり珍しい出来事だろう。しかも中編2本。そう『ロト』と『MUGEN』は2007年『砂の影』と2002年『すべては夜から生まれる』の長編たちの間に、それぞれ作られた。 16ミリでデビューを飾り、最新作『砂の影』では、キャメラマンたむらまさきと一緒に何と8ミリで撮影を行った甲斐田祐輔。そんな「時代錯誤」的な監督が、ついに初...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:45 PM

November 9, 2009

『アバンチュールはパリで』ホン・サンス
梅本洋一

 正直に書く。ホン・サンスのフィルムを見たのはこの作品が初めてだ。天の邪鬼なのか、韓流映画の流行が嫌で韓国映画というだけで素通りしていた。もちろんホン・サンスが、韓流に収まらないことは知識として知っていたが、知っていただけではどうしようもない。反省も込めて行動に移した。  そして『アバンチュールはパリで』を見た。すごいフィルムだと思った。以下、その理由を述べる。  まず、驚いたのが、ロケ地がパリと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:54 AM

October 23, 2009

10/23
渡辺進也

映画祭ももう佳境。残すも3日となった。 数日前には人気の多かったプレスセンターの...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:34 AM

October 21, 2009

10/21
結城秀勇

本日は渡辺に代わり私結城が。10/21は、今年の東京国際映画祭に一日だけ来るなら...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:25 PM

October 19, 2009

10/19
渡辺進也

三日目。 当初見る予定の映画がチケットをとれず断念。時間が合う映画を仕方なく見に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:49 PM

『ヴィヨンの妻──桜桃とタンポポ』根岸吉太郎
梅本洋一

 もし根岸吉太郎にスタジオという背景があったなら、このフィルムはかなりの傑作になったのではないか。田中陽造のシナリオも太宰のテクストを活かし、松たか子をはじめとする俳優たちもよい。演出のテンポも揺らぎがなく、見事に収まっている。  つまり、このフィルムはかなり良好な作品に仕上がっていることは認めよう。しかし、もしこのフィルムが同様のシナリオで同じ俳優たちで今から50年前に撮影されたとしたら、素晴ら...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:13 PM

October 18, 2009

『RAIN』堂本剛
黒岩幹子

堂本剛という人が作る音楽には、単なるアイドルの余暇活動として切り捨てられないものを感じる。そのナルシスティックな言動やファッション、「自分探し」の一貫として書かれたような歌詞、あるいは「剛紫」(前作のアーティスト名義)といったネーミングセンスなど、凡人の私には受け入れがたい部分を持った人ではあるのだが、彼の音楽には何か考えさせられるものがある。近田春夫は以前、彼が前シングル曲の「空~美しい我の空」...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:36 AM

October 17, 2009

10/17
渡辺進也

 仕事を終えて六本木の夜へ。  第22回目を迎える東京国際映画祭は今日開幕。ホセ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:40 PM

October 15, 2009

『The World』牧野貴+ジム・オルーク
田中竜輔

 釘なのか有針鉄線なのか、その形状の有する鋭角なイメージをスピーディーに旋回させる『EVE』、テープリールがそこら中で回転するスタジオとその中を走り回る男を部屋の中心近くに置かれたキャメラがぐるりとおよそ360度回転して捉える短い映像が、ループしながら重なり合い色合いを変えることでマーブル状の色彩を獲得していくジム・オルークの『Not yet』は、映像というものが、そして音が、まぎれもない「物質」...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:21 AM

2009年10月14日

最終日
結城秀勇

もう最終日である。 原將人『マテリアル&メモリーズ』8mm三面マルチライヴを前半...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 03:52

『無印ニッポン──20世紀消費社会の終焉』堤清二、三浦展
梅本洋一

 辻井喬名義の小説は読んでいないけれども、セゾン・グループの総帥を退任してからの堤清二の発言は本当に興味深い。前に上野千鶴子との対談本を採り上げたことがあるが、今回は、『下流社会』の三浦展だ。上野も三浦もパルコ出身といってもいいから、当時は「天上人」(三浦の表現)だったにせよ、セゾン・グループは、確かに多くの人材を輩出している(もちろん居なくなっちゃった人もたくさんいるけど)。  三浦展が書いたこ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:09 AM

October 8, 2009

『リミッツ・オブ・コントロール』ジム・ジャームッシュ
安田和高

 ティルダ・スウィントン、工藤夕貴、ジョン・ハート……と、じつに世界各国さまざまな俳優が登場する『リミッツ・オブ・コントロール』は、しかしけっきょくのところサングラスをかけていない者同士——つまりイザック・ド・バンコレと、ビル・マーレイ——の一騎打ちの物語である。ほとんどの登場人物がサングラスをかけているなか、そのふたりは透明な目で世界を捉えている。宇宙には——と、劇中で工藤夕貴は言うのだが——“...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:52 PM

September 29, 2009

『空気人形』是枝裕和
結城秀勇

「私は空気人形」と彼女は言うけれど、ペ・ドゥナの美しさは存在感の希薄さや空虚感を連想させるようなものではない。それよりはむしろ、ダッチワイフとしての彼女が動き出して初めて触れる、物干し竿から垂れる水滴のような美しさだと思う。表面張力で凝結して、周りの風景をきらきらと反射して、わずかな風にふるふると震える。登校途中の女の子から「いってきまーす」という挨拶を学び、富司純子の「ご苦労様」という挨拶に腰...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:59 PM

September 25, 2009

『クリーン』オリヴィエ・アサイヤス
結城秀勇

 No home, no money, no job. 出所したマギー・チャンがニック・ノルティに子供に会うことを避けてほしいと告げられる場面で、確か彼女は自らの母親としてのダメさ加減をそんなふうに形容していたのだった。その言葉通り、この映画全体を通して彼女の住処はまったくと言っていいほど描写されることがない。「思い出のあり過ぎる」ロンドンのアパートはおろか、物語の起点となるモーテルを離れて以降に...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:56 PM

September 15, 2009

『The Anchorage』C.W.ウィンター&アンダース・エドストローム
松井宏

『The Anchorage』は、何よりもまず映像を「anchor=定着」させる。共同監督のひとりであり、キャメラを廻すアンダース・エドストロームは、そもそも写真家だ。スティルをつねにフィルム撮影する彼にとって、映像とは現像なしには存在し得ない。この作品がフェード・インで始まる理由もその点にある。現像液に浸された印画紙と同じく、ここでの映像は徐々に暗闇から浮かび上がり、そして現像=定着させられる...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:25 AM

September 11, 2009

一丁倫敦と丸の内スタイル展@三菱一号館美術館
梅本洋一

 復元された三菱一号館と竣工記念として開催されている「一丁倫敦と丸の内スタイル」展を見た。  コンドル設計の三菱一号館は、丸の内が100フィートの高さに設定され、モダニズムのオフィスビルが建ち並んだ後も、1968年までこの場所に残っていた。「一丁倫敦」という呼称の名残のように、周囲との不調和のままここにあった。ぼくもかすかに覚えている。もちろん中に入ったことはなかった。復元され美術館として誕生した...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:26 PM

September 9, 2009

『リプリー 暴かれた贋作』ロジャー・スポティスウッド
結城秀勇

『太陽がいっぱい』、『アメリカの友人』をはじめとして、それぞれ複数回映画化されているパトリシア・ハイスミスのリプリー・シリーズ中のThe Talented Mr. RipleyとRipley's Gameだが、なぜかその間に挟まるRipley Undergroundは映画化されていなかった。『トゥモロー・ネバー・ダイ』のロジャー・スポティスウッド監督によって2005年に撮影された本作はdvdスル...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:01 PM

September 4, 2009

ケンチク+ XXX 『 Dialogue and Studies in XXX , 2009 Tokyo 』15人の建築家と15人の表現者による対話実験@ワタリウム美術館 第一回 長坂常×植原亮輔+渡邊良重[D-BROS]
結城秀勇

 このサイト、およびnobody本誌でも時折ご寄稿いただく藤原徹平さんが企画・コーディネートをつとめる15回の対話。その第一回は、書籍『B面からA面にかわるとき』が先日発売された長坂常と、D-BROSにてデザインを担当する植原亮輔と渡邊良重のふたりという組み合わせ。毎回、その両者がそれぞれにプレゼンを行った上で、その後に質問や意見を交換し合うというスタイルになっているようだ。  プレゼンはD-BR...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:40 AM

August 27, 2009

Aimee Mann JAPAN 2009 @ SHIBUYA-AX
宮一紀

 4年ぶりとなるエイミー・マン単独来日ツアーの東京公演が8月25日に行われた。前回のツアーは恵比寿リキッドでのバンド編成だったそうだが、今回は3人による変則的なアコースティック。ほとんどがスタンディングのフロアで、7,500円というやや強気な価格設定。何となく開始前からイベントのオーガナイズに対して不信感が募る。とはいえ当日はけっこうコアなエイミー・ファンが集まって、イントロでは即座に大きな歓声が...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:02 AM

August 6, 2009

『ボルト』バイロン・ハワード、クリス・ウィリアムズ
結城秀勇

『魔法にかけられて』に引き続きまたしてもディズニーは、入れ子状の、ファンタジーの生成についての自己言及的な作品を製作している。そしてこの『ボルト』も『魔法にかけられて』と同様に、その過程を経てできあがった作品が果たしてファンタジーとして成立するのかという点においては、あまり検討を重ねているようには見えない。  プリンセスが現実の世界にやってきて、現実とファンタジーは違うことを学び、現実の中で生き...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:15 PM

August 4, 2009

『3時10分、決断のとき』ジェームズ・マンゴールド
渡辺進也

 アメリカでの公開から2年遅れて、この度日本公開されるジェームズ・マンゴールドの新作は1957年にデルマー・デイヴィスによって監督された『決断の3時10分』のリメイク作品である。名の知れた悪漢を生活苦の農場主が金のために護送するストーリーを持つ、勧善懲悪に収まらないこの西部劇を、オリジナルのストーリーをほぼ変えることなく、そこにオリジナルでほとんど描かれることのない、駅馬車を襲う場面や護送する道中...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:26 PM

August 3, 2009

ル・コルビュジエと国立西洋美術館展
梅本洋一

 世界遺産には登録されなかったものの(ぼくにとってはどうでもいい問題だが)、この展覧会の機会に西洋美術館をつぶさに観察すると、この空間は実にル・コルビュジエらしい。無限増殖美術館のコンセプトをそのまま体現しているのはもちろんだし、この建物の全体が、螺旋状の周回というプロムナードになっていることや、メイン会場の19世紀ホールの自然光の差しこむ空間が、とても心地よいこともある。  最近ずっと坂倉準三の...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:00 PM

July 26, 2009

建築家 坂倉準三展 モダニズムを生きる 人間 都市 空間
梅本洋一

 やっと鎌倉に行ける時間ができた。  もともと坂倉準三の傑作であるこの鎌倉近代美術館(俗称)で、作者についての回顧展が開催されるのは2度目だが、ぼくは1度目は行っていない。だが、ここは本当に好きな空間だ。前に書いたカフェのダサさも改善されていた。「白い小さな箱」──それも宝石箱ようなこの建築は、周囲の環境も含めて、今回の回顧展のカタログで、磯崎新が書くとおり「ルコルビュジエよりもルコルビュジエ的な...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:41 PM

July 23, 2009

『麻薬3号』古川卓巳
高木佑介

見るからに胡散臭い新聞社で寝起きをし、道で気に食わない男とすれ違えば問答無用で殴りかかる、そのうえ麻薬3号=ヘロインのヤバい取引にも平気な顔で手をのばし、挙句の果てには損得勘定を考えずにとりあえず拳銃をぶっ放して事態をややこしくもさせるのだから、この映画の主人公である長門裕之はまさに見紛うことなき“ならず者”だ。飽きた女には目もくれず、隙あらばヒロポン、もちろん堅気の労働は一切拒否(しかしこの映画...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:43 AM

July 22, 2009

『麻薬3号』古川卓巳
結城秀勇

 海。反対側には山。国鉄の機関車が走り過ぎる神戸駅からタクシーに乗って繁華街を通り過ぎると、傾いたトタン屋根が複雑に入り組んだドヤ街がある。狭い路地に南田洋子が足を踏み入れたとたん、まだ陽も高い時間帯だというのに画面の面積の約半分を奇妙な幾何学模様を形成する影が占領し、それが昼下がりの強い陽光に照らし出された空間に対してくっきりとしたコントラストを生む。立ち並ぶ建物のうちのひとつの中に彼女が入り込...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:24 PM

July 20, 2009

『VISTA』佐々木靖之
田中竜輔

 瀬田なつき監督作品や濱口竜介監督作品等々、近年話題となった多くの若い映画監督たちのキャメラマンを務める佐々木靖之初監督作品である本作『VISTA』が、第31回ぴあフィルムフェスティバル・コンペティション部門PFFアワードに出品されている。上映終了後の舞台挨拶では、本作はアントニオー二『欲望』の強い影響下にあると佐々木監督本人に語られていたが、しかしもちろんそれは単なるコピーというわけではなく、映...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:37 PM

July 19, 2009

『トランスフォーマー リベンジ』マイケル・ベイ
結城秀勇

 前作『トランスフォーマー』を見て思ったのはだいたい以下のようなことだった。地球外からやってきた機械生命体であるところのトランスフォーマーたちは、映画の画面内においてもある種のエイリアンであり、フィルムとの光学的な関係からその姿を写し取られる他の被写体とは異なった原理の上に成り立つ存在である。それはCGだから当たり前だと言ってしまえばそれまでだが、そんなことをいまさら強く思ったのも、人間のスケール...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:56 PM

July 18, 2009

『そんな彼なら捨てちゃえば?』ケン・クワピス
結城秀勇

 ベン・アフレック、ジェニファー・アニストン、ドリュー・バリモア、ジェニファー・コネリー……と続く名前の列に近年でも珍しいラブコメ大作の香りを感じるが、なんのことはないアルファベット順での表記である。「SEX AND THE CITY」のスタッフによる原作をもとに描く恋愛群像劇ということになるようだが、この群像を形成する群がいったいどのようなつながりによって成り立っているのかが希薄だ。まるでこの映...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:54 PM

July 17, 2009

『ノウイング』アレックス・プロヤス
田中竜輔

 ニコラス・ケイジが世界を救うヒーローなのだ、と断言されてしまうとそれはどうにも何か別の作品のパロディ程度のものにしか思えなくなってしまうのだけど、しかしすべては彼自身の勘違いで、彼は勝手に自分自身をヒーローだと信じ込み、勝手に窮地に飛び込んで勝手にひとりで混乱しているだけだ、と言われればそれは途端に別の意味で真実味を増す。リー・タマホリの『ネクスト-NEXT-』はそれが夢オチというかたちで提示し...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:38 AM

July 13, 2009

建築家 坂倉準三展 モダニズムを住む 住宅、家具、デザイン
梅本洋一

 アテネフランセで映画を見ることを学び、東京日仏学院でフランス語を学び、渋谷パンテオンでハリウッド映画を見、東急名画座でかつての名画を多く見たぼくにとって、もっとも時間を過ごした建築の作り手は明らかに坂倉準三だった。アテネフランセも同じルコルビュジエ門下の吉阪隆正だから、東京日仏学院やパンテオンや東急名画座が入っていた今はなき東急文化会館の設計者である坂倉準三という固有名は極めて重要なものだ。  ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:40 AM

『ディア・ドクター』西川美和
梅本洋一

 一昨年『ゆれる』で大方の好評を博し(ぼくは批判的だったが)、その原作が直木賞候補にもなっている西川美和の『ディア・ドクター』を見た。主演の笑福亭鶴瓶は、封切りに際して西川美和とテレビに出まくっていた。  物語を記すと「ネタバレ」になるので書かないが、それ以外にいったい何を書けばいいのかと頭を抱えざるを得ない。笑福亭鶴瓶と瑛太の組み合わせもつまらないとは言わない。たったひとりの「医者」しかいない村...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:36 AM

July 10, 2009

『サブウェイ123 激突』トニー・スコット
結城秀勇

 原題は『THE TAKING OF PELHAM 123』だが、そのハイジャックされた車両が「ペラム123」と呼ばれているのはペラム駅を1時23分に出発したから、というただそれだけの理由である。なぜその車両が狙われなければなかったのかと言えば、その名の通り時間帯とコースが適当だったということに尽きて、それが劇中で話題にされる日本製の新型車両なのか、なにか他の車両と違った視覚的特徴を持つのか(そん...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:28 PM

July 9, 2009

「Suddenly VOL.01」宣伝チラシ上の誤植のお詫び

現在各所に配布されています「nobody presents SUDDENLY VOL.01」宣伝チラシの文章中に以下の誤りがございました。 *チラシ裏面、『軒下のならず者みたいに』紹介文の最下行 (誤)斎藤陽一郎 → (正)斉藤陽一郎 ご本人様および関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。 nobody編集部...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:20 AM

July 8, 2009

『セントアンナの奇跡』スパイク・リー
渡辺進也

 スパイク・リーの作品に慣れ親しんだものもそうでない者もブラックムーヴィーのひとムーヴメントをつくった監督のひとりとして、スパイク・リーの映画といったときにある程度イメージすることはできるだろう。同人種として黒人の姿を生々しく描いたということ、自らのアイデンティティに寄る映画つくりをしてきたということ。その実際がどうであれ、この監督が語られるときにそうしたイメージはこの監督にずっとつきまとうものと...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:56 AM

July 2, 2009

『それでも恋するバルセロナ』ウディ・アレン
茂木恵介

 ヴァカンスを楽しむために訪れたバルセロナ。季節は7月。紋切型の記号としてちらっと映るガウディやミロ。そして、女性を惑わす赤ワインとスパニッシュ・ギター。それらは、主人公の2人の側に寄り添いつつも物語の流れに絡み付くことなくちらっと映り、次のショットへと切り替わる。おそらく、この映画の中で記号として重要な意味を持つのは彼女達を迎え、そして送り出す空港のエスカレーターだけだろう。空港の入り口から出た...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:37 AM

July 1, 2009

『クリーン』オリヴィエ・アサイヤス
梅本洋一

 エミリー(マギー・チャン)は、いくつもの風景といくつもの音響を通り過ぎなくてはならない。カナダのハミルトンにある煙突から燃えさかる炎が上がる工場を背にした寒々しい川、人々が折り重なるように身を捩る中でマイクの前で多様な音声を絞る人たちのいるライヴハウス、どこでもまったく同じインテリアで、ここがどこだか判らなくなるようなモーテルの一室、売人と買い手が金銭と白い粉を交換する人気のないパーキング、息子...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:00 AM

June 26, 2009

『ランニング・オン・エンプティ』佐向大
結城秀勇

 その構造を剥き出しにして得体の知れない煙を吐き出し続ける信じがたく巨大な建築物の群れから、小さなアパートのベッドの上で寝そべる女性のピンクの下着を履いた尻へとカットが切り替わる。前者はどことなく『Clean』の冒頭を彷彿とさせるし、後者は『ロスト・イン・トランスレーション』のスカーレット・ヨハンソンのケツに勝っている。それがなんの仲介も無しに結びつけられる、一足飛びの移動の速さの中にこそ『ランニ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:37 PM

June 22, 2009

『ターミネーター4』マックG
結城秀勇

 セカンドチャンスとパロディを履き違えてはいけない。いま目の前で起こっていることを、かつて起こったことにデジャヴュのようにすり替えていかない限りなにも起こらないこの映画にはなにひとつチャンスがない。  冒頭に登場するヘレナ・ボナム=カーター、影の薄いヒロイン役ブライス・ダラス・ハワード、そして音楽のダニー・エルフマンと(もしかしたらそこにクリスチャン・ベイルを加えても良いのか)現在のアメリカ映画で...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 10:36 PM

June 19, 2009

『スタートレック』J.J.エイブラムス
田中竜輔

 J.J.エイブラムスが『クローバーフィールド/HAKAISHA』のプロデュースに引き続いて「スタートレック」映画化を手掛けると最初に聞いたときには、きっとこのシリーズに思い入れたっぷりなのだろうなと勝手に思い込んでいた。しかしどうやらインタヴューによると、どうも彼自身は「トレッキー」ではまったくないらしい。この作品についての絶賛の評を見ていると、いわゆる「ビギンズ」もの(元々のタイトル案は「ST...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:27 AM

June 15, 2009

『ウルトラミラクルラブストーリー』横浜聡子
梅本洋一

 彼女のフィルムを初めて見た。つまり、これが長編2作目の横浜聡子だが、ぼくは彼女の処女長編を見ていない。もし画面やそこに盛られた物語に大きな特色を感じることができるとき、その作り手を仮に「映画作家」と呼ぶなら、彼女はまちがいなく「映画作家」である。冒頭から聞こえてくるけたたましいヘリコプターの騒音、その騒音に負けないくらいに、主人公・陽人を演じる松山ケンイチが発するノイズと意味との境界線上を走る音...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:00 AM

June 13, 2009

『私は猫ストーカー』鈴木卓爾
黒岩幹子

『私は猫ストーカー』、そのタイトルに偽りなし。これは「猫好き」じゃなくて「猫ストーカー」の映画だ。「猫好き」と「猫ストーカー」の違いは、猫への愛情の大きさにあるのではなく、猫との関わり方にあるのだと思う。「猫ストーカー」を自認する主人公のハル(星野真理)は、猫を飼わず、特定の猫に愛情を注がず、猫を分け隔てず、とにかく猫を探し回り、とにかく遭遇した猫を追いかける。自分の生活のなかに猫がいるのではなく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:02 AM

June 10, 2009

『イエローキッド』真利子哲也
高木佑介

 その男はいったい誰で、そこはいったいどこなのか。しばし自分の目を信じることができない。などと言ってみるといささか大袈裟かもしれないが、だがしかし、現についさっきまでトイレでボコボコと殴られていたはずのその男の弱気な表情はどこかへと消え失せ、横浜だと思っていた風景は、まったく見知らぬ場所であるかのようにスクリーンに広がりだす。さっきまでそこにあったものが、何かまったく違うものに見えてくる。そんな瞬...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:21 AM

June 9, 2009

『4』『マイムレッスン』『スパイの舌』三宅 唱
田中竜輔

 とりあえずは「習作」に近い3本の短編なのかもしれないが、ずいぶん前からその噂を耳にしていた三宅唱監督の作品を見て、率直にとても興奮させられた。  21歳時の作品であるという『4』の、ホテルのひと部屋に詰め込まれた4人のそれぞれの時間における持続感覚(とりわけほとんど異物である外国人女性の「空気の読めない」些細な仕草が「彼ら」の時間についての共有感覚を明瞭に分断しているようだった)にまず舌を巻いた...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:45 AM

June 4, 2009

『持ってゆく歌、置いてゆく歌―不良たちの文学と音楽』大谷能生
梅本洋一

 もっとも旺盛な活動を示している批評家が大谷能生であることは明らかだ。大きな書店に行くと、必ず彼の本が2冊以上平積みにされている。若い批評家──もちろん彼は音楽家でもあるが──の書物が、数ヶ月間に次々に出版されることはわくわくするような体験だ。『散文世界の散漫な散策──二〇世紀批評を読む』(メディア総合研究所)、瀬川昌久との対談本『日本ジャズの誕生』(青土社)、そしてこの『持ってゆく歌、置いてゆく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:03 AM

June 1, 2009

『久生十蘭短篇選』川崎賢子 編
高木佑介

 1920~30年代についての特集を組んだ「nobody」誌最新号の編集中にも、たびたびその名前が挙がった久生十蘭。といっても気軽に著作を探してみてもどうも在庫切れやら絶版ばかりが目につくし、とはいえ去年から国書刊行会より出版されている少々高価な全集(全11巻になるという)にも手が出せず、さてどうしたものかと考えていた矢先に岩波文庫より短篇集が5月に出たので、これ幸いと購入。定価860円。  本書...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:15 AM

May 28, 2009

『夏時間の庭』オリヴィエ・アサイヤス
田中竜輔

 『冷たい水』の美しさが、ふと目を離した瞬間に消え去ってしまうヴィルジニー・ルドワイヤンの纏う無垢≒フィクションの淡い色彩によって生み出されていたとして、しかし近年のアサイヤスの「女たち」によるフィルム――『DEMON LOVER デーモンラヴァー』『CLEAN』『レディ アサシン』――の基軸となるのは、「女たち」にとって、すでに失われてしまったルドワイヤンの「無垢」なるものを、どのように生きかえ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:20 AM

May 23, 2009

『夏時間の庭』オリヴィエ・アサイヤス
梅本洋一

 満員の銀座テアトルシネマの上映後、銀座の舗道に出ると、背後からこんな会話が聞こえてきた。「あのオルセー美術館のレストランのシーンを見てたら、オルセーに行ったときのことを思い出したわ」「そうね。2年前だったわね」かなりの年長の婦人たちがそんな会話を交わしながら、銀座を歩いていた。  だが、とりあえずオリヴィエ・アサイヤスのフィルムで、映画館が満員になったことは良いことだ。このフィルムにはオルセーが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:07 AM

May 22, 2009

『レイチェルの結婚』ジョナサン・デミ
茂木恵介

 右ストレート一閃。よろけながら、反撃の左フック。リングサイドからリングを見上げ、反撃する選手の背中を興奮しながら見つめるセコンド。もちろんそんな「シーン」なんてないのだが、そんな「パンチ」はこのフィルムにはある。しかし問題は右目を腫らせる程のパンチが出てくることではなく、そのパンチが打たれる瞬間を見上げる形で見てしまったことだ。そして、それは誰が見ているのか。もちろん、それは観客であるわけだが、...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 2:08 PM

May 14, 2009

『四川のうた』ジャ・ジャンクー
梅本洋一

 こうした偽ドキュメンタリーというスタイルは、とりわけ、このフィルムの内容には合致している。8人の労働者たちが成都の420工場について語る、という構想は説得力がある。綿密に書き込まれたテクストと、おそらくかなりの時間をかけただろうリハーサル。挿入されている工場や成都の映像。「知的」という言葉がこれほど当てはまるフィルムを見るのは、本当に久しぶりのことだ。誰でもトリュフォーの『野生の少年』を思い浮か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:13 AM

May 12, 2009

アーセナル対チェルシー 1-4
梅本洋一

 今シーズンのプレミアリーグも大詰め。今節を含めて残り3ゲーム。チャンピオンズリーグ準決勝で敗退したアーセナルの目標は、来シーズンのチャンピオンズリーグにストレートインできるプレミア3位以内の確保。そして現在の3位はチェルシー。非常に分かりやすい。  風邪のアルシャヴィンが欠場。左にディアビ、右にウォルコット、トップ下にセスク、ファン・ペルシの1トップ。セントラルにナスリとソングという布陣。最初か...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:59 AM

May 9, 2009

『ミルク』ガス・ヴァン・サント
梅本洋一

 ぼくらが『エレファント』や『ジェリー』、そして『ラスト・デイズ』などに夢中になっていた時代──つまり、今からほんの少し前のことだ──、アメリカではガス・ヴァン・サントという固有名はまったく忘れられた存在になってしまっていた。確かにそうかもしれない。せっかくハリウッドでそこそこの地位を獲得したというのに、彼は『マラノーチェ』を撮ったホームタウンのポートランドに帰ってしまい、インディーズの映画作家と...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 4:22 AM

May 3, 2009

忌野清志郎追悼
山崎雄太

 昨夜、忌野清志郎が死んだ。58歳。  武道館で復活ライブを敢行したのは去年の2月だった。超満員の武道館、観客の平均年齢はいままでに行ったどのライブより高かったが、若いお客さんもちらほら見かけられた。安くはないチケット、「死ぬまでに一度は見たい」と嘯き買って……そういえば武道館にライブに行ったのも初めてだった。お客さんはみなニコニコしながら、しかし時折仔細らしい顔をして連れに耳打ちしたり、気忙しい...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:34 AM

May 1, 2009

チャンピオンズリーグ08-09準決勝
バルセロナ対チェルシー 0-0
マンチェスター・ユナイティド対アーセナル 1-0
梅本洋一

 シーズンも大詰め。チャンピオンズリーグの準決勝を迎えるこの頃になると、今シーズンはいったい何ゲーム見たのだろう、と考え込んでしまう。去年の今頃は、この季節の後、ユーロが開催されたのだから、「お楽しみはこれからだ」状態だったけれど、今年は、重要なゲームも10ゲームを切った。  まずカンプ・ナウのバルサ対チェルシー。バルサはいつもバルサだと相手によってスタイルを変えることのないバルサと、ヒディンク就...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:48 AM

April 28, 2009

『ワンダ』バーバラ・ローデン
結城秀勇

 泣き喚く子供の声に顔をしかめながら目を覚ます。この映画の冒頭、ワンダ=バーバラ・ローデンが置かれた状況とほぼ同じ唐突さで、観客は映画の中に引き込まれていく。同じような日常がこれまで継続してきたはずなのに、自分の置かれた状況が理解できない混乱した起きぬけの頭。窓の外に広がるのは荒涼たる採掘場。その中を横切り、裁判所で離婚訴訟を行い、職を失い、行きずりの男と寝て、置いてきぼりを食う。カーラーを頭に巻...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:59 AM

『ワンダ』バーバラ・ローデン
田中竜輔

 ズブズブと沈み込んだ『俺たちに明日はない』、コメディタッチもある『地獄の逃避行』、いやそれではこの作品について何も語っていないことと同じだろう。東京日仏会館で開催された〈カンヌ映画祭「監督週間」の40年を振り返って〉の最終上映作品、マルグリッド・デュラスやジャック・ドワイヨンが絶賛した、エリア・カザンの前妻であるバーバラ・ローデン監督兼主演作『ワンダ』について、無理矢理ひとことで感想を述べるとす...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:47 AM

April 23, 2009

「広告批評」336号(最終号)
宮一紀

 雑誌「広告批評」が30年という長い歴史に幕を下ろした。広告の世界にあまり関心がなくとも、その企画がときとして対象に寄り添いすぎていると感じることはあっても、コンセプトの部分で基本的にブレることのない誌面に概ね好感を持っていた。A5サイズで590円という気楽な価格設定もよかった。  休刊の理由は部数減や経営難ではないという。そこには同誌が主な批評の対象としたマス広告が時代とともに大きくかたちを変え...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:11 AM

April 22, 2009

『パンドラの匣』冨永昌敬
結城秀勇

 なにかとんでもないことが起こっているかもしれないと気付いたのは映画が始まり舞台がメインの「健康道場」へと移りタイトルが映るまでの少々長めの時間が経った後でだったから、いささか遅きに失していたのかもしれない。  それまではと言えば、人や物、そして音がフレームの中に見事に収まっていることに見とれていた。『シャーリーの好色人生と転落人生』のあの貫禄を見れば、当然至極のこととも思えるこの事実になぜ気を...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:17 PM

April 17, 2009

チャンピオンズリーグ準々決勝 2nd Leg アーセナル対ビジャレアル 3-0
梅本洋一

 チェルシー対リヴァプールの4-4(7-5)という強烈な打ち合いを見ていて思ったのは、両チームの監督の資質の差だ。ヒディンクが「ここ一番」で強さを発揮する一発勝負型の監督であるとすれば、ベニテスはまさに育成型。数年前のリヴァプールよりも数段レヴェルアップしたチームを作り上げている。ヒディンクの戦術が、このゲームでのアネルカの右サイドでの起用という選手交代の妙にあったとすれば、ベニテスのリヴァプール...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 8:06 PM

April 13, 2009

『一緒にいて(Be with me)』エリック・クー
結城秀勇

 タイプライターにセットされた真っ白な紙が、愛の言葉で埋められていく。ゆっくりとした文字の歩みが次第に文を形作る。"Is true love truly there?"。この声なき問いかけは、続く一文によって条件付きで肯定される。もしあなたの温かい心があれば、と。  何人かの登場人物たちがこの声なき問いを、それぞれのやり方で投げかける。雑貨屋の店主、警備員、女子高生。彼らはほとんど声を発することが...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:06 AM

April 10, 2009

『ウォッチメン』ザック・スナイダー
高木佑介

 1985年。米ソ冷戦時代。アメリカがベトナム戦争に勝利し、ウォーターゲートを経ても未だにトリッキー・ディッキー政権が続いているという設定のこの世界には、常人よりもそこそこ強いスーパーヒーローたちがいる。といっても、過去の栄光を謳歌した彼らの現在は、それほど華やかなものではない。むしろ、核戦争勃発が目前となっている世界を生きる彼らは、全員が何やら暗い闇を抱えながら生きている。ヒーローたちの活躍では...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 7:40 PM

April 8, 2009

『ヘンリー・プールはここにいる〜壁の神様〜』マーク・ペリントン
結城秀勇

『隣人は静かに笑う』『プロフェシー』のマーク・ペリントンの最新作『ヘンリー・プールはここにいる〜壁の神様〜』がdvdスルーでリリースされた。ルーク・ウィルソン主演で、カリフォルニアの晴天を背景に彼が微妙な表情を見せるパッケージからは、ペリントンも芸風を変えたのか?と思わずにはいられなかったが、見てみると紛れもないペリントン節全開、ほとんど『プロフェシー』と同じような話なのだった。  不治の病に冒さ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:25 PM

『シャーリーの好色人生と転落人生』佐藤央&冨永昌敬
鈴木淳哉

冨永昌敬監督と佐藤央監督とは偶々幸運なことに知遇を得て以来、尊敬してやまない大先輩である。そうしたわけで背筋を正して試写に望んだのだが、二人の作品ともにすっくと格調高い。どうやら2作品には多くの美女が登場するようなので、少し底意地悪い気もするが、それぞれの女性に向ける視線を意識して鑑賞した。 水にぬれたアスファルトを歩く裸足の女の足音が佐藤央監督の『好色人生』に聞こえる。これは別に比喩表現ではなく...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:59 PM

April 7, 2009

プレミアリーグ アーセナル対マンチェスター・シティ 2-0
梅本洋一

 インターナショナル・マッチデイを挟むと常にアーセナルにバッド・ニュースが流れる。ファン・ペルシもエドゥアルドも足の付け根を故障した。ナスリは風邪。  だが、出場メンバーを見て、それが予告されたことであっても、多くのファンはグッド・サプライズ! 待ちに待ったセスク・ファブレガスの復帰、そしてなんとFWにはアデバイヨールがでんと構えている。そしてフォーメイションは、久しぶりに4-2-3-1。2にはデ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 6:03 AM

April 5, 2009

『フロスト×ニクソン』ロン・ハワード
結城秀勇

 ボクシングの試合に見立てられたふたりの男のパフォーマンス。そこに賭けられているものはなにか。前代未聞のインタヴューの為に動く巨大な金、そのために一喜一憂してみせる人々の俗人ぷりが単なる韜晦でしかないことに観客はすぐ気付く。『ボディ・アンド・ソウル』、『ハスラー』、あるいはハワードの『シンデレラマン』などを引き合いに出すまでもなく、そこにあるのは栄光、たぶんアメリカと呼んでもいい栄光だ。ここに見ら...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:17 AM

April 1, 2009

『シャーリーの好色人生と転落人生』佐藤央&冨永昌敬
田中竜輔

 結局のところ「シャーリー」とは、いったい誰で、いったい何なのか? 冨永昌敬の創出したこのひとりの人物は、彼をひとつの意味として形成するようなあらゆる設定やら理由づけやらの外側でずっとうろちょろしている。彼のような類の人物を「キャラクター」とか「キャラ」とかと呼んでしまう私たちの習慣はとりあえず頭から捨て置くべきかもしれない。彼はある種の「記号」として交換可能な存在ではないし、どこぞの「データベー...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:26 PM

March 21, 2009

『ベッドタイム・ストーリー』アダム・シャンクマン
黒岩幹子

アダム・サンドラーとリメイク版『ヘアスプレー』のアダム・シャンクマン、そしてディズニーが手を組んでつくられた映画。ディズニー的には、一昨年の『魔法にかけられて』と同系列で、かつFOXにやられてしまった『ナイト・ミュージアム』の要素を取り込もうという発想でつくったんじゃないかと思うのだけど、これがちゃんとアダム・サンドラー映画になっているのだった。 子供を寝かしつけるときに創作する物語が現実になると...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:26 AM

March 20, 2009

『月夜のバニー』(「桃まつり」より)矢部真弓
松井宏

老いてなお客を引き、ときに若い男を漁りもしよう、そんな場末の女性がバーバラ・スタンウィックを通り越してリリアン・ギッシュに近付くとき、そのフィルムは禍々しくも神々しい何かを纏うに決まっている。そもそも、ギッシュとは場末の女性以外のなにものでもないのだと、それを改めて気付かせてくれただけでも素晴らしい『月夜のバニー』は、だがそこに西部劇のフォルムさえ持ち出して、一挙に観客を惹き付ける。 血の繋がらな...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 1:29 PM

March 19, 2009

『シャーリーの好色人生と転落人生』佐藤央&冨永昌敬
宮一紀

 昨年夏の終わりに初めて仙台を訪れたときのこと。仙台メディアテークをしばらくうろついた後、仙台在住の友人・今野くんに連れられて近くの〈マゼラン〉という古書店に赴いた。映画や音楽、そして文芸方面で充実したラインアップを揃える小さな店内の一角はカフェ・スペースになっていて、そこで常連さんとおぼしき女性がひとりコーヒーを飲んでいた。  秋口の仙台で、時間は午後で、外は小雨が降っていて、店の軒先に猫が寝て...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 9:06 AM

追悼・フランチシェク・スタロヴィエイスキ
宮一紀

 ポーランドの画家で映画ポスターを数多く手掛けたフランチシェク・スタロヴィエイスキが先月亡くなった。  1960年代以降、世界中で映画が盛り上がる時期が訪れる。東欧でのそれは多分に宣伝用ヴィジュアルとともに受け入れられることになるのだが、そこには50年代後半の自由化と、自由化以降も実質的に続いたソ連の実行支配という背景があったことは否めない。東欧におけるグラフィック表現とは政治的な暗喩の純度の高い...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 3:10 AM

March 18, 2009

『サッカー批評』42号「LOVE or MONEY」
渡辺進也

 雑誌には週刊誌、月刊誌、季刊誌とあるけれども、僕にとっての季刊誌といえば現在も、もう何年も前から『サッカー批評』である。個人的にも大好きな名前が執筆陣に並び、ネットやスタジアムでは知ることができないサッカーの話に溢れ、往年のサッカーファンをも唸らせるインタヴューが並ぶ。サッカーだけで140ページが組まれる読み物。今年も『サッカー批評』が出る度に新たな季節が巡ってきたことを知ることになった。  最...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:53 PM

March 15, 2009

『あとのまつり』瀬田なつき
宮一紀

 頭上をゆりかもめが走る東京湾岸・運河沿いの埋立地。「この辺、むかし海だったんだよ」と少女が少年に教える。その面影にまだあどけなさを残した少女が唐突に口にする「むかし」という言葉。もちろん「むかし、むかし……」というあのアニメ番組の前口上を持ち出すまでもなく、ここで使われる「むかし」という言葉はいわゆる「伝聞過去」に由来している。出来事を強く喚起するその言葉は再開発が着々と進行する湾岸地帯を突き放...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 11:37 PM

March 13, 2009

『火と血と星』キャロリーヌ・デルアス
結城秀勇

 白黒の画面、独特のタイトル、レナ・ガレルとその祖父モーリス・ガレルというキャスティング、若い左翼活動家が選挙の結果に幻滅するというストーリー、そうした要素を含んだ映画で(しかもフランス映画祭で上映されるとなればなおさら)フィリップ・ガレルという固有名詞を思い浮かべない方がむしろ難しいが、冒頭で若い女性と幼い娘のふたりが過激な歌詞を伴ったパンクなビートに身を躍らせるのを見れば、過剰にそうしたことに...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 5:51 PM

チャンピオンズリーグ08-09 決勝トーナメント1回戦 2nd Leg
ローマ対アーセナル 1-0 (1-1, PK 6-7)
梅本洋一

 120分の死闘が終わり、PK戦。アーセナルの先攻。まずエドゥアルド。ローマのキーパー、ドニのナイスセーヴ。一番確率の高いキッカーが失敗することはよくある。PK戦というのは、運みたいなもので、この勝負はドローというのが正しい。結局、アーセナルがサドンデスでローマに勝ち、準々決勝に勝ち残った。  どちらもチームも勝ちきれなかったのはなぜか。いつものようにポゼッションではアーセナルだが、決定機はローマ...全文を読む ≫

投稿者 nobodymag : 12:16 PM

March 12, 2009

『7つの贈り物』ガブリエル・ムッチーノ
黒岩幹子

 深夜にふらりと立ち寄ったシネコンで、最終回に間に合うのがこの映画と『マンマ・ミーア』だけだったために